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【映画のお話】3匹の子ブタと「オオカミの家」

みなさん、ホラー観てますか。
私はホラーやサスペンスが好きなので結構な頻度で観ます。

話題とされている物も、B級な物も、投げっぱなしジャーマンで終わる物も雑食なので観てしまいます。

そんな中、旧Twitter(現X)で流れて来たツイートで、ある日この映画の存在を知りました。

オオカミの家」2018年

ツイートにはこの映画の不安、恐怖を煽る文面と共に、予告動画等が記載され、混沌とした映画の内容がすぐに伝わり、私のホラーアンテナが反応いたしました。
とは言え日本ではすぐに公開では無かったのですっかり存在を忘れていた所、いつの間にか公開していましたので早速観に行く事に。

ド平日の真昼間なので、そんなに人もおらんやろ、と思いましたが結構な客入り。
この映画の知名度や期待度が結構あるんだな、と実感していた所映画が始まりました。
そして映画館のスクリーンに表示されるタイトル
                                        「骨」

全く違うタイトルの映画が始まり私は非常に焦り、周りの様子を伺う物の、微動だにせず、じ・・・っと皆さんおとなしく着席しておりましたので間違いでは無い模様。

途中で理解したのですが、この「骨」と言う作品は同時上映の短編映画でした。
内容はとある少女が2体の死体(人骨)を使い妙な儀式を行う、と言う物で、ストップモーションの見せ所を凝縮した、本編への期待を高める意味で良い配慮だったかと思いました。

10分程度の「骨」が終わり、ついに「オオカミの家」が始まります。

内容としてはあるコロニー(集団)を抜け出した主人公のマリアが、オオカミのいる森でさ迷っている中、避難した小屋で2匹の子ブタと出会う。と言う設定。

状況的には童話の赤ずきんと3匹の子ブタが混ぜこぜになったよう。

主人公のマリアは当然のごとく不法侵入し「私は善人です」と謎の自己紹介をしながら部屋を物色し身の安全を確かめます。
部屋を物色中、前述の2匹の子ブタと出会ったマリアは小さい方にペドロ、大きい方にアナと名前を付け可愛がる事に。

ここまで、文章で伝えると本当におとぎ話の様にメルヘンで、最後には白馬に乗った王子様でも出てきそうな物ですが、実際はこの間ずっと全てが異形に変形しつつ場面をつなぎます。
登場人物は時に立体物になり、時に壁の絵になり、スクリーンを縦横無尽に動き視覚的嫌悪感を観ている側に見せつけてくるのです。

マリアは名前を付けた2匹を可愛がり、何の説明も無く魔法の様な物を使い、2匹を人間に変え、衣服を与え、言葉を教え、しつけも行っていきます。

ちなみに冒頭、マリアは自分が住んでいるコロニー(集団)で飼っていた子ブタの世話をきちんとできず逃がして罰せされそうになり自分も逃亡するのですが、この家の中でも間違った世話の仕方でどんどん状況を悪化させてしまいます。

幸せそうに取り繕ってはいる物の、最終的には家の中にある食料が尽きてしまい、マリアを含めた3人は次第に・・・と言う流れになるのですが、ここまでの間、状況説明をしてくれる狂言回しが不在の為、視聴者は映画の内容をとんでも無い距離から追いかける事になります。

例えば、マリアが逃げ込んだ家で聞こえる幻聴の様な声の正体が実は「オオカミ」で、オオカミの声がする家、つまりここが「オオカミの家」である事を理解する、と言うように、リアルタイムで動く映像と理解が追い付かない事態が視聴者側に発生してしまいます。

映像的にも飛び出る絵本の様な臨場感があり、非常に高度な撮影を行っているのですが、動きがあちこちで起こっているので正直全体像を追えない、没入し切れない、と言う印象がありもったいないなと思うシーンも多々ありました。

そもそもこの映画は実在したカルト教団がなんたらかんたらと、バックボーンを知ってるありきの内容であった事も、没入できない理由だったのかなと今になって思います。

とは言え、今まで自分が観た事がない映像表現を観れたと言うのはとても貴重な体験になりました。
2匹の子ブタを世話して親のように振舞っているマリアも、オオカミからすれば愚鈍な子ブタに見え、3匹の子ブタの様だったのでは?とも思えなくも無く、観た人それぞれにテーマの伝わり方が違って来る映画だったのではと思います。
非現実・非日常を覗いてみたい人にはお勧めの映画です。

このレビューが誰かの映画ライフを良き物にしてくれますように。

#映画感想文

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