居酒屋さんの社交が好きな人が焼き鳥屋さんを出入禁止になった|経験談

この経験談で分かること

「社交の場が好きで、お店を楽しめる客であっても、お店の側から突然拒否されることがある」、ということを伝えたい。
概要だけ先に述べると、ある男は、今年5月から6月中旬の間に4回通った焼き鳥屋さんの女主人から、「店に馴染まない注文スタイル」を理由に、出入禁止処分になった。
この記事では、男が出入禁止になるまでの経緯と、教訓をまとめたい。
ある焼き鳥屋を貶めたり、特定につなげたりする意図はないため、地域名や店名は伏せるものとする。

事件前の状況:焼き鳥屋に通い始める

ある20代の会社員男性は、1人で個人経営の店(バーや居酒屋、エスニック料理屋)に行くのが好きで、そうした場で飲食と会話を通じた社交を好む。
彼は、5月の上旬、自宅からすぐ近くの焼き鳥屋から朗らかな笑い声が聞こえるのに惹かれて、焼き鳥屋の暖簾をくぐった。
マスクを着用した60代と思わしき女主人が、 L字型のカウンター(約8席)を満席にする中年男女に囲まれながら、酒と焼き鳥と各種料理を提供していた。
男は、その店ではかなり年若ではあったが、常連客の男たちとすぐに打ち解け、その場で常連客が勧める焼酎のボトルをキープした。2,500円程度の芋焼酎をロックで飲みながら、スポーツや仕事や旅行の話を楽しむ。
女主人は、自ら冗談を言うようなタイプではないが、そうした話題に柔軟に対応し、彼女の腕と性格を慕って通ってくる常連客が多くいた。

焼き鳥は1本150円程度から注文でき、めいめいが女主人に追加注文する形で、3時間ほど長居する客も稀ではないようだった。

ボトルキープした彼は、翌週から週に1回のペースでその焼き鳥屋を訪れた。20代の会社員にとって、仕事終わりに軽く夕食をとったあとの焼き鳥と焼酎と社交が楽しめる場所は、居心地がよかった。
彼は毎度、ボトルキープしている芋焼酎をロックで飲み、焼き鳥を2,3本注文し、1時間半〜2時間程度座って楽しんだのち、1,000円ほどを支払って店をあとにしていた。

出入禁止当日

6月の中旬、男は仕事を終え、白飯と軽い野菜炒めで腹を満たしたあと、例の焼き鳥屋を訪れた。最初に芋焼酎を勧めた中年男と、「今日が誕生日だ」という30代女性とその同棲相手らが座っていたが、カウンターは空席が目立った。
20代の男は、ほとんどいつもの通り、2本焼き鳥を注文し、芋焼酎のロックを飲み続けた。通い始めて4回。ボトルは1/5ほどを残すのみだった。
しかし男は、その日他の酒を飲む気分でもなく、ボトルを空けられる訳でもなかった。ほどほどに会話を楽しみ、女主人に会計を頼む。

会計を済ませる。「990円。」千円札1枚の会計だ。
女主人は唐突に、カウンターに返却されたボトルをテーブルに立ち上がった男の前に置き直して、彼に告げた。「持って帰っていいよ。」
男は戸惑った。ボトルキープしているお酒が空にならなかったとき、「持ち帰る」という選択肢を客は基本的に持たない。
あっさりとした口調で、伏し目がちに告げる女主人の意思は堅いようで、「でも…」「どうしてですか?」と困る男のリアクションに構わず、再度ボトルを持ち帰るよう促した。
店に残る男性(30代女性客の同棲相手)は驚いた表情で、「ママが言うんだし…」と状態を穏やかに済ませようと、女主人と若者の顔を交互に見た。
若い男は、女主人の何らかの堅い意思を感じ、芋焼酎のボトルを持って自宅に帰った。
この女主人の対応を後日、彼は「出入禁止なのだ」と悟ることになる。

出入禁止翌日:決定的な言葉

彼は帰宅後も戸惑っていた。ボトルキープしている瓶を持ち帰る、という自分の行動と、女主人の雰囲気から、何か不穏なものを感じていた。

彼は翌晩、再び焼き鳥屋の暖簾の前に立つことにした。焼き鳥を食べ、社交を楽しむためではない。ボトルを持って帰るよう依頼される、ということを彼なりに一晩考えての行動である。
閉店予定時刻を過ぎた24時ごろ。店じまいをする女主人が暖簾から出てきたタイミングで、彼は女主人に声をかけた。

男「昨夜伺った者です。昨夜は大変失礼いたしました。謝りに来ました」
女主人は、細い目で彼の方に向き直った。
男「ボトルを持って帰るよう仰った意味を私なりに考えて、私の昨夜の行動が失礼だったからそう仰ったのだと考えました。教えてください」
女主人は「昨日だけじゃないです」と断った上で、淡々とした口調で彼に言い放った。

「周りが『美味しい』と言って焼き鳥を注文して、お酒を飲んでくれることが嬉しくて、私は店をやっている。そこに、おしゃべりだけして、500円、700円だけ払って帰っていく客がいたら、周りのお客さんはどう思う?私は料理に誇りをもっている。いつも2本だけ食べて喋って帰っていくあなたに、『店を馬鹿にされている』と思っていた。うちは焼き鳥屋だ。おお喋りだけしたかったら、バーやスナックに行ってください」……。

そのようなことを、彼女はほとんど一息に男に伝えた。
男は何度も頭を下げ、繰り返し詫びる気持ちを述べたが、彼女の意思は固かった。男は、「行動を改めて、もう一度来ることを許してはいただけませんか」と尋ねたが、彼女は「もうダメ。来ないで欲しい」と言い切った。

男は、翌晩謝るために店に赴く、という大胆な行動をとったが、その彼なりの誠実さが女主人の気持ちを変えることはなかった。

教訓

この話から、社交好きな若者がいかに店を楽しんでいたとしても、店・主人が「店に馴染まない注文スタイル」と判断すれば、出入禁止になることがある。

出入禁止、というと泥酔や暴力のような状況をイメージするかもしれない。しかし、このような展開もありうる。

店が客を選ぶ、という文化もまた、飲食の文化の一つだ。その際、望まれない注文スタイルを繰り返す者は、二度と店の暖簾をくぐることができなくなることだって、ありうるのだ。

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