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吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。After
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後日談です。
これは魔法使い化の未来に抗った、アラサー童貞だった者の記録である。
筆者スペック
身長:160代後半
体型:やや細め
学歴:私立文系
職業:税金関係
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
切実な話:シングルベッドは狭い
登場人物紹介
鳩
大学時代の友人で、研究室の仲間。平和なヤツ。
恋活パーティーで作った彼女と同棲をしている。
結婚の話を微塵もしていないらしく、友人間で袋叩きに遭った。
絵師
大学時代の友人で、研究室の仲間。
あだ名とかじゃなくて本当に絵を描いている。
結婚相談所で成婚退会し、奥さんと新居でイチャついている。
俺達と飲みに行くと奥さんが拗ねるらしい。
ハンドラー
古い友人で、この連載を見ている。マチアプで戦っている。
AIにアプリのメッセージを推敲させているらしい。
コイツが捻挫から戻ってきたと思ったら俺の肩腱板が断裂した。
ロストバージンモラトリアム
終わる終わる詐欺じゃねえかこれって指摘はやめてもらっていいっすか?
童貞を卒業した男が今さらこの連載で続きを出すのは、往年の名作映画につまんねえ続編で糞を塗りたくるが如き浅ましい行為である自覚はある。スターウォーズの続三部作のようにな。(かかってこいや続信者)
だがしかし、こと題材が題材なので書いておこうと思う。「童貞を卒業した」「マチアプで彼女ができた」という主旨のnoteはそこそこ見てきたが、その後どうなったのかについてはあまり言及がない…気がする。
…
……
………
童貞を卒業してから、実時間で二ヶ月以上が経過した。
今のところ、そこまで問題無く生きている。
彼女との関係も良好だ。生理の時結構落ち込むタチなので現行の対応が正解なのか悩ましいが、ほどよい距離感で付き合えているように思う。
セ○○スはそれなりの頻度で行っている。まあド下手なんだけど。毎回ゴム無事につけられるかヒヤヒヤしてるし。
お客さんには「なんか顔色良くなったね」と言われた。いや前までがどんだけ悪かったんだよ!?
大学の友人には「前は女の愚痴か仕事の愚痴ばっかツイートしてたのに、突然仕事の愚痴しかツイートしなくなったな。お前彼女できただろ?」と何もしてないのに感づかれた。
社外イベントでは、酔っぱらった社長が他所の女の子を指して「あの子可愛いぞ!声かけてこいよ!そういう積極性が大事なんだぞ!」とか言ってきた。鬱陶しすぎた(そして俺も泥酔していた)ので、社長のみならず社長夫人と上司の前で彼女の存在を公開してしまった。普通に後悔している。
女の子と会う時は己の最大値で臨めるように気合を入れまくっていた。そうしなければならないのだと勝手に思っていたが、今では普通にラフな格好で彼女と会っている。肩の荷が降りたというか、ようやく見栄を張らずに済むようになったというか。
何はともあれ、俺は長年自身を苦しめてきた(というより勝手に魔法使い化の未来に抗って勝手に苦しんでいただけだが)戦いから解放され、ひとまずの安寧に浸っているというわけだ。
だからといって別に順風満帆というわけではない。
彼女がいるからといって、俺の年収が上がるわけではない。
童貞を卒業したからといって、俺の尿酸値が下がるわけではない。
この先の人生の何もかもが、保証されるわけではない。
「問題が無い」というよりは、「問題が見えていない」だけに過ぎない。
もし俺と彼女の間に致命的な”何か”があって、今後の非童貞ライフに暗雲が立ち込めることがあるのだとしても、その問題が顕在化するのは先のことなのだろう。そして、それらはお互いの努力で消化できることだろうし、たとえ消化できずに二人の関係が破綻してしまっても、それを糧に新たに歩を進められると…俺は信じている。
