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ファッションのおかげで、私は彼らと生きている(SUMIRE KANESAKA)

私は家族の死を2回経験した。友達も失った。親戚も近所の人たちも少なくなって寂しい。なぜ彼 / 彼女が死んでしまったのか、彼らのいない世界でどう生きていけばいいのかなどと考えることがよくある。きりがないのはわかっているのにやめられない。そして、こんな癖を持っていた私が、今はなき彼らを思うための媒体のひとつがファッションだった。

私の宝物は、祖母の形見のネックレスだ。もっと高そうなものもたくさんあるが、オパールのネックレスが一番気に入っている。自分に似合っていると思うから。お下がりの服も数え切れないほどもらった。絵の具を混ぜたようなマーブルのカーディガンや、ぶどうみたいな濃いパープルのふわふわセーター。これらを纏うと、かつてそれを身につけていた祖母の視点に立てる気がする。

祖母からもらったネックレス(Photo by SUMIRE KANESAKA)

祖母は信じられないほど優しくて、明るくて、なんでもできた。それに比べて私は弱くて何もできない。それでも祖母にもらったものを着れば、少しだけ同じような性格になって、なんでも頑張ってみようと思える。よく着ていた黒い服の感触も覚えている。走って抱きつくと、私の目の高さに祖母のお腹があって、ベロアの肌触りが祖母と一緒で優しかった。

つまり、私はファッションを通じて自分視点だけではなくて、みんなの視点で今を見ている。昔の人や過去の自分の視点を、今を生きている自分が体験している。そして、このとき自分に流れ込んでくるすべてを活かして、いつか多くの人の心に響くなにかをつくりたい。

冒頭で述べた、会えない人を思い浮かべて抜け出せなくなる癖は、アドバンテージでもあると思う。後悔のないように生きようと思い、他人の気持ちに寄り添おうと努められるようになった。これがきっかけで、自分の好きなことを活かして人を喜ばせることのできるクリエイティブディレクターになりたいという夢ができた。ファッションや芸術を学ぼうとする私にとって、この価値観は個性だ。いくら彼らを思っても、実際に会うことはできない。それゆえに孤独を感じることもあるが、昔の人々とつながっている感覚を味わうことだってできる。そのために必要で、私をここまで後押ししてくれたのがファッションだった。

2022.09.04
SUMIRE KANESAKA


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