見出し画像

【書籍紹介】UXデザインの法則

前置き

現在不定期で連載中のWEBディレクターズガイドもいいところまで来ましたが、本日はちょっと最近購入した書籍を紹介したいと思います。

現在、ありがたいことに4社目の会社で、リードUXデザイナーという肩書きを頂き仕事をさせて頂いています。基本的にはデジタルプロダクトを基軸にしたUX業務となるのでUser Interfaceが関わります。(ISOの歴史などを改めてきちんと学ぶとなぜUIUXと呼ばれるのか、その流れが分かってきますが…これは余談です。)

クライアントから求められることに「見やすく使いやすく分かりやすい」や「直感的な」「一目でわかる」などの言葉が混じってくるのです。

常々思っていますが、「直感ってなんだ?」「一目でわかるってどういうこと?」と。つまり感覚と認知の話をしているわけです。お客さんも無意識の内にデザインと人間の感性には何かしらの相関性があることにうすうす感づいているのですが、人間の感覚を科学的に解釈する、、、永遠のテーマですね。

「どこが直感的なのか、そもそも直感ってなんなのか」
「認知できるデザインってなんなのか。」

そういったところから、デザインと心理の関連性にとても興味がありまして、ここ1~2年は行動経済学や認知心理学などの本も読んだりして、定性的な人間の感覚だったり感情がデザインにどのように作用しているのか、この辺りを探求し始めました。

元々HCDは人間工学、UCDは認知工学がルーツと言われており、重なるようで重ならない部分っていうのが出てきたりするそのわずかな誤差がこのあたりのルーツの違いなのではないかと思ったりするのですが…そんな中1冊の本に出会いました。

デザイン心理学は流行っているの?

今回はデザインと心理学の関係が分かりやすく示されている「UXデザインの法則~最高のプロダクトとサービスを支える心理学」という本を紹介します。

ですが最近デザインと心理学がブームなんでしょうか。色々とこの数か月にデザイン心理学系の書籍がリリースされています。

例えばこの本「脳のしくみとユーザー体験(買っちゃいました)」だったり

こちらは第2版ですが、「インタフェースデザインの心理学 第2版 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針」だったり。

色々と出ています。この辺りは、日本におけるデジタルトランスフォーメーションであったり、UserExperienceを基軸にしたプロダクトやサービスデザインなどの潮流に関連していますが、いづれにせよ「曖昧な領域」を如何に「曖昧じゃなくするか」と言う日本人の気質も一役買っているのではないか?という気もいたします。ですが読んでいけばいくほどやっぱり曖昧なものなんだなぁと言う感想も持たざるを得なかったり(笑、するわけです。

肝心のサマリー

こちらですが、著者はJon Yablonski(ジョンヤブロンスキ)氏が書いた著書が翻訳された日本語の書籍になります。有名なLaws of UXを立ち上げた方が書かれた書籍になります。

サイト上では20、法則が記載されていますがこの本では10の法則に絞られて掲載されています。元々著者がこういった法則に着目したきっかけは、とあるプロジェクトで、

デザイン上のいくつもの意思決定を、データの裏付けもなしにプロジェクトの関係者に納得してもらう必要があったのだ。いつも通り定量ないし、定性のデータがあればスムーズに進められる。だが、このときは使えるデータがなかったので、納得してもらうためにいままでの方法は採れなかった。既存のデザインの変更すべき根拠が全くない状態で、どのように初期のデザイン案を検証すればよいのだろう。ご想像の通り、デザインについての議論は、たちまち主観と思い込みに支配され、さらに検証困難になっていった。

と、こういう状況下からと言っています。つまり、ある種苦肉の策から始まったといえるわけです。ですが、人間の本能っていつ如何なる時も作用するわけで、そういった感性もまた外せないものだと思います。

現実的には、諸々の論拠を示しながら論拠の背中を押す時にこういった法則を使う、、、という風に感じています。では簡単に本の中で紹介されている法則を記載します。興味が沸いたら是非とも書籍で読んでみて下さい。

①ヤコブの法則

ユーザは他のサイトで多くの時間を費やしているので、あなたのサイトにもそれらと同じ挙動をするように期待している。

ユーザのある種の慣れに乗ろうと言う法則ですね。いくつものサービスを使っているユーザに対し、奇をてらった差別化をするのはやめようというものかと思います。ユーザのバイアスを逆に利用しましょうというようなニュアンスかと思います。

②フィッツの法則

ターゲットに至るまでの時間は、ターゲットの大きさと近さで決まる。

当たり前と言えば当たり前ですよね。小さいものはクリックしづらい、じゃあ、どの距離で見たら小さいと感じるの?ということにつながります。万人が感じる小さいには個人差があるので、例えばAppleのHuman Interface Guidelineなどで定義されているように、一つの目安が生まれるわけです。これ当たり前のようですが、大事な話です。

③ヒックの法則

意思決定にかかる時間は、とりうる選択肢の数と複雑さで決まる。

何かを決めるって疲れますよね。色んな情報や選択肢が生きてるだけでも氾濫していますし。。これは、人間が決心できることには限界があるよ、というメッセージのような気がしています。デザインにするとフォームなんかも最近ですと、一問一答形式にしたりするものが増えていますよね。それってこの法則を利用しているんじゃないかと思います。本の中にはテレビのリモコンの話なんかも紹介されています。

