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【コラム】外国人と一緒に働く〜研修編〜

地方でも最近増えてきた「外国人労働者」。
その労働形態は様々ですが、製造業・宿泊観光業・介護業・IT業界で活躍する外国人が多くいらっしゃいます。

先日、とあるニュース記事で、「円安でも日本で働くことを選ぶ」旨が書かれていました。

外国人の立場で考えた時、昨今の円安状態が続く日本で働く「給与面」でのメリットは少なく、同じアジアでもシンガポールや中国、韓国に人材が流れている状況です。
「お金を稼ぐ」という意味では、至極当然の判断であることは間違いありません。

しかし、そのニュース記事によると、IT業界のインド人労働者の多くが、
「確かに給与は低いが、欧米ではなく日本に行きたい」と答えたそうなのです。
その理由は、人の親切さや、国全体が安全で暮らしやすいことを挙げていました。

日本ならではの「文化」が外国人に評価され、「あえて」日本で働く選択肢をとっている現状に、私はとても嬉しく感じました。

日本の価値を「値下げ」している訳ではありませんが、どうしても日本を選ぶ経済的メリットが薄い昨今、いかに日本で働くことの魅力を、これまでとは違う形で提示する必要があります。

そんなことを考えさせられていたタイミングで、先日、とある社会医療法人様で「接遇・コミュニケーション研修」を担当させて頂きました。

その研修には、介護職の外国人スタッフも3名参加されました。

「外国人と一緒に働く」
その為の日本人向けコミュニケーション研修は、私の得意分野でもあります。
そして何より、外国人スタッフも参加された当日の光景に、前職時代の「訓練」を思い出し、とても懐かしさを感じました。

資料作成・研修開始前・研修中
外国人スタッフも交えた研修や会議では、この3点で工夫をするだけで、外国人スタッフを「借りてきた猫」ではなく「戦力」に変化させることができます。

【資料作成】
資料に書かれた日本語って本当に難しい。
それは「日本人」である私ですらそう思います。

「ビジネス文書研修」というものが存在するくらい、何十年も日本語を母国語として使ってきた日本人にとっても難しい文章や言葉を、社会では当たり前のように求められますよね。

《ビジネス文書はなぜ難しいのか?》
・文書全体の構成が決められている
・意味を汲み取らなければならない日本語特有の表現
・《説明⇨結論》といった文章構成から、「本題」がわかりづらい
・そもそも言葉自体が難しい

日本人でもこのポイントを難しいと感じるのであれば、外国人にとっては尚更です。
しかし、その「難しいポイント」がわかっているのであれば、それをシンプルに分かりやすくするだけで、この問題が解決するのです。

《外国人向け資料のポイント4つ》
・冒頭に「結論」やその「目的」を示す
・曖昧な表現は書かない
・小学生(5~6年生)でもわかる言葉を使う
・文章は基本的に「単文」で書く
※「単文」・・・「私は日本食が好きです」
⇨主語・述語・目的語を1つずつ並べ、省略しない!

加えて、それぞれの資料には絵や写真、ピクトグラムなど、全員が共通認識を持てる工夫がなされるとより一層分かりやすものになるでしょう。

【研修前の工夫点】
正直言って、ここで全てが決まると言っても過言ではないくらい、「研修前」のアプローチが非常に重要になります。

やるべきことは、シンプルに2つ!
・挨拶と自己紹介をする
・名前の呼び方を確認する

当たり前に思えるこれら2つを、必ず「こちらから声をかけて実施する」ということが最大のポイントです。

私は必ず、その国の言葉で「こんにちは」と「ありがとう」を調べ、メモに書いておくことを徹底しています。

実際のメモ

そして、ファーストアクションは、こんな感じで挨拶と自己紹介をします。
「シンチャオ!こんにちは!私の名前は髙橋久美子です。会えるのを楽しみにしていました。」

これまでの十数年の経験上、自国の言葉で挨拶をされてニコッとしない方は一人もいませんでした。
そして、できれば日本語の「こんにちは」よりも前に言えると、よりその反応がよくなります。
それは恐らく、「自分たちは受け入れられているんだ」という気持ちの安心から生むものなのだと思います。

また、ポイントはこちらから必ず言葉を発し、その後のコミュニケーションの枠組みを作ってあげることです。
簡単に言うと、「同じように言えば大丈夫」と言う安心感を作ってあげることで、その後の言葉数を増やしやすくなります。

「答えたいけど、何を話せばいいんだろう?」
このような気持ちを持っているであろうことは、逆の立場に立って考えてみると分かりますよね。

そして、大きなポイントはその次にもあります。
それは、自己紹介に続いてこのように聞いてみましょう。

「(フルネーム)さんですね。なんて呼んだらいいですか?私のことは「タカハシさん」と呼んでください。」

外国人のお名前は、複数のミドルネームが付いていたりなど、日本人には馴染みのない形式のお名前を持つ方も多くいらっしゃいます。
また、台湾や香港、シンガポールなどで多いのが、自国名に加えて「英語名」を持っているケースもありますし、タイでは幼い頃から正式な「ニックネーム」を持ち、公式の場でもそれを使うことが一般的とされています。

ご本人が呼んでもらいたいお名前を尊重し、正しく呼んで差し上げることは、お互いに心を開く上でも重要な「準備」になるのです。

【研修中】
研修や会議中で重要なこと。
それは、何か1つでも「役割」を与えると言うことです。

先ほども使った「借りてきた猫」と言う言葉。
彼らをただ座らせて「参加」とみなすのではなく、その場の戦力の一人と実感できるような「役割」を与えることは、彼らにとってもやりがいや刺激の1つになります。

研修においては、「発言を促す」と言う形に置き換えるといいでしょう。

その際には、「みんなの前で恥をかきたくない」と言う感情を生まない為にも、事前に「この後、このことを聞くので、今話してくれたことを発表してください」など、事前のアプローチをしておきましょう。

少し頑張れば越えられるハードルをいくつか設置してあげる。
これは、日本人だけではなく、外国人スタッフを育てる上でも非常に重要なポイントになります。

そして、発言してくれた後は、必ずその「行動」を承認・感謝し、フィードバックを加えることで、よりその対応の質が向上します。

一見難しそうに感じるこれらも、やってみると意外と簡単にできることばかり。
そして、簡単な割に相手の変化を感じやすいと言うのも嬉しいポイントではないでしょうか。

受け入れる側も、「間違えたらどうしよう」を捨てること。
聞き間違えたり、聞き取れなかったら、その旨を正直に伝えてもう一度発言してもらうようお願いすれば良いですし、それが相手にとってのハードルを下げて挑戦しやすい場にも感じてもらえるはずです。

大人は転び下手。
転ぶことを「恥ずかしい」と感じがちですが、まずはそこのハードルを下げることが、外国人との円滑なコミュニケーションでは大切です。

地方部での状況を見ていると、「コミュニケーションノウハウ」の前に、このマインド醸成の方が必要そうです。
転んだってええじゃないか!

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