日本で俺しかやってない神ゲー『wrestling empire』
君は、通行人を電車で轢き殺せるプロレスゲーをやったことがあるか。
多分ないと思います。
どうも、平和への道と申します。
皆さん、格ゲーは嗜まれるでしょうか?自分は滅多にやらないのですが、最近はスト6のクワドラプルミリオンやら何やらで格ゲー界隈全体が盛り上がりを見せ、かつての斜陽な空気感を払拭しつつあるということは聞いています。
しかし格ゲー人口が増えているとはいえ、EAの出している実際の総合格闘技を扱った『UFC』シリーズをのぞき、試合中に寝技をやれる格ゲーを経験したことのある人間がどれくらいいるでしょうか。試合中に深刻な怪我を負い、何日も試合や練習が出来なくなる格ゲーをしたことのある人間がどれくらいいるでしょうか。試合前に相手を大勢でリンチし、トンカチでトドメを刺すのが最強戦術である格ゲーをしたことがある人間がどれくらいいるでしょうか。
今回ご紹介したいと思っている『wrestling empire』はまさにそういう類のゲームです。
『wrestling empire』は英国インディーゲーム界の巨匠マット・ディッキーによるプロレスゲームで、2000年からずっと個人開発を続けてきたマットの集大成的作品として、彼のキャリアで初めてSwitchで売り出されました。
集大成というのもマットは生涯を通じてプロレスゲームのセルフリメイクを続けてきたクリエイターで、『wrestling empire』発表時点から21年前に出した処女作に研鑽を重ね、ゲームシステムを引き継いだ後継作を何度も出しながら辿り着いた一つの到達点が『wrestling empire』なのです。本作はまさにマットの21年分の血と汗と涙が詰まっていると言えるでしょう。
さて、そのマットのクリエイター魂の結晶である『wrestling empire』ですが、以下のような成分を含んでいます。
金的
撲殺
法廷
そして穏やかな死へ
ええ、プロレスは4分の1です。このゲーム、プロレスよりそれ以外の部分の方が面白いんで。
敢えて『wrestling empire』を一言で表すなら、まさに硬派。
この時代にローポリ勝負の硬派さは勿論、アクティビティといえば試合とその休憩時間を利用してオープンワールドで人を殺す、ゲーム内イベントと言えば主人公がラジオ出演時にイジられてキレて暴れる、ロッカールームを我が物顔で使うレスラーを金でシバくよう依頼される、対戦相手を痛めつけてやるから金を寄越せと申し出があり、断ったら殴り合いになるみたいなバキバキに男性原理な事件しか起こりません。プロレスをうたっていながら、ブック(プロレスの台本)とか受けの美学とか一切なくセメントマッチオンリーです。
あと一応申し訳程度の恋愛要素もあるのですが、雑過ぎて初対面の女性npcと急にチューしたりし始めます。
しかし何よりも硬派なのは超常的なモッサリ具合。
単に動きが遅いだけならまだしも、一度投げられたら投げられた側も投げた側も何故かスタンして五秒くらい立ち上がれなくなるわ、カメラワークが信じられないくらい最悪で自分の状況が7割くらいしか分からないないわで、プレイしていてマジでキレそうになります。良くない脳汁がデシリットル単位で分泌されてるのが分かります。
YouTubeでマットのゲームばっか実況しているYoung Froという好事家すぎる男がいるので貼っておきますが、ご覧になるのなら、見やすく編集してこれということを念頭に置いてください。
そもそも、製作者のマット自体凄いです。先ほどマットは21年間もセルフリメイクを続けていると言いましたが、その間マットはほぼずっと同じキャラ・同じ動きを使いまわしています。
重ねてその間、彼のゲームには長らく88ドライバー(88はナチスのシンボルナンバー)なる最悪のキャラが登場し続けていました。もしかしたらネオナチかもしれません。
そんなイングランドのド硬派男・マットディッキーが作っているので、wrestling empireも必然硬派なゲームになってくるわけであります。
ここまで悪口のようなことばかり書いてきましたが、マットはたった一人で作ったオフラインのプロレスアプリwrestling Revolution 3d(wrestling empireはこれの直接的なリメイク版)で100万DLを突破した経験もあり、インディー界からWWE 2Kシリーズ(世界最大のプロレス団体wweが公式に提携しているナンバリング)を脅かし続けているとまで言われる天才クリエイター。その彼の最高傑作との呼び声高い本作が単なるバカゲーで終わる訳がありません。
実際にWWE 2K18が8位にランクインした史上最高のプロレスゲームランキング(THE GAMER)だと我らがwrestling empireは5位につけているのです。これ、凄いことですよ。野球で言ったらパワプロよりもおかず甲子園〜令和名勝負〜の方が評価高いみたいなことですからね。
それに、モッサリがどうこうと言いましたが正直そのモッサリを求めて僕はwrestling empireをやっています。あの独特の遅さは恐らく、プレイヤーをイライラと共に本気でゲームに没入させ、なんだかよく分からないホルモンを迸らせるように設計されています。それくらい癖になるテンポ感です。
それから愛好家にもあまりクローズアップされないポイントなのですが、本作の沼要素の一つがキャラクリだと自分は踏んでいます。
兎に角ものすごく多様なゴツいジジイが作れるので、ゴツいジジイメーカーとして使いたい方にもお勧めできます。
まあそんなわけで非常に独特かつ魅力的なこのwrestling empireですが、いかんせん日本人でやってる奴が一人もいません。YouTubeで調べても日本語の動画なんてありませんし、Twitterで調べてもツイートが7つあるだけでしかも全て2年以上前の投稿です。
こんなにも素晴らしいゲームが日本でガチで俺一人しかやっていなかったら勿体なすぎるので、どうか皆さんスマホ版で遊んでみていただきたい。
スマホで無料体験版が出来るのですが、体験版で出来る事が多すぎてほぼ本編そのままなので満足のいくゲームプレイが出来ると思います。
最後に、各メディアのwrestling empire評をご紹介して終わろうと思います。
DAILY DDT 「あなたが試合を戦うとき、あなたのレスラーはレスリングの歴史の中で最も奇妙な冒険に出る。プロモーターにいじめられてやりたくないことをしたり、4週間棚に置かれたり、リングであなたを助けてもらうために他のレスラーから賄賂を受け取ったりすることができる。そうすれば、あなたのストーリーの選択肢は本当にクレイジーになる。レスリングビジネスを批判する撮影インタビューを実行したり、試合を長くしすぎて他のレスラーが死ぬこともある。」
「肝心なのは、レスリング・エンパイアは、40台の自動車事故とジュリアード卒業生のフルオーケストラのクロスであるということです。」
「wrestling empireは純粋な天才的ダンプスタファイア(メチャクチャ)だ」
THE SPORTSTER「プレイし得る中で最も奇妙なレスリングゲーム」
CBR「本作の開発はノスタルジックなニンテンドー64ファンにとって最高のニュースだ」
「最も過小評価されているゲームの一つ」
(おわり)