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「日本再興戦略」 落合陽一 【書評】

面白いので何回かに分けて書評というか感想と考えを。

落合陽一さんが日本再興には何が戦略たり得るかを記したこの本。日本という国の文化、伝統から国民の根幹となる意識を分析し、今後の日本人の生活・仕事のスタイルとしてワークアズライフという言葉を提唱する背景がよく分かる。

ワークアズライフ

著者が提唱するワークアズライフとは生活の一部に仕事が根ざしている生活様式を指す。現在、8時間働いて残りは余暇時間といったオン・オフ型のライフスタイルが一般的だが、自営業や経営者に近い、基本的に四六時中仕事と接している生活スタイルだ。もちろん休むは休むで休業日を決めればよく、現在のサラリーマンのスタイルに嵌めれば土日と終業後が自然と仕事から離れることになるのだが、これは日本人の本来持つナチュラルな性質と近いのではないかと言う。
私もよく似た考えを持っており、やりたい事を仕事としているにも関わらず休みの日に仕事を休めという考え方は逆に不自然ではないのか。実際、休みの日に外先でいい仕事に対するアイデアが浮かぶ事も少なくないし、私自身プロジェクトと社内組織の2側面を持つ以上は休日48時間を丸々ゼロとして扱ってしまうのは単純にもったいない。
勿論体力や健康面において休息が必要で、私もがっつり寝ては呑んでは家族とレジャーを満喫するのだが、どこか仕事の事を脳の片隅に置いている。

流行しているワークライフバランスや働き方改革については、企業が社員の勤怠、健康管理を給与面やビジネスリソースとしての社員のマネジメントにおいて段階的に導入しやすい考え方である。ワークアズライフという日本人究極進化系へ達する施策として有効で、まずは現在政府やメディアにて提唱されている働き方についての意識改革が広く浸透すべきではないだろうか。

複数のコミュニティに所属

新しい職で働く際に、まず上手くやらないと職を失うのではという考えに至ることが多かろうと思う。尻込みして言えない意見もあるだろうし、遠慮した行動は単純にストレスになる。

本書では金融投資における所謂ポートフォリオを職についても形成すべきという提案が謳われている。著者も大学学長補佐に教授であり、会社を経営し、メディアアーティストとして芸術家の顔も持つマルチキャリアだ。どこか一拠点の収入に依存している以上はリスクが増し、これからの時代にあっていないのではという考え方が記されている。古くは百姓という言葉がそうであったとのことで、百の職業を持つものを指し、生産者として複数の職を生業としている様が語源であるとし古来の日本人の生き方としては自然に根付いていた文化であるという事実に納得を得た。

現代、企業や個人、家庭など、どこか閉鎖的なコミュニティを形成する傾向にあるような風潮があるが、例えば出産後の女性などは地域の市役所や児童館などに顔を出し、複数のコミュニティに所属している状態というのは安心でもあり、人としての繋がりはストレス軽減にも役立つ。地域と繋がることで例えば将来的な職を得ることもできればトラブル時の救済も望める良い状態だ。これからは、一個人単位でも積極的に勉強会の会場やセミナー、オンラインサロンやSNS上のつながりなど相関図を複雑化するべきで、関係性の狭い深化よりも広範囲化によるネットワーク構築が古き良き日本人の性質にあったストレスのない社会を生み出せるのではないか。

他にも楽しいテーマで日本を述べられており、「欧米という幻想」「二子玉川はトレンディドラマによって作られた」など耳にすることが少ない言が多いので、またレビューしたいと思う。


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