「日曜の夜ぐらいは…」第二話:ままならない日常とお守りみたいな宝くじ
生きているとままならないことがたくさん起きる。理不尽に怒られたり、嫌な言葉をかけられたり。そんな時に心を普通に戻せる場所、時間、人がいたら、どれだけ心強いだろう。
サチ(清野菜名)と若葉(生見愛瑠)、翔子(岸井ゆきの)の3人もお互いにとって、そんな関係になれそうと思える相手だっただろう。一話は3人にとっての "出会ってしまった" 瞬間を描いた回だった。
「日曜の夜ぐらいは…」第二話では、運命的な出会いとなったバスツアー後の3人のままならない日常が描かれた。
サチはアルバイトの帰り道にスピードを出した車に轢かれそうになり、避ける形をとって転んでしまう。「喋りたくなってんじゃん私、だから友達とか出会うの嫌なんだよ。」大きな独り言を呟く。ままならない日常の愚痴を誰かに言いたい、聞いてほしい。サチは自分の中に生まれてしまった感情に蓋をしようとしている。
バスツアー後のラジオ番組では、リスナー代表のみね(岡山天音)からの投稿が紹介された。3人はそれぞれの場所でラジオを聞いている。投稿ではみねから見た3人の「出会ってしまった」瞬間について語られ、3人は嬉しいような切ないような表情で聞いていた。
3人のままならない日常は続く。
サチは忘れ物をしたことをきっかけに、母が車椅子生活を送るきっかけを思い出す。母は高校生のサチに忘れ物を届けようとして転び、車椅子生活を送ることになったようだ。母と離婚して別の家庭がある父からも、援助は望めない。自分のせいで、母が車椅子生活を送ることになったと自分を責め、トラウマになっている。大きなトラウマを思い出すきっかけが、日常に潜んでいるのは、とても苦しいだろう。
若葉はちくわぶ工場で上司に理不尽に怒られる。ままならないことが起きた日に思い出すのは、バスツアーで買った宝くじ。若葉にとってはあの楽しかった日を思い出せるお守りみたいなものになっているようだ。地元では、母親が男と金にだらしないことで有名なせいで、友達ができなかった若葉。地元では腫れ物扱いされ、自分の父親もわからない。容姿のせいで男性からは不躾な好意を寄せられる。「人生で初めて友達できたのかと思ったんだけど。違ったみたい。私が距離感わからないからだと思う。」苦しそうにそういう若葉からは、自分の人生への自信のなさが滲む。
翔子は偶然兄をタクシーに乗せた。エリートに見える兄は翔子にズバズバと冷たい言葉を刺していく。「俺に妹なんていない」「母は子供は息子二人ですと言っている」明るく快活な翔子だが、家族との大きな軋轢があって、ほぼ絶縁状態のようだ。兄が無理やりタクシーを降りた後、泣きながらコンビニで買った一番高いアイスを食べる翔子。辛く悲しい言葉を投げかけられた後に自分を立て直すのは、あのバスツアーで知った処世術。バスツアーでの出会いが、翔子の心の支えになっていることがわかる。
第二話で描かれた3人のままならない日常。でも確実にバスツアーのおかげで、3人の日常には変化が訪れていた。
あの3人にまた出会ってほしいみねは、サチと翔子に会いにいき、次回のバスツアーの案内をする。みねの働きかけと宝くじが3人をもう一度繋ぐ。サチの分が3000万円の当選をして、それを伝えるために、サチは無理やりバスツアーへ参加し、3人の再会が実現した。
第二話では、3人の日常とバスツアーでの出会いがどれだけ3人の日常を支えているかが時間をかけて描かれた。運命の出会いは意図しないところで訪れ、力強く自分の日常を支えてくれる。
印象的だったのは、サチが通りかかったカフェの店員のセリフ。
「1日の終わりにちょっと美味しい飲み物を飲んで、素敵な空間で一息ついたらなんかやっていけるかなって。」
なんかやっていけるかな。そんな感覚になれる人、場所、時間との出会いはどんなものでも運命的。自分にとってのお守りには意外なところに隠れているのかもしれない。