第13回 敬相 ”働きがい改革”のキーマン福富信也氏に聞いた。チームを強くするために必要なこと。
みなさんこんにちは。(株)敬相 広報の寺門です。これまで、敬相が全社をあげて実践している「チーム制」について、各営業所の所長さんにお話を伺ってきました。それぞれが工夫をしながらチーム力を強化している様子を知って、敬相に新しい風が吹いているなあと、ワクワクしっぱなしでした。
「敬相のチームビルディング論」ですが、締めくくりとなる今回は、ここ数年の敬相を語るうえで欠かす事のできない人物を尋ねました。その人物とは、組織コンサルタントの福富 信也氏(東京電機大学教員/株式会社ヒューマナジー代表)。
Jリーグを始めとするサッカーのクラブチームや中高大サッカー部のチームづくり、さらには企業や団体の組織強化のために、コンサル的な立ち位置で指導にあたられている方で、敬相が数年前からチームビルディングを推進するにあたり、櫛田代表がアドバイスを求めたキーパーソンです。
福富氏から見た敬相のチームとしての課題、そして可能性などをたっぷりと語っていただきました。
「トップダウンの何がいけない?」 カリスマ的リーダーの弱さと、チームの強さ
ーー 敬相 広報の寺門と申します。福富さんは数年前から敬相で、チームビルディングの指導を行っているんですよね。まず伺いたいのは、福富さんのお仕事内容は、経営コンサルタントのようなイメージでよいでしょうか?
経営というより、組織づくりに重点を置いたアドバイスといった方が近いかもしれません。ふだんは大学教員として働きながら、チームビルディングにおける指導にあたっています。
指導させていただいているのは、サッカーJリーグのクラブチームやラグビーのトップリーグチーム、さらには一般企業、教育機関などさまざまですね。おもにワークショップを通してトレーニングをします。
組織の体質改善を目指し、生活習慣病の治療をする医師のような視点で、中長期にわたり指導させていただくケースが多いですね。
ーー スポーツチームだけでなく企業まで!幅広いですね。敬相のチームビルディングのアドバイスに入ったキッカケは何だったのでしょうか?
お仕事のご相談をいただいたのは、2年半ほど前になります。敬相の櫛田代表と日本スポーツマスターズのサッカー大会でチームメイトとなり、選手として共に戦ったのが最初のキッカケでした。
当時はまだ櫛田さんのお仕事や立場を1ミリも知らなかったのですが(笑)、チームメイトを鼓舞し引っ張っていく彼の発言がいつも気になっていて。私は普段は、心理学をベースに仕事をしているのですが、櫛田さんはご自身の経験と感性で同じようなことをされていて、すごいなと思ったいたんです。
出場するマスターズのサッカー大会期間中もよくチームづくりに関して議論をしていたのですが、大会後に櫛田さんから正式にお仕事のご依頼をいただくことになりました。
ーー 初めて敬相の中の様子をご覧になったとき、正直どう思われましたか?
トップダウンの社風が、深く根付いていることがすぐにわかりました。ミスをしないこと、言われたノルマを実直にクリアすることが仕事のゴールになっていると感じました。社員一人ひとりが自発的にアイデアを発信するまでには、正直、長い時間が必要だと感じましたね。
ーー そんな敬相に対して福富さんはどうアプローチされていったんですか? そもそも「トップダウン」ってそんなに悪いことなんでしょうか?
課題に対して正解がシンプルで、どんな時も社員を先導できるリーダーがいるなら、むしろトップダウンの方がいいと思います。ですが、現代は価値観が変わりやすく、正解もひとつとは限りません。ここ数年で起こった変化を振り返っても、たった一人の経営者がそのすべてに100点の答えを出し、社員の生活も守っていくなんて、現実的ではありません。
すぐに限界が来ると想像できませんか?カリスマ的なリーダーがいたとしてもトップダウンの組織では「リーダーの限界=組織の限界」になってしまうんですよ。
敬相が20年、30年、いや50年、100年と企業活動を続けていくためには、今、「脱トップダウン」をしていく必要があると櫛田さんは、真剣に考えたのだと思いますよ。
ーー 櫛田さんがよくおっしゃる「ジャイアン組織には限界がある」という言葉の意味にあらためて気づかされますね。
変化には痛みが伴います。これまでのやり方を根こそぎ変えようというのですから簡単ではありません。発起人である櫛田さんご自身も、腹を括っているいると思いますよ。自分だったら「もっと早く動けるのに」「もっと数字を出せるのに」と歯痒さを感じる場面もあるでしょう。ですが、社員の主体性を生み出すためには責任者がなんでもかんでも手を出してはいけません。
そんな櫛田代表の想い、そしてやろうとしていることを社員(=メンバー)のみなさんにまずは理解してもらうために、櫛田さんと私とで最初に始めたことは、福岡、大阪、愛知、埼玉、東京、仙台と、全国にある敬相の営業所・支店をひとつひとつ周ることでした。
チームで働くことはそもそも難しい。だからこそ、化学反応が起きる
ーー 各営業所でどんなことを話されたのですか?
