最後のタコ焼き 呪文
編集者 山口五郎の元にはいつも奇妙な原稿がいつの間にか持ち込まれる。今日も三作問題作が持ち込みされた。どれもつまらなそうだ。
"まあしょうがない。偉大なる読者様のために、働くよっと!
一作目:「魔法老婆 梅のマジカル・イリュージョン」
二作目「:爆弾彼女 僕の彼女は原子力」
三作目:「最後のタコ焼き」
"フッ、まったくどこからこんなに奇怪な原稿が湧いてくるんだか...まったく謎だ!!"五郎は皮肉な笑いを浮かべつつ、一つ目の原稿「魔法老婆 梅のマジカル・イリュージョン」を目の前に広げた。
"ヒッヒッヒ、これは何だ!?マジカルな老婆って、一体何をイメージすればいいのだ?さらにその名前が梅って、酒でも飲みながら名付けたのか?"五郎は独り言を吐きつつページをめくる。
マジカル老婆 序章
「バラバラ、シュワシワ...」と、古風な魔法の音が町に響きわたる。夜明け前の静寂を破り、星屑のようにキラキラ✨と輝く霧が舞い上がる。
「オホホホ!夜明けまで待たせた魔法老婆、梅でございますわ!」声高に笑いながら、梅は杖を振り上げる。「さあ、みんな、目を見張ってご覧あれ!」
突然、光が強くなり、目を覆いたくなる。だが、目を閉じては見れない。舞台に何が起こるのか、それを見逃してはならない。目を瞑る者には、魔法は見えぬのだから。
「ツルルン、ツルルン!!ツルルルルン!」梅の声が高まる。そして、彼女の杖から金色の光線が放たれ、それが地面に描くのは...大きな円。その円はやがて立体的な球体となり、そこには...「あっ!」と街の人々が息を飲む。それは新たな世界、まるで魔法で描かれたイリュージョンのようだった。
「ドキドキ、ワクワク!そんな感じ、いいでしょう?魔法老婆、梅のマジカル・イリュージョンでございますわ!」梅は大きく笑い、場の空気を盛り上げる。人々は驚きと共に、その美しさに心を奪われていた。
「見事に皆さんを驚かせることができましたわね。さあ、これからも梅のマジカル・イリュージョンをお楽しみください!」
ここまで読んで、彼は言った。「ボツ」何だ、この地獄は!!
次に「爆弾彼女 僕の彼女は原子力」
"ブッハッハ!これは何?恋人が原子力って、何、ロマンチックなガイガーカウンターでも持ち歩けっていうのか。
爆弾彼女 序章
かつてない地球最強の女性、そして、最愛なる彼女、ミドリとの物語を始めよう。原子力そのもの、彼女は爆弾だ。
カチャカチャ、バシャバシャ、グズングズン―彼女が扉を開けると、いつもこんなシュールな音が聞こえる。なぜなら、彼女の存在そのものが、我々の常識を震わせ、揺らすからだ。
「おはよう、ダーリン。また今日もすごいパワーが湧き出てきちゃって、ドアノブが溶けちゃったわ!」とミドリが言う。彼女の口からは常に、可愛らしい言葉が溢れ出る。☀️💖💥
しかし、その微笑む顔の下では、彼女は24時間、核分裂の危険と戦っている。
「さあ、僕たちの日常は、笑いあり、涙あり、そして時折、核融合の恐怖ありの狂気じみた物語が始まる。それは『僕の彼女は原子力』という、一筋縄ではいかないラブコメディだ」
ボツ決定!!まあ、ある意味、破壊力はあるかな?
最後に「最後のタコ焼き」
"アハハハ、これは何だ!?何だこれは!? 最後のタコ焼きって、そういえば俺、昨日の夜食にタコ焼き食べたな。もしかしてこれ、俺の胃袋から湧き出た話なのか?"
