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コミュニティワーカー、という仕事。

コミュニティワーカー、という魅力的だがあまり知られていない仕事の紹介。

世の中にはごまんと仕事がある。

消防士は火を消す仕事。医師は病気を治療する仕事。教師は勉強を教える仕事。

ではコミュニティワーカーは?

そう聞かれてすぐどんな仕事か思い浮かんだあなたはとてもマニアックだ (もちろんいい意味で)。

コミュニティワーカーとは?

私がこの仕事について16年。大阪府南部の郊外で、社会福祉協議会の職員としてコミュニティワーカーになった。

とても楽しいし、やりがいを感じている。

ではコミュニティワーカーとは。『新版よくわかる地域福祉(ミネルヴァ書房)』の「コミュニティワーカー」ページにはこう書いてある。

コミュニティワーカーは、コミュニティ(地域社会)において課題を抱えた人々や地域全体の課題に住民自身が気づき、その解決のための組織づくり・活動づくり・計画化・地域社会の変革・開発を、コミュニティ・ワーク(地域援助技術)という専門的援助技術を用いて支援・協働する専門職です。

意味、分かる? わからないよね。

書いたの、じつは私。専門書だとどうしてもこんな書き方になるんです…

でもね、福祉を知らない人にいきなりこれを説明されてもなかなか伝わらない。…だから、わかりやすく書きます!

要するに地域をより良くする仕事

簡単に言うと、「自分たちが住む街をもっと暮らしやすい街にしましょう」という仕事。

ちなみに、私が働く市では、コミュニティワーカーは、3人。で、人口は5万4000人。3人だけで暮らしやすい街づくり、できる?いやいや無理に決まってる…。

じゃあ、どうする?そう、そこに住む住民の人たちと一緒にやる。

地域のおっちゃんやおばちゃん、時には小中学生たちとも一緒に。いやむしろ正確には、住民の人たちがやる。そこに寄り添いサポートする。

コミュニティワーカーは、住民みんなが仕事仲間であり、仕事の対象。地域を歩き回り、そんな住民の人たちと出会うこともコミュニティワーカーの大切な仕事。

私たちはいろんな困りごとに直面している

みなさんは今、何に困っていますか?

「スマホの容量がすぐいっぱいになる…」「気に入ってたお店が無くなった…」

あるある。でもこれは自力で解決案件。

では、これは?

「離れて暮らす親が体が弱ってきて心配…」

自力で解決するのは難しい。でも意外と周りに当てはまる人、いませんか?

なんせ今や我が国は高齢化率が30%。だいたい3人に1人が高齢者。てことは、どの家にも、そしてどの地域でも直面している困りごと、という訳。

「病気を治すのが医者。なんでも治してもらおう」

いやいや現代医学でも認知症は治らない。ウサインボルトも87歳になったら9秒58では走れない。歳をとると、できないこと、困りごとが増えてくる。

じゃ、どうする?

あ、そうだ、介護保険があるじゃないか!ヘルパーさんに頼もう。

介護保険でできること

2000年に創設された介護保険制度。高齢者の生活が大きく変わった。ちなみに、ヘルパーさん(訪問介護)の仕事内容はこう書いてある。

生活援助とは、身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助であり…

洗濯もしてくれるし、ごはんも作ってくれる。介護保険で身の回りのこと、結構できそう。じゃ、コミュニティワーカー、別にいらないよね?

いや、ちょっと待った!厚労省からの通知には、こうも書いてある。

※次のような行為は生活援助の内容に含まれないものであるので 留意すること。
(2)直接、本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為

ん?つまり、本人の生活上絶対になくてはならないものじゃなければ、やっちゃダメよ。と。

よく例に出るのが、庭の手入れ、菜園の水やり、網戸掃除など。これはやっちゃダメ。

ふむ。

ところで生活に「絶対になくてはならないもの」て。みんな一緒??

あれも欲しい これも欲しい
もっと欲しい もっともっと欲しい
俺には夢がある 両手じゃ抱えきれない
俺には夢がある ドキドキするような
       ザ・ブルーハーツ『夢』より

ブルハ好きの私は、80歳を超えても、きっとあれもしたい、これもしたい、と言ってると思う。

サッカー日本代表戦があれば長居スタジアムに観戦に行きたいし、河原でBBQもしたい。

でも、きっとヘルパーさんはやってくれない…  そう、夢を叶えるお手伝いは、やってはいけないのだ。

ミヨコさん(87)の “夢”

コミュニティワーカーとして私が担当している地域に住む、ひとり暮らし高齢者のミヨコさん(仮名)は87歳。民生委員さんが訪ねると、

「庭で野菜を育てたいな」

こう言っていたそうだ。自力ではできない。

はい、むり〜!

いやいや、民生委員さんはそんなことは言わない。笑

民生委員さんはコミュニティワーカーに相談した。そしてコミュニティワーカーは、ミヨコさんの住む地域の中学生に相談した。

「ミヨコさん、庭で野菜育てたい、て言ってるけど、どうかな?」

中学生たちは、

「ミヨコさんのために私たちが一緒に育ててあげる!」

と言い、立ち上がった。

中学生による毎朝の水やりと“おはよう”

5月にトマトとピーマンの苗を植え、中学生ボランティアによる毎朝の水やりが始まった。

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12人でシフトを組み、ミヨコさんちに行く。平日の学校に登校する前。夕方塾に行く途中。日曜日の朝早くにも。

コミュニティワーカーはルールをひとつ提案した。

「水やりに来たらピンポンを押し、ミヨコさんの元気な顔を見よう」

こうして中学生たちは、水やりと“おはよう”を毎朝ミヨコさんに届け続けた。

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8月。

すくすく育った野菜たちを収穫。ミヨコさんの夢が叶った。

収穫直前の、ミヨコさんからの手紙。

『毎日のように中学生の人たちが来てくれるので嬉しいし、元気になれた!そして毎朝、トマトとピーマンの成長をながめるのが楽しいわー!ほんとにみなさん、ありがとう!』

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助け、助けられる

いい話だなあ。でもこの話には衝撃の事実が…

な、なんと。ミヨコさんはトマトが嫌い。
え?ちゃんと聞きましたよ、何植える?って。笑

「トマトならたくさんできるから、中学生のみんなにたくさんあげられると思って」

とミヨコさん。

なーるほど。中学生がミヨコさんを助けてたと思ってたけど、実はミヨコさんも中学生のためにやってあげてたんだね。

まとめ ーコミュニティワーカーのおもしろさー

さて、改めて。

私、コミュニティワーカーは、実はこの話の1年前に中学校に「学校外で自主的にボランティアをしよう」と投げかけ、『子ども福祉委員』という組織をつくった。12人の中学生がボランティアとして地域に羽ばたいていた。

↓子ども福祉委員の詳しいお話はコチラへ♪↓

そして、地域の熱心なおばちゃん(民生委員)たちと、出会い、ミヨコさんと出会った。

みんなの想いをつないだ。つなぐことで、ミヨコさんの夢を叶えられた。そこにあったのはみんなのキラキラした笑顔。

ちなみに、子ども福祉委員を立ち上げた時、中学生たちがつけた愛称は…

『夢かなえ隊』

コミュニティワーカーは動く。コーディネーターとして、ファシリテーターとして、時にはプロデューサーとして。

“できない”を「支え合い」によって“できる”に変える。

笑顔いっぱいの、暮らしやすい街をみんなで創る。

やり方は、出会う人の数だけ無限にある。

コミュニティワーカーは、そんなとっても魅力的でやりがいのある仕事。

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