「チーム」についての認識を正しく持ってもらうことから始めました。チームワークとは、業務の忙しさや業績に簡単に左右されてしまう“お天気のようなもの”ではなく、意図的にコントロールすることができるんです。しかし、そもそも、その前提を社員のみなさんは知らないし、さらに、コントロールするためには技術が必要だということもわかっていません。
ーー チームワークはコントロールできる……。考えたこともなかったです。
一人ひとりが高い技術を持っていても、チームになると途端にうまくまわらなくなってしまうのは、他人同士が集まった環境下で100%の力を発揮すること自体が、そもそも難度が高いことなんですよ。だから、「1+1」=「2」にすることでさえも苦労してしまう。
ですから「組織の中で働いていること=レベルの高いこと」。だから失敗して当たり前。その前提をみなさんに説いていきました。
ーーたしかに、周囲に遠慮してしまったり、縮こまってしまったり、逆におせっかいをやきすぎてしまったりと、他者と働くって難しいです……。
新人の方やキャリアの浅い方の悩みはもちろん、仕事を任せる立場にある課長さんや所長さん達にも悩みや課題はあるんですよね。
若手に仕事を任せて経験を積ませたいけれど、自分でやってしまった方がミスなくスピーディに終わるという葛藤がよくある例です。でも、任せるためには、相手の得意・不得意やその人の性格も加味しなければいけません。さらに相手を把握しているだけではなく、相手との信頼関係も無ければ上手く機能しないんですよ。
だから立場や役職、年齢など関係なく、まずは敬相という「場」で自分の実力を発揮できる信頼関係を築いてもらうことが、私の中での課題でした。
ーー チーム指導をはじめてから、大きな変化はありましたか?
徐々に全国の営業所で良い変化は起こっていますよ。その証拠に、社員発の新しい企画がどんどん出てきています。寺門さんも知ってますよね?
ーーはいはい!オリジナルの名刺やクリアファイルなんかもそうですよね。
そうです。大事なのは、「言ってみようかな」「提案してみたい」と思い、行動した社員がいたこと。さらに重要なのは、そのアイデアを上司が潰さなかったことです。
名刺のデザインのリニューアルの話を例にすると、社員さんが提案したときに「わざわざ費用かけてまでやること?」「業務に集中しようよ」と上司が頭ごなしに否定せずに、「いいね!やろう!」とポジティブに対応してくれたのはとても素敵なことです。これは敬相にとって大きな変化ですよ。
「名刺のデザインなんてちょっとしたことでしょ?」と外部の方は思うかもしれません。でも、社員さんが次の日からより仕事にやりがいを感じ、意欲的に取り組むようになってくれたのだとしたら、敬相にとってこれほど大きな財産はないわけです。
ーー そういえば、私も取材を通して所長のみなさんが「社員の心の安全・安心を担保していきたい」と言っていたのが印象に残っています。次のステップとして、新たな研修や講座の予定は決まっているのでしょうか?
コロナ禍ということもあり、当初の計画通りには進んでいないのですが、オンラインを活用した「敬相アカデミー」という講座を2020年末から始めています。
今はチーム研修のおさらいを中心とした基礎的なカリキュラムを実施していますが、今後はリーダーシップ研修なども取り入れたいと思っています。さらにゆくゆくは、ライフプラン設計に関わるテーマも扱っていきたいと考えています。
ーー ライフプラン?あまり仕事とは関係のないテーマに思いますが?
