【LAMB/ラム】と言う名の異物
公開をずっと待ち望んでいた作品がようやく公開されました。
【LAMB】
タイトル、予告動画等、直球なこの映画、存在は知っていたけれども日本での公開がなかなか始まらず、忘れかけていた所にようやく見れました。
不穏そうな内容に反して、展開されているグッズは華やかとは言わないまでもキャッチーなデザインで女性受けしそう。
Tシャツは完売も多く、この作品に期待している人数の多さが伺えます。
実際都内では公開初日からの3連休、かなり人が入っていたので、混雑を避けるために少し日にちをずらしての鑑賞となりました。
ちなみに座席に座りながら見る予定もない映画の予告が流れているあの時間ってどう言う気持ちで過ごせば良いんでしょうね。
ただ、今回は『ザ・メニュー』や『サイレントナイト』と言ったミステリーな感じの映画の予告があり、退屈しなかったです。
話が逸れましたが肝心の本編についてです。
予告の動画など観た人は既にわかっていると思いますが、牧羊を生業として暮らす夫婦が羊のお産を手伝っていると羊と人間のハーフの獣人のような生き物が産まれてしまう、と言う内容です。
めっちゃシンプルですね。
ここ、ポイントなんですが【羊】の方が濃い生き物です。
身体が人間だし人間の方がベースじゃない?と思う人もいるかも知れませんが、結局思考する場所がその生き物のベースでしょうから、頭が羊ならベースは羊だと考えます。
これは作中でも少しだけ触れられている部分です。
異物が産まれる前、妻はどこか諦めた表情で生活をしており、夫はその現実を無理矢理幸せだと言い聞かせているように見え、重い影がまとわりついている雰囲気。
個人的に、パターンとしては夫が異物に嫌悪感を示して妻と口論になって・・・みたいな展開を予想してたんですが、そう言う事もなく淡々と受け入れていく夫婦が描かれていました。
人里離れた場所と夫婦に起こった過去が異物をすんなり受け入れてしまえる環境だったんだろうな、と思います。
異物はアダ、と名付けられ育っていきます。アダのおかげで夫婦は生きる目的を見つけ、親の表情になっていきます。
ただ、もちろんそれではお話が進まないので、夫婦の邪魔をする物、一般的な目線で観客と同じ意見を言ってくれる夫の弟も現れますが、夫の弟もやはりこの生活に馴染んでしまいます。
昔どこかで動物の子供は外敵から身を守るため、可愛らしく、育ててあげたい、と言う外見が備わっていると聞いた事があります。
実際、アダを見ていると、かわいくはないが気持ち悪くもない、と言う不思議な感覚があったのは確かです。
こう言った背景があり、夫の弟もアダを育てたい、と言う本能に負けてしまったのかも知れません。
ただ、それはあくまで敵対していないから、まだ人間が扱える大きさだから。
そんな当たり前の事を忘れて、このまま暮らしていけば良い、と安心した後に物語は急展開を起こします。
正直な所、ちょっと笑ってしまうような急展開ですが、元々この映画は何故それが起こったか、この映画が終わった後に登場人物達はどうなるだろう、と言う事は関係ないのだと思います。
ゾンビ映画の様に冒頭にとんでもない事が起きて、それを受け入れて対応して、その後の世界はどうなったかを想像するしかないのと同じだと思いました。
結論を出さない代わりに、観た人それぞれに「アダが可愛かった」、「意味がわからなかった」、「ラム肉が食べたくなった」、等の色々な感想が出てくる映画だったと感じています。
自分自身でお話の前後を考察する事が好きな人におススメな映画でした。
このレビューが誰かの映画ライフを良き物にしてくれますように。
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