帰国子女の中学受験(2022年)その②塾選び
娘は小学3年から4年までの2年間をロンドンで過ごした。ロンドンでは、月曜から金曜までは現地校に通いつつ、土曜日に日本の塾(JOBA)で勉強していた。ここから中学受験が始まったともいえるが、当時、そうした意識はほとんどない。JOBAロンドン校は、現地校の校舎を間借りして授業を行っている。郊外の緑豊かな環境もあってか、のんびりした雰囲気の中で、日本の先生・生徒とともに国語と算数を学んでいた。
JOBAロンドン校では、四谷大塚のテキスト(予習シリーズ)を使用していた。月に1回、「センター試験」が行われ、ロンドン校内での順位も発表されていたが、特に気にするものでもなかった。娘にとっては週に一度、先生や友達と日本語でワイワイできる、癒しの時間だったのだと思う。
そして、2020年4月に日本に帰国。当時、コロナ感染拡大による緊急事態宣言が発令されたところであり、帰国と同時に2週間の隔離生活を余儀なくされた。ホテルでの隔離生活の中で、公立小学校への転入手続きを行いつつ、①国語・算数はJOBA、②英語は帰国子女アカデミーへの入塾手続きを行った。
まず英語については、帰国生として更に伸ばしたいと考えていたため、実績・評判に優れる帰国子女アカデミーへの入塾を即決した。当校の創設者であるチャーリーの著作には、帰国生の英語教育に対する考え方等が記されており、大変参考になる。
帰国子女アカデミーでは、ネイティブの先生のもとで、四技能(読む、書く、話す、聞く)をバランスよく鍛えることができる。受験クラスの通常授業のみならず、受験直前の対策講座等、洗練されたカリキュラムが用意されている。
また、KA ConnectというWeb上の学習管理サイトが秀逸であった。宿題のEsaayの添削がWeb上で行われる。事務局から受験に関わる情報提供や各種連絡も全てこのWeb上で行われる。さらに自己学習用のコンテンツも充実しており、わざわざ他の教材に手を出す必要はほとんどない。
今年は、試験前日の夕方に、ネイティブの先生による応援動画がKA Connectにアップされ、試験に関するアドバイスと励ましを受けることができた。我が家は初戦が不合格だったこともあり、以後の試験では、この応援メッセージに相当勇気づけられた。
娘は帰国子女アカデミーの雰囲気を気に入っており、最後まで楽しそうに通塾していた。我が家にとって、帰国子女アカデミーへの入塾は大正解だったと言える。
国語・算数については、ロンドンでの学習(四谷大塚のテキストがベース)を継続させたかったため、JOBAの国内校に入塾したが、後に早稲田アカデミーに転塾した。理由はロケーション。JOBAの国内校は2つあったが、いずれも自宅から遠く、通塾の負担が大きかった。
新たな塾を検討するにあたり、まずSAPIXはついていける気がせず除外。赴任前に見学に行った日能研や栄光ゼミナールも考えたが、これまでと異なるテキストやカリキュラムに対応するのも気が進まなかった。
その中で早稲田アカデミーは、①四谷大塚のテキストを使用、②対面とオンラインのDUAL授業を実施、③2教科(国・算)コースあり、④通塾が楽と条件が良かったため、6月頃に転塾を決めた。特に、DUAL授業(対面・オンラインのいずれでも授業を受けることができる)は有難いものであり、コロナ感染が拡大した局面でも、全く支障がなかった。
また、早稲田アカデミーはいわゆる伝統的な大手塾である。入塾したての頃、娘は多くの一般受験生に囲まれた授業やテストの雰囲気に衝撃を受けていた。娘の担任となった算数の先生は、定年で今年が最後という大ベテランの方で、いつも授業の前に「訓示」のようなお話をされていた。オンラインで受講した時はその内容が親にも聞こえてきたが、「受験できることの意味」や「合格・不合格を分けるもの」等、子供たちに昏々と説いていたのが印象深い。これまで何人もの受験生と接してきた先生方の経験に基づくアドバイスを受けることができるのは大変貴重なことだと思う。
娘にとって、早稲田アカデミーの学習レベルは非常に高く、ついていくだけで精一杯であった。時折、30台の偏差値をとってきて愕然としたこともある。それでも一般生とともに切磋琢磨できた環境は、娘の精神的成長に大きく寄与したと思っている。
我が家の塾選びは上述のとおりだが、まずは受験科目を決める必要がある。帰国受験では英語・国語・算数の3科目で勝負できれば、志望校を幅広く選ぶことができる。英語だけで受験できる学校はあるものの、中学に入った後のことを考えると、理・社は無理でも、国語と算数は受験科目として時間をかける価値があると考えていた。
英語・国語・算数で勝負するとした場合、帰国生向けに特化したJOBAとEna、または英語講座を有する大手塾(早稲アカやSAPIX)のように1か所で3科目を勉強できる塾は存在する。ただ、我が家は帰国子女アカデミーと早稲田アカデミーの2つに通うこととした。費用面では確実に割高であり、娘にとっても膨大な宿題やテストに追われ、相当ハードな学習環境となった。最後まで両塾の授業に参加し、勉強を続けることができただけでも成果の1つだと言える。