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ENDLESS PAIN

座った椅子が倒されていく。
目を閉じて、口を開ける。
今回も、また始まった。
意図的に、意識を他に向ける。
あぁ、note更新しなきゃ…


社会人になりたてのころの話。
着任した部署で、とある社員から業務を教わっていた。
今の御時世では信じられないかもしれないが、残業代もあってか、やたら残業が多く、自然、こちらも遅くまで残らざるを得なかった(こちらは、営業手当をもらっていて残業代は出ない)。

苦痛だった。

何が苦痛か、って、終りが見えない。
最初は業務の全容が見えず、一つ片付けたと思ったら、また追加で次の仕事が落ちてくる。

東京の夜景は企業戦士の残業によって成り立っていた?

「これ、どこまであるんだろう?」
今考えると、当人に確認すればいいじゃないか?と思うが、なかなか、実際にはそうもいかないものである。
「まだ大丈夫?」
と聞かれても、
「えぇ、えぇ、まだありますか?」
と意外と小心者なのである。

ストレスがたまる。
帰り時間が遅くなることそのものよりも、全容が見えないことへのストレス。そして、教わる相手への不安、不信、ロイヤリティの低下。指示を出す方、出される方で持っている情報が非対称であることに起因するものだ。

結局、そこの部署はスポット的な業務のサポートだったのだが、結局、数ヶ月で、全容も見えないまま、本来の担当部署に移った。
心からホッとしたものだ。


寿司やで、トロタク巻きを食べていたときのことだ。

「ジャリっ」

あれ、貝類なんて食べてないよな…。
イヤーな予感がして、下で歯をなぞってみると歯が一部欠けていた。

あれ?あるべきものが、そこにない

そして、小学生のとき以来になるだろうか、久しぶりの歯医者通いがスタートした。

ネットでも、リアルな噂でも評判の良い歯医者で、そこは全幅の信頼をしているのだが、毎回の数十分は、常に緊張を強いられる。物理的な痛みがあるわけではない(ときどき痛いけど)。なのに、常に痛みに対して、ファイティングポーズを取らざるを得ない。

いつでもこい!

あぁ、あのときと一緒だ。
ここの歯医者は唯一、問題があるとしたら、椅子に座るやいなや処置が開始され、終わるやいなや受付に戻されることだ。あっても簡単な口頭での説明だけ。何かレントゲンとか、模型とかで説明してくれてもいいのに。
しかも、昨日はいつの間にか、欠けていない歯も処置しているし。

ちょっと、今、どうなっているのよ!

せめて、今どういう状態なのか、今日は何をしようとしているのか、次回は何をする予定なのか?
処置を見える化してくれるだけでも、理由のわからない不安や緊張も軽減するだろうに。


翻って、自分は誰かに業務や作業を依頼するときに、その背景や、意図等を説明できているだろうか?
指示を出す相手と情報を共有できているだろうか?情報の量と質が非対称になっていないか?
相手に終わりない痛み、辛さを与えていないだろうか?


さて、痛みがないといっても、実は痛みはある。
「痛かったら、手を挙げてくださいね」
なんて、言われるけど、結局手を挙げることもなく、飲み込んでしまい、相変わらずの安定の小心者ぶりを発揮しているわけである。

DALL-Eより


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