資本主義はどこに向かうのか - 資本主義と人間の未来(堀内勉・小泉英明 編集)

< 本書の要約> 資本主義や市場経済への不信感が高まっている。学界・業界を超えてさまざまな叡智が集結し、資本主義の行方と限界を熱く論じる。

< 本書の抜粋> 

:IoTなど情報化が進むと限界費用ゼロ社会が実現し資本主義が終わる。しかし共産主義に向かうのでなく共有型経済へ向かう(ジェレミー・リフキン)

:お金に深くかかわる事によって、人間は自由を得ると同時に人間の価値が単なる貨幣的な価値に還元されてしまい、人と人の人間的な繋がりを喪失していくことをみんな直感的に理解しているのではないか?

:事業家の事業意欲と社会的な富の循環は決して両立し得ないことでなく、むしろ社会的な不平等や不正義を正したいという思いから起業する起業家も多いように思います。(中略)社会をより良くしていこうと考える起業家、企業人、富裕層を増やして自発的な富の循環のモメンタムを強めることが教育の重要な目標のひとつ。

:日本の破壊と繁栄の30年周期。1990~2020年までは破壊の時代、よってこれから繁栄の時代に入る。

:エレファントカーブ。グローバルな各社縮小と先進国の中間層没落(1988年~2008年まで)

:アダム・スミスは欲望が原点にある事を知っていた。ですから”国富論”と同時にそれ以前に書かれた”道徳感情論”が必要。欲望と共感、利己と利他の車輪こそ本来の経済には必須。

:仏教の”四無量心”を取り入れた。”慈”、”悲”、”喜”、”捨”の4つ。人間にしかない量り得ない人間特有の基本的な心。

:経済にというのは、基本的には富に価値があるという仮定あるいは大前提があります。物質的に満たされることが幸せだというのはアダム・スミスのころはそうだったかもしれない。一般に現在の経済学は拝金主義とは言わないまでも基本的にはお金重視です。衣食住に関して言えば、第一番目はエネルギーの獲得とエントロピーの廃棄です。生命体の自分の存在の維持に不可欠。第二番目はセキュリティー確保。安全・健康に生きる事が重要。第三番目は社会性。その上に、文化・教養・独自の価値観・自己実現・社会関係と言う階層が生じてくる。

:現在の混乱する世界にあって、応用脳科学は哲学あっての論理学と架橋・融合して新たな羅針盤を創成する可能性があると思います。資本主義社会も社会主義社会も、人間が考え出しあシステムです。生物進化を再考し人間の為の経済学とは何かを考えることが焦眉の急と考えています。脳から経済学をみると次の点に繋がる:①経済活動で人間を駆動しているのは生物進化の中で5憶年以上にわたり生命確立を上げる羅針盤システムである”快” ”不快”である、②アダム・スミスが経済活動の原点として指摘した人間の共感性に基づく道徳・倫理と欲望に基づく自由競争は、全ての経済システムの基本である、③極端な経済格差。世界の人口の1%の超富裕層が世界の富の82%を所有。世界の人口の50%の貧困層は世界の富の1%しか保有していない。論理的な限界、④資本主義は改善し続けている。公益性を重視して成熟した資本主義への変貌すべき、⑤自然界はエネルギー(物質)とエントロピー(情報)から動いている。大量の情報処理が可能となり新たな経済を推進。

:ダーウィンは種の起源の中で自然淘汰(Natural Selection)を議論していて進化(Evolution)と言う言葉を使っていない。

:地中海資本主義はイタリアで生まれた資本主義で陸を支配しようとした。スペインとポルトガルも同じ考え。一方で地図で見れば小さな国イギリスとオランダの戦略は大陸を海で囲む考え。

:東インド会社から近代資本主義が始まり永続永久の生命を持った会社が主役の資本主義とフランス革命で勝ち取った民主主義が、近代システムの経済と政治の両方を支えている。

:生命の安全・信義・所有権、この3つが同時にみたされて初めて秩序が保たれる。

:ポスト近代 - ”より速く、より遠くへ、より合理的に”という3つを実行する近代社会。これからは、”よりゆっくり、より近く、より寛容に”に移行すべき。

:3つの質問。①経済は何故成長するのか?答えは際限のない欲望。社会の分野で成長するのは経済だけ。政治・法・教育・文化は成長しない。量的な拡大で質的な変化でない、②人類は如何にして10万年生存してきたか?ホモ・サピエンスが20万年前くらいに現れた。10万年前は1万人程度。ひ弱な動物である人間が如何にして78億人まで増えたか、③経済は実際に如何に成長したか?聖武天皇が東大寺大仏殿を建造した時代の日本と比べるとGDP比較で現在と1,000倍違う。

:人口成長は農耕放逐が始まった西暦前5,000年前までは変化無し。18世紀から人口成長は明らかに増加傾向。近代と前近代の境目は産業革命の18世紀。前近代では余剰を生産的に用いないので資本が発生しなかった。つまり成長しないことにより持続可能な生存を可能にしてきた。合理的な欲望制御メカニズム- 生産力や技術水準の制約のみならず社会的規範や美的価値による友の水準の制約があった。近代は際限の無い欲望を解放させた。産業革命は①道具から機械、②エネルギー革命(化石燃料)、③原料革命(これが一番重要。土木・建築・造船の主要原料が木から鉄になり、製鉄原料が木炭から石炭に変わり、化学肥料・合成農薬による農業革命が起きた) 産業化・近代化は、ここ300~400年程度。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?