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そして連鎖は始まった

それは、ある日の飲み会の席での出来事。
20人くらいいただろうか。出身も所属している組織もバラバラ。中には、はじめまして、という人もチラホラ。
乾杯後、しばらくして自己紹介タイムとなった。
乾杯後の自己紹介は要注意だ。お酒の影響もあり、後半にいけばいくほどグダグダになっていく。要は、自己紹介をしている参加者への注目率が下がってしまうのは、想像に難くないだろう。
かといって、ないとないで、気が済まないのも、自己紹介タイムだ。とりあえず、やっとこうか、っていうノリになってしまう。

順調にスタートを切り、4、5人が終えたところで、それが始まった。

「…建築関係の仕事をやっています。新築のお家を検討中の方は、是非お声掛けください」

ん、違うか。この時点では厳密にはまだ始まっていなかった。彼もまさか、後々自身が「一人目」とカウントされるなんて微塵にも思っていなかっただろう。問題は、次の右隣の、仕事が電気工事関係の参加者だ。

「…新築のお家を建てられた際には、是非電気工事は当社に…」

始まった。「二人目」だ。いや、これくらいだったら、ギリギリ引き返せなくもない。3人目の力量次第だろう。強い意志を持って臨めばいいだけのことだ。ガンバレ!

ということで、3人目の自己紹介が始まる。
この手の企画には珍しく、この段階にきてグイッと話者への注目度が上がってきた。
これは、ちょっと分が悪い。話者の強い意志も、打ちひしがれてしまいそうだ。

でも、しばらくして、それが杞憂であることが判明した。彼の関わっている仕事が和菓子であることがわかったからだ。

これで連鎖が止まる!
ただでさえお酒が入っているのに、脳に余計な負荷を与えるの止めて!
お酒と食事と会話を純粋に楽しませて!

そのときである。

「お家を建てて、電気工事が終わり…」

ちょっ!何言うとんの?誰か止めろ!

「近所に挨拶に行かれる際には、うちの和菓子を…」

終わった。

しかも、意外と上手にまとまっているのが小憎らしい。

ここからは、もう止められない。もう無理。

途中でUFOを作る人が出てくるわ、そのUFOをスクラップする人が出てくるわ、のカオス状態。
だましだましの箇所もあったが、なんとか最初の数人を除いて全員つながったようだ。
えっ、私?もちろん、抗うことなく、のっかりましたよ。


よくよく考えてみると、この偶発的に成立した企画は結果的には悪くなかったと思う。想定していない、色んな効果があった。

先ず、意外と顔とその人の仕事の内容が瞬時に結びつく。これは商品やサービス名ではなく、それをどう利用するか(強引な解釈も含めて)、という説明がなされているからだろう。上記の和菓子じゃないが「なるほどな…」「言われたらな…」と腑に落ちたり、UFOのような想定外のダイナミックなタイプのものは、その意外性ゆえに、記憶に残りやすい。
もう一つは、酔っぱらいたちの連想ゲームのようなものであるが、十分に従来は「なかった」タイアップやコラボレーションを生みだす可能性がある。「このメンバーの扱う商品やサービスをかき集めたらバーベキューなんか、簡単にできちゃうね」と誰かが言っていたが、その通りである。我々だけで完結するのである。我々の中でお金が回っていくのである。

是非一度お試しあれ。

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