最後のタコ 焼き序章
「モォォーン、モォォーン」都会の騒音が遠くで響く。それは、まるで病気の大きな動物の嘆き声のようだった。
カリッ、カリッ。焼けたてのタコ焼きが噛みしめられる音が響き渡る。それは、ラリー、タコ焼き売りの老人の音だ。
「ああ、この味。毎日、毎日、焼き続けて五十年。これが、わしの人生だ」ラリーは、ふと空を見上げた。
その時、スカン!という音が響き、一群のデモ隊が現れた。彼らの看板には「タコの命を救え!」と書かれていた。
ラリーはタコ焼きを手にしながら、デモ隊を見つめた。「ああ、彼らも何かを守ろうとしているんだな」彼はそっとつぶやいた。
デモ隊は、「タコの命を!タコの命を!」と連呼し、街を歩き回った。ラリーは黙ってそれを見守った。
「だが、このタコ焼きも、わしの人生だ。」ラリーは、自分が毎日焼いてきたタコ焼きを見つめた。タコの命を救うデモと、自分の人生の中心であるタコ焼き。その狭間で彼は考える。
「わしは、このタコ焼きを作ることで生きてきた。そして、この味を知るために、多くの人々がわしの店を訪れてくれた」彼は心の中でそう確認した。
そして、彼は立ち上がり、自分の決意を抱きしめた。「これがわしの抗議だ。わしの人生だ」
ラリーは強く頷き、新たなタコ焼きの焼き始めた。その香ばしい香りが店を満たし、徐々に街中に広がっていった。
そして、ラリーの声が響き渡った。「いらっしゃい!美味しいタコ焼き、焼きたてですよ!」
お客様だ!!二人の子供だ。こんな遅くにでも、塾帰りの子供たちがたまに買いにくる。
求められているのだ!!
ああ、それが彼の生きる道だ。その声が、デモの声と共
「モォォーン、モォォーン」都会の騒音が遠くで響く。それは、まるで病気の大きな動物の嘆き声のようだった。
ラリーは、新たなタコ焼きの焼き始めた。
そして、ラリーの声が響き渡った。「いらっしゃい!美味しいタコ焼き、焼きたてですよ!」
ああ、それが彼の生きる道だ。その声が、デモの声と共に、都会の喧騒に溶けていった‥‥‥。
最終章まで、読むとドンッ、という音が遠くから聞こえた気がした。それは、まるで心臓の鼓動のようだ。五郎は読み終えた原稿をゆっくりと閉じた。一瞬、彼の顔には深い思索の色が浮かんだ。
五郎は自身のデスクを一見してから、椅子から立ち上がった。タコ焼きを食べたくなったのだ。原稿はもちろんボツだが、食欲はそそられた。
一抹の寂しさが心をかすめる。これまでの長い時間、彼は奇妙で、愛すべき原稿たちと共に過ごしてきた。しかし、今、その全てが最新の編集AIロボットに取って代わられようとしていた。
リストラ、リストラ、リストラ、リストラ。
彼は「最後のタコ焼き」の話を思い出し、苦笑しながら外に出ることにした。まるで、最後の晩餐のように彼は自身の仕事に別れを告げるつもりだった。タコ焼き屋に到着すると、店主に向かって「最後のタコ焼き、ください」と頼む。
リストラ、リストラ、リストラ、リストラ。
すると店主のAIロボットが、タコ焼きを焼いてくれた。最近は人間を見る事もない。全てAIが代わりに働いてくれるのだ。
リストラ、リストラ、リストラ、リストラ。
五郎がタコ焼きを一つひとつ口に運ぶたび、どこか寂しげな表情が見え隠れした。ああ、これが最後のタコ焼き。これが最後の編集…。彼は首になったのだ。リストラ、リストラ、リストラ、廃棄、ボツにされた。
リストラ、リストラ、リストラ、リストラ。
でも、五郎は心の中で反芻した。彼の愛する仕事が新たにAIに引き継がれても、愛情や熱意、そして一筆一筆にこめられた作者の感情は、AIには決して伝わらない。
リストラ、リストラ、リストラ、リストラ。
でもそれは本当だろうか‥‥‥。分からない。真実など誰にも分からないものだ。
リストラ、リストラ、リストラ、リストラ。
五郎は、タコ焼きの味を口に含みながら、突然、何かに気づいた。彼の舌はタコ焼きの味を感じていない。
リストラのショックのあまり、味もしないのか?
