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「日曜の夜ぐらいは…」第三話:「前向き」な三人に、お金は幸せをもたらすのか

幸せとはなんなのか。お金持ちなら幸せなのか、すごい仕事ができたら幸せなのか、家族の仲がよかったら幸せなのか。私自身もわからないし、多分誰も知らない。幸せと不幸は表裏一体で、幸せだと思った瞬間に、不幸なことが起こることもある。

「日曜の夜ぐらいは…」第三話では、サチ(清野菜名)が宝くじで当選した3000万円を、若葉(生見愛瑠)、翔子(岸井ゆきの)と1000万円ずつ山分けするまでが描かれた。

家で当選結果を見た時、サチは喜びきれなかった。「こうなればいいのにとか、夢見たり、そういうのは……」とボソボソ喋るサチからは、改めて幸せ耐性のなさが窺える。夢を見たら、もっと現実が辛くなるから。辛いんだってことがわかってしまうから、夢も見たくない。「サチが頑張ってきたから、ご褒美くれたんだよ」そんな母・邦子の言葉すら、喜びきれず、納得できない。

ただ、一人じゃない。三人で山分けしたら、三人で幸せになれる。そのことに気づいたサチは、途端に笑顔になる。自分が幸せになるよりも、若葉と翔子と一緒に幸せになる方が、サチにとっては幸せなのだろう。

ラジオ番組のバスツアーで、再会を果たした三人。一回目の参加時と同じように、旅館の浴衣を着て、語り合う。違うのは、話題だ。

サチは喜びきれない感情を二人に話す。自分のせいで母親は車椅子生活を送り、離婚した父親からは1円も金銭的な援助もない。家計を支えるために、高校も退学したサチ。一人でずっと辛い現実と共に生きてきた。期待した方が、辛くなる。そう思うのは当然だろう。

そんなサチに若葉がこう話す。

現実から逃げずに、ちゃんと前を向いている。ちゃんとしっかり前を見ているから、慎重になったり、拒絶したりしてしまう。むしろ前向きだ。

それは若葉にも、翔子にも言える。二人だって、自分の前に広がる現実をきちんと真正面から受け止めている。この現実は仕方がないことだと受け止められることだって、前向きだ。

バスツアー終了後、三人はグループラインを作り、宝くじ当選金の受け取り日時の予定を決めて解散した。宝くじのためとはいえ、三人が連絡先を交換しているのが、なんとも嬉しい。

その日から、三人の日常にグループLINEの通知が加わる。LINEで繋がっている。目の前にはままならない日常があっても、LINEの通知がきたら、ほんの少しだけ、明るい気持ちになれる。

サチの母親・邦子は、3000万円を山分けすることに反対しているようだ。「サチに幸せになってほしいから」というが、今のサチは若葉と翔子と山分けできる選択をする方が幸せそう。「サチが楽しそうだから、もう言わない。」三人で幸せになりたいというサチの気持ちを受け止めてくれる母親でよかったと改めて思う。

宝くじの当選手続きをして、1週間後の振り込みを待つ。仕事も生活も辛いけど、嫌なこともあるけど。待ち焦がれた1000万円が記帳された通帳を見て、涙を流す三人。お互いの幸せを祈りながら、解散した。

ずっと幸せになること、非日常を味わうことに戸惑っているサチが、憧れのカフェに顔を綻ばせながら入っていく。それだけでなんだか嬉しい。ドラマを見ながら、いつの間にかサチの幸せを祈っていることを実感した。

1000万円を手にした三人の元には、不幸せをもたらす人が近づいていた。
サチは父親がアルバイト先に訪れ、金の無心を。若葉の元には、祖母・富士子が悪魔と呼ぶ母が金を求めてやってくる。翔子の元には、怪しい美顔器を売りつける同級生が。金の匂いを嗅ぎつけて、どこからともなくやってきて、不幸せを置いていく。

一体どういう状態を幸せと呼ぶのだろうと考える回だった。お金があれば幸せになれるわけではない。1000万円は、面倒な親をどうにかしてくれるわけでなはいし、職場の嫌な上司を撃退してくれるわけでもない。お金の匂いをどこかから嗅ぎつけて、不幸がやってくることもある。

今のところ、あの三人が出会えたこと、一緒に過ごす時間を幸せと呼ぶのだと思う。心を許せる友達がいて、ほんの少し息が出来るようになって、相手の幸せを願い、自分が幸せだと相手が喜んでくれるから幸せであろうと努力する。この瞬間が幸せだから、それでいいじゃないかと、三人が思える日は近いことを願いたい。





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