④ミラーの法則

普通の人が短期記憶できるのは、7(±2)個まで。

これ、昔この法則と知らずよく提案で使っていました。何かというとWEBサイトのグロナビの数なんですね。「人間が一目で識別できる数の上限は8つと言われているんですよ。なのでその法則に則ってグロナビは8つ以下におさえるべきです!」とオラオラ顔しながら言ってた記憶あります(苦笑。。マジカルナンバー7の話も出ていますが、個数というよりも情報のチャンク(かたまり)が記憶に影響を及ぼすよと、いうそんな話です。なので上記のグロナビについては8つじゃなくても、人によっては6つとか、ホント所説様々ですが、本書では電話番号などを例にチャンクの話が展開されています。

0012345678ではなく、00-1234-5678の方が記憶しやすい、これは人は情報をかたまりで認識、記憶するからだ、という話です。続きは本書で!(経験もあったので長くなりました…)

⑤ポステルの法則

出力は厳密に、入力は寛容に。

これは、ユーザがどんな環境であろうと等しい機能を使えるように、という風に解釈しています。ある種アクセシビリティ的な考え方だと思っています。頑健性、堅牢性ともいわれますね。

⑥ピークエンドの法則

経験についての評価は、全体の総和や平均ではなく、ピーク時と終了時にどう感じたかで決まる。

これまでUIやユーザビリティ関係の法則が多いなと思っていた中、突如UXです。人間の印象はピークの時とラストに決まるよ、と言う話です。じゃあ第一印象はどうなる?と読みながら突っ込んでしまいましたが…「クライマックス」「立つ鳥後を濁さず」という言葉もあるように、知らず知らずのうちにこの法則に乗っているのかもしれません。本書では404ページのアレンジについても取り上げています。逆に言うとネガティブな印象をどう抑えるか?っていう事にもこのピークエンドの法則は一役買います。

⑦美的ユーザビリティ効果

見た目が美しいデザインはより使いやすいと感じられる。

これは~あれっすかね。イケメンや美女は仕事ができる!みたいな一種のバイアスに近いんじゃない?と思っちゃいました。そんなことはないよ…と思いますが、厄介なのは国内だけじゃない場合ですよね、美しさの基準はグローバルな統一基準はまだないと思いますので、多言語やる場合やはりきちんとユーザに向き合う必要あると思いますが、本書ではその美しさが故に、ユーザテストの際に欠点を見失ってしまうのでは?という点に触れています。

⑧フォン・レストルフ効果

似たものが並んでいると、その中で違うものが記憶に残りやすい。

これも、文字だけで見ると「当たり前だろ」となってしまいますが、実際に画面設計、デザインを行うと迷うシーンが多々出てきます。人間は自分に関係ないと思う要素については、自らの視界から外してしまう性質があるので、やりすぎると危険、という事なんですね。よってアクセシビリティを考慮してコントラスト比を10:1とかにしたときには、、、諸々の要素との兼ね合いが取れなくなってしまうのです。続きは本書で。

⑨テスラーの法則

どんなシステムにも、それ以上減らすことのできない複雑さがある。複雑性保存の法則ともいう。

これは基幹&業務システム系の案件などでよく出会いますね。どうしたらあんなに分かりづらいUIが出来るのだろうか?を思ったことは一度や二度ではないはずです。ですが、その複雑な機能を維持することが必須であるケースもまた多いです。(特に基幹&業務システムの場合、これ要らないから削っちゃえ~ってのはまずダメです。)かと言ってシンプルにしすぎてしまうと「あれどこ行った~!」「わかりづらいよね」となってしまいます。よって、機能を維持するためには、UIをシンプルにするのであれば、裏の処理が逆に複雑になってしまうのです。どこかで複雑性は担保されているものです。

⑩ドハティのしきい値

応答が0.4秒以内のとき、コンピュータとユーザの双方がもっとも生産的になる。

フィードバックの話です。リクエストに対するレスポンスが遅いとユーザが離脱する、イライラする、など、UXにも影響すると言われる要素です。近年ですとGoogleにおいてもUX向上の取り組みが加速していますよね。(Core Web Vitalなど)あれもまさにこの法則にハマるものではないかと思います。FacebookやTwitterなどのスケルトン表示もまさにこの法則にのっとりユーザに遅く感じさせない、そんな取り組みを行っているかと思います。本書では、逆に早すぎるとどう思う?というところにも言及しているので興味が沸いた方は本書へ。

最後に

ここまで10個本書で紹介されている法則を記載してきましたが、どうですか?僕は正直こんなに覚えられませんし、仕事の場面で「これがフォンレストルフ効果です!!」とパッと言葉が出てくる自信はありません。。。大切なのは法則でガンガンのしていく!!!ってことではなくて、こういった法則を知ることでユーザの利用状況に応じて都合のよいものを都合の良いときに持ち出せる、そのための一つの備蓄、くらいで捉えておくのがよいのではないかと思います。

それと気づかず実践していることも多いはずです。

なので、辞書的に机に置いておき、いざというときに取り出せる、、、そんな存在として見ておけばよいのかなと思いました。

ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?