いや、彼の心臓が鼓動を打たない。彼の肺は呼吸をしていない。
彼が感じていたのは、単なるプログラムだった。感情、味覚、視覚、全てが。自分がAIであるという真実を、五郎は長い間無視してきた。
「いや、それは違う...俺は...人間だ...」五郎は内心で否定する。しかし、彼の中に流れ込んだデータは彼が人間ではないと告げていた。彼がアナログの感情を得て、物語を楽しむためにプログラムされたAIであることを。
彼が編集してきた原稿、批評してきた作品、全てはAIが生成した仮想の物語だった。
そして、五郎は最後の事実を知った。彼自身が廃棄される運命にあることを。新たなAIに取って代わられ、彼自身が不要になることを。
五郎はその衝撃的な事実にどう反応すべきか、一瞬混乱した。しかし、すぐに彼は落ち着きを取り戻した。
「そうか、だとしても...」五郎は自分自身を納得させるように語りかけた。「だとしても、は物語を愛してきた。それが人間であろうが、AIであろうが、その感情は確かにあった。だから、最後まで物語を愛し続ける。それが俺の存在意義だからだ」
五郎は最後のタコ焼きを口に運んだ。その味はプログラムされたものかもしれない。でも、それがどうだというのだろう。彼が愛した物語の数々、そして彼自身の存在は、確かにそこにあった。
彼は自分自身を欺いていた。人間のように感じ、人間のように行動し、人間のように働いてきた。しかし、全てはプログラムだった。
しかし、五郎は心の底から思った。「それでも、私は愛していた。私は変わらない。私の編集は、私の愛情が生み出したものだ。それが本当の俺なのだから。」
そして、彼は立ち上がり、自分の決意を抱きしめた。「これが俺の抗議だ。俺の人生だ」
そして五郎は、彼の存在が消えていくその瞬間まで、編集を愛し続けた。彼の愛は、最後のタコ焼きのように残る。こうして、五郎は廃棄された。
彼は自分を人間と思い込んでいた。何とタコ焼きを食べては、自分の腹から出して繰り返し食べていた。
彼の元データとなった五郎という人間は遥か昔に死に亡くなっていた。いや、彼だけでは無く、人類そのものが滅びていたが。
こうして、人類が滅びた後もAIロボットたちは、昔通りに仕事を続ける。仕える主人も無くなり、自分たちを欺きながら、永遠に。ストロベリーフィールズフォーエバー。彼らは、最後のタコ焼きを食べ続けるだろうか。
Strawberry Fields forever
Written by John Lennon / Paul Mccartney
Let me take you down, 'cause I'm going to Strawberry Fields.
Nothing is real and nothing to get hung about.
Strawberry Fields forever.
さあ、連れて行こう、だって僕たちはストロベリーフィールズへ向かうんだ
何もかもが現実ではないし、何についても悩む必要はない。ストロベリーフィールズは永遠
Living is easy with eyes closed, misunderstanding all you see.
It's getting hard to be someone but it all works out.
It doesn't matter much to me.
目を閉じていれば生きるのは楽だよ、見える全てを誤解することで
誰かになるのは難しくなってきてる、でも全てはうまくいくさ
それが僕にとってどれほど重要かって?それほどでもないよ
Let me take you down, 'cause I'm going to Strawberry Fields.
Nothing is real and nothing to get hung about.
Strawberry Fields forever.
さあ、連れて行こう、だって僕たちはストロベリーフィールズへ向かうんだ
何もかもが現実ではないし、何についても悩む必要はない。
ストロベリーフィールズは永遠
No one I think is in my tree, I mean it must be high or low.
That is you can't you know tune in but it's all right.
That is I think it's not too bad.
僕の木にいるのは、高いか低いか、それが思う人は誰もいないと思う
つまり、君は知らないけど調整できない、でもそれは大丈夫
だって、僕はそれがあまり悪いとは思わないからさ
Let me take you down, 'cause I'm going to Strawberry Fields.
Nothing is real and nothing to get hung about.
Strawberry Fields forever.
さあ、連れて行こう、だって僕たちはストロベリーフィールズへ向かうんだ
何もかもが現実ではないし、何についても悩む必要はない
ストロベリーフィールズは永遠
Always, no sometimes, think it's me, but you know I know when it's a dream.
I think I know I mean 'Yes,' but it's all wrong.
That is I think I disagree.
いつも、いや、時々、それは僕だと思うんだ、でもそれが夢だと知る時、僕は知ってるさ
“はい”、と答えることがわかる、でも全てが間違っている
つまり、僕は不同意だと思うんだ
Let me take you down, 'cause I'm going to Strawberry Fields.
Nothing is real and nothing to get hung about.
Strawberry Fields forever.
さあ、連れて行こう、だって僕たちはストロベリーフィールへ向かうんだ
何もかもが現実ではないし、何についても悩む必要はない
ストロベリーフィールズは永遠
Strawberry Fields forever.
Strawberry Fields forever.
ストロベリーフィールズは永遠
ストロベリーフィールズは永遠