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中学受験 近年の傾向について


中学受験率 過去最高を記録!

現在、東京で私立中学などに進学する小学生の割合は5人に1人です。
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県を合わせた6年生の数は過去最少となりましたが、2024年の「中学受験率」に関しては過去最高を記録しました。また、関西の受験率も14年ぶりに10%を超えた昨年をさらに上回ったとのことです。
景気の影響を受けやすいのが中学受験ですが、リーマンショック後の2015年に最低を記録して以降、2023年そして2024年と受験率は過去最高を更新しています。

今年の受験生は、中学受験の準備段階の時期から新型コロナウイルスの影響を大きく受け、学校行事や友人との交流なども我慢せざるを得なかった学年です。
また、コロナ禍における公立中学と私立中学の対応スピードの差などを目の当たりにして世代でした。
そうした中で、費用が掛かったとしても私立中学の方が良いと考えるご家庭が多かったことが、過去最高の受験率の更新につながったのではないかと考えます。

2024年入試の特徴

筑波大学附属駒場中学の通学区域の拡大により応募者が増加

最難関の筑波大学附属駒場中学が、通学区域拡大を発表しました。
埼玉県、千葉県、神奈川県の一部の地域が追加されたことにより、応募者は約5%程度増加しました。

横浜雙葉中学が一般入試を2回実施

横浜雙葉中学は、これまでは2月1日の1回のみの入試(募集人数90名)のみでしたが、2024年入試より、2月1日に「1期」(募集人数60名)、翌日の2月2日に「2期」(募集人数30名)と複数回の入試を実施するようになりました。
その結果、前年の実質倍率が1.7倍程度でしたが、今年は1期、2期ともに倍率が約2.5倍程度と大きく伸びました。

個人的には、フェリス女学院中学を第一志望としている受験生の併願校として横浜雙葉中学(2回目)の受験を選択されたご家庭が多かったのではないかと思われます。
実際に、2024年は以下の受験パターンが可能になりました。
2月1日:フェリス女学院
2月2日:横浜雙葉
2月3日:横浜共立

埼玉県所沢市に、開智所沢中等教育学校が新設

2024年の埼玉県中学入試で話題となったのが、開智所沢中等教育学校の開校です。学校側が行った入試の工夫により、開智(さいたま市岩槻区)、開智日本橋(東京都中央区)の応募者も増加しました。
開校初年となる今年の1月の入試では、開智の所沢中等教育学校出願者総数が7800人を超え、2024年入試の大きなトピックとなりました。
開智所沢中等教育学校の開校に伴い、開智と開智所沢を合同入試にしたことも大きなポイントです。

中堅校の入試で、合格確実と思われていた受験生の不合格が続出

学力レベルとして最も人数が多い偏差値50前後の生徒が志望するいわゆる「中堅校」が近年の中学受験の過熱により難度が急激に上昇しており、本来であれば合格確実と思われていた受験生が不合格となるなど波乱もありました。
この中堅校の難化に関しては2025年入試においても続くと思われます。

2015年以降、首都圏の中学受験者数は非常に多くなっており、「激戦」と呼ぶにふさわしい競争が首都圏の中学入試で繰り広げられています。この影響を最も受けるのが中堅層の受験生、具体的には偏差値50前後の受験生です。受験者数が増加した場合、人数が最も増えるのが偏差値45~55の中間層であるため、いわゆる「中堅校」は、その年の人気不人気で難易度が大きく変動します。
そのため、受験予定の学校がその年の人気校になった場合、他の難関校に合格しても中堅校に不合格となるケースが起こります。実際、今年の入試において、偏差値が5以上高い他校に合格した受験生が、安全校として受験した中堅校に不合格となるケースが続出しました。

この傾向は来年以降も続くと思われますので、中堅校の志望度が高いご家庭は、受験予定の学校がその年の人気校になった場合を想定し、親御様とお子様どちらもが進学しても良いと思える安全校を複数校見つけておくことが大切です。

大切なお子様の一度きりの中学受験であり、ご家庭の今後を考えるうえで大きな岐路になることは間違いありません。中学受験を後悔の残るものにしないためにも、お子様の「安全校」になり、かつ「6年間お任せしたい」と思える学校を是非探してほしいと思います。

2025年入試の変更点

明法中学が、男子校から共学校に変更

2019年4月より明法高等学校が男女共学となりましたが、中学も共学になります。明法中学が共学になることで、多摩地区の男子校は桐朋の1校だけになります。

光塩女子中学、日本女子大付属中学が算数1科目入試を新設

上記の2校が、2月に算数1科目入試を新設します。
このように新しい取り組みを行うことで、学校の人気が上昇する可能性も高いです。
「中学受験は算数で決まる」と言われるように、算数は中学受験の最重要科目ですが、論理的思考力の必要性は近年非常に高まっています。

早稲田大学政経学部の入試科目に数学が必須となる等、経済学部などの文系学部にも数学の必要性が高まっており、学校側は算数が得意な受験生を求めているという事情があります。
「理数系科目、特にその土台となる算数の素養があり、能力が高い生徒に入学してほしい」という理由から、算数1科目入試が広がってきていると言えます。

豊島岡女子学園中学 「算数・英語資格入試」を新設

女子最難関校の一つである豊島岡女子学園中学が、「算数・英語資格入試」を実施します。
「算数・英語資格入試」は、「英語学習を進めてきた意欲の高い生徒を集め、豊島岡女子学園の教育の中で、医学部や海外大学などの多様な進路選択を可能にする学力を養い、世界で活躍できる女性を育成する」という目的で導入されます。

確かに近年、中学入試で試験に英語を選択可能であったり、英語検定の結果により加点する学校は増加しているという印象がありましたが、最難関中学では男女ともにまだ導入されていない中、最難関校の一角である豊島岡女子学園で「算数・英語資格入試」が新設され、今後の他校の動向にも非常に注目です。

最後に

「二月の勝者」を目指す子どもたちの戦いの開幕まで、日々着実に残り時間が少なくなっています。
6年生の秋以降は、中学受験で出題される全範囲の学習も終わり、入試本番に向けて最後の追い込みをかけていきたい重要な時期になってきます。
そしてここからは戦略が何より重要になってきます!

改めて、「合格するためには何が必要なのか」を確認してください。
合格するためには、算数、国語、理科、社会4科目の総合点が、志望する中学校の合格最低点を超える必要があります。
そして、算数で1点取ることも、社会・理科の暗記分野で1点取ることも、総合点で考えればどちらも同じ1点です。

それにも関わらず、多くの受験生は優先順位を間違えており、点数の伸びが期待しにくい算数に秋以降も注力し、社会・理科の暗記分野の徹底を後回しにしています。
夏に力を入れて取り組んだ算数や国語が伸び悩んでいるのであれば、また、志望校の理科・社会の配点が高いのであれば、秋以降は社会や理科に時間を投入し、4科目の総合点をあげていくことも重要な戦略のひとつであることを意識してみてください。