「敬相アカデミー」を仕事の成長のためだけではなく、「何のために働くの?」といった根源的な問いに向き合う時間にもしていきたいと考えているんです。
ーー 会社の研修で生き方まで考えることになるとは…想像以上です。
これは私の考えなのですが、企業で働く多くの人が「お金」「評価」という指標に重きを置きすぎて働いているように感じるんです。もちろんそれらはは大切なのですが、働く一番の指標は「自分の人生観に合った働き方ができているのか?」という自分視点での軸であってほしいなと。
アスリートの指導で「スタメンをとる。試合に勝つ。全力を尽くす。このなかで、自分の努力次第で実現できるものはどれですか?」という質問をすることがあるのですが、「すべて」と答える選手が多いんですよ。
ですが、実際にスタメンを決めるのは監督だし、相手次第では試合に負けることもあるでしょう。世の中、努力では変えられないことばかりなんですよね。
仕事も同じです。あるプロジェクトに多くの時間や労力を費やして頑張ったのに、結果的に思うようにいかなかった。その結果、評価も報酬も得ることができなかった。お金や評価が目的で頑張っている人は「会社に言われてやったのに、どうして評価されないんだ」と、誰かのせいにしたり、心が折れてしまったりします。
でももし仮に「報酬のために」ではなく、「誰かに喜んでもらうため」という自分のミッションの達成を目的にしていた場合はどうでしょう。
きっと誰かの指示通りに動くのではなく、自発的に「こんなことをやりたい」という意欲が湧いてくると思いませんか。結果的に失敗したとしても、得た経験を次のチャレンジに生かすことができますよね。
自分の理想の生き方が見えてくれば、働く意義も変わっていく
ーー 軸を持ち、自分の理想の働き方を知ることは、自分だけでなく、敬相という企業の成長にも大きく影響することなのかもしれませんね。
そういうことです。「敬相アカデミー」をきっかけに、他人の評価に左右されるのではなく、自分の中にブレない軸を見つけて欲しいですね。
今はまだピンとこなくてもカリキュラムの中に、気になる講座を見つけたら、きっとそれが自分を知るための糸口になると思うので。少しずつ仕事に対する考え方も変化していくのではないでしょうか。
あといつか「敬相アカデミー」で、みなさんに聞いてみたい質問があるんです。それは「手元に10億円があっても働きますか?」という問い(笑)。
「働かない」という人、「仕事は続ける」という人。どちらが多いのかなって気になりますよね(笑)。でもこの質問の本質は、「働く」か「働かない」かの二択ではなく「それでも“敬相”で働きたい」といってくれる人を今後、一人でも二人でも増やしていけるかどうかという、櫛田さんと私の裏ミッションでもあるんですよ(笑)。
改革前の敬相は、他人の評価という自分ではコントロールできないものに踊らされる、ビクビクする空気感がありました。でもこれからは、共に創る“共創”をしたい。1+1が3にも5にも10に100にも、どんどん広がっていく。
「ありがとうに出会うために、自分ならどうするだろう?」
100人いたら100人分のアイデアが集まるはず。異なる個性がありがとうを共創していく会社を目指して。私がいま携わっているのは、敬相の「働き方改革ではなく、働き甲斐改革」なんですよね。
きっと敬相は、しなやかに変化をして、今以上に強い企業になるはず。まだ乗り越えるべき課題はたくさんありますが、敬相という「場」にやりがいを感じてくれる社員が一人ずつ増えていけば、そう遠くはない未来に「10億あっても敬相で働きたいです!」と言ってくれる社員がどんどん出てくると思うんですよね。
【広報 後記】
各営業所を取材するたびに「こんなにチームビルディングが根付いているなんて!」と驚いていた私ですが、それもすべて、数年前からの地道な指導の賜物だったのですね。
信頼関係が築かれたコミュニティで、自分の軸をブラさずに働けたら、日々の仕事への向き合い方も変わっていきそうですし、何より仕事が今より何倍も楽しくなりそうです。
今回の福富さんのインタビューを含め全9回に渡り、敬相のチームビルディングについてご紹介してきましたが、今回でひとまず終了です!なんだか少しさみしい感じもしますが、来月も敬相のnoteは続きますよ!
ぜひ、「こんな特集をやってほしい!」「他の社員のインタビューも読みたい!」などなど、リクエストも募集していますので、お気軽にお寄せくださいませ。それではまた次回、お会いしましょう!
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