卑小で矮小で貧小な
鳩、絵師とのキモオタ版桃園の誓いから一年ほど。
愛という名の病を得て、白帝城ならぬ関東のラブホの一室で死んだ童貞劉備は、ある日絵師と二人で飲んでいたとき、こんな会話があった。
絵師「ケツアナゴ(筆者)さあ…今まで全てに憎悪を燃やしてたけど、なんというか…人間になれてよかったね。お互い」
俺「いやあホント、”意図して恋愛しよう”って絶対健全な営みじゃなかったって。本気で苦痛だった。何も楽しくなかった。地獄だった。二度と戻りたくない」
上で散々綺麗事をのたまっていたが、こちらの方が嘘偽りのない、混じりけの無い純度100%の本音である。恋愛市場は地獄以外の何物でもない。
ただ、逆説的に今のこの状況が天国かと問われれば、それにも疑問符がつく。
確かに、俺と彼女の関係に、瑕疵と呼ぶべきようなものはない。致命的な問題は顕在化していない。
ただもっと別のベクトルで、非常にくだらない、卑小で矮小で貧小な問題を俺は抱えているのだ。
…
……
………
ハンドラー「童貞を捨ててからのお前の記事がおもんない」
俺「ゑ?」
ハンドラー「今までのケツアナゴは現状や女への”怒り”を燃料にして記事書いてただろ?今のお前には燃やす”怒り”が無いからとっかかりがなくておもんないんだよね」
まあ、一理ある。というか百理くらいある。
文章欲やネタはあるが、それだけだ。車はあるのにガソリンが入っていないようなもので、そんな状態では走るはずの筆(もとい、キーボード)も満足に走らないというものだ。”あの頃”あった強烈な憤怒や渇望が、今の俺には無い。
…俺自身の戦いが終わってからも、ハンドラーの進捗報告は都度聞いている。
たまに彼から送られてくる、アプリに数多く生息している(主観ではなく事実である)現実が見えていないゴミ・ウーメンのキャプチャを見てボロカスに叩くことはあるが、その原動力は怒りというより単なる嘲りである。
彼から、俺の時間を散々浪費させたモノリッドが、休会モードに入ったと知らされた時も、クソざまあみろと吐き捨てて盛大に罵ったが、完全に踏み躙り切れないというか…なんだか少しだけ可哀想な気持ちになってしまった。
俺が見上げて悪意を向けるべき”敵”だったものが、今や見下ろす(見下す、ではない)だけの”何か”になってしまった。子供の頃、水たまりで溺れる蟻を眺めていた時のように、愉快の中に切なさが同居している。
──ひょっとして記事どころか俺がつまらなくなっているのでは?
売れたバンドが攻めた曲を書かなくなってアーティストとして”死ぬ”ようなもので、童貞という一つのアイデンティティを捨てた俺も邪念系エッセイストとして死んでしまうのか?
…くだらない危惧だ。
馬鹿らしい悩みだ。実にしょうもない。
そう一蹴しようと思えば、簡単にできることだ。
ただ、恋愛や女性に関することでなくとも、何かに対する怒りや負の感情というか、ある種の”尖り”は、今後も持ち続けていたい。
多分、矛を向ける先が変わっただけなのだと思いたい。切実に。
あの…いや、俺は一体何と戦ってるの?
それでも道は続いてゆく
たかが二ヶ月で何に至ってんだよというツッコミは控えてちょーだい。
…散々ダラダラと書き連ねたが、つまるところ俺は恋愛市場という地獄から抜け出し、童貞を失って、ようやくスタートラインから足を離したに過ぎない。
いや、ともすれば、別の地獄に足を踏み入れただけなのかもしれない。
俺と彼女の間で解決すべき課題が大して明らかになっていない以上、後日談を記すには早すぎたような気もするが、正直言って記事を書く暇が滅多に無いので書ける時に書いておこうと思ったのだ。ゆるして。
まあ、前に仕事でキャバクラに連行された話とか、ハンドラーが提供してくるゴミ・ウーメンをこき下ろす話とか、何かしら形にはなると思うので、また気が向いた時に書こうと思う。
そんなわけで、まだ始まったばかりの俺の非童貞ライフ。
それがどう転んだとしても、俺の人生が面白くなることを祈るばかりだ。
これは魔法使い化の未来に抗った、アラサー童貞だった者の記録である。