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中学受験の理科を得点源に!


中学受験における理科

暗記や計算、グラフの読み取りなどが複合的に絡んでいる理科は、勉強法が分からないと頭を抱える受験生が多い科目のひとつです。
丸暗記ではなく、原理なども理解しなければならない点が、受験生に理科を難しく感じさせる原因となっています。

しかし、これまで多くの受験生を指導してきた経験から言わせていただくと、理科は、どの受験生でも点数を稼ぐことができる教科です。
逆に言えば、理科で大きな失点をすることは、ライバルとの差がついてしまい危険ということです。

近年の入試問題紹介(出題校:淑徳与野中学校)

ホッキョクグマの体毛の色は白色に見えます。これは、光の散乱によって私たちの目には白色に見えていますが、実は透明で光を通しやすく、太陽の光を皮膚まで届かせ、熱を得ることにつながっています。
このことを参考にし、実際のホッキョクグマ(成体)の肌の色を答えなさい。

いきなりですが、近年出題された有名な入試問題の紹介です。
実際のホッキョクグマの肌の色を知らないと解けないように感じますが、問題文を丁寧に読んだうえで考えると、答えに辿り着きます。
答え:黒色
解説:非常に寒い場所に暮らしているため、光を吸収しやすい黒い皮膚で、体温を維持している。

出題の背景

今回紹介した問題もですが、最近の中学受験の入試問題を分析していると、暗記だけでなく、自身の考えや社会への関心を問う問題が明らかに増えています。
その理由としては、日ごろから身の回りの事柄に疑問を持つ好奇心旺盛な子どもは、中高一貫の6年間の教育を通して更に成長できると学校側が考えているためであると考えます。

しかし、このような思考力を問う問題が増えているとはいえ、あくまで入試に必要な基礎的な知識がインプットされていることが条件です。

近年の中学受験では、受験生全体のレベルが年々上がっており、基礎知識の暗記だけでは差がつかないのも事実ですので、できる限り早い段階で頻出知識を正確に整理し、思考力を要する問題の演習にどれだけ時間を投入できるかが難関校に合格できるかどうかの分かれ目になります。

近年の出題傾向

近年の出題傾向としては、表やグラフ、図などの条件(データ)が提示され、そのデータを活用し解答を導き出す、といった分析力・思考力が問われる問題が増えています。
つまり、基礎知識がインプットされていることが前提で、本質を見抜く力が求められています。

また、理科の用語だけでなく、図や写真、表に関する問題も出題されているため、実物を知らず、「キーワード」を文字ベースだけで暗記していると、本番の試験では対応できません。
普段から資料集などに掲載されている写真・図を見ておくことで問題が圧倒的に解きやすくなりますので、教科書や塾のテキスト、あるいは理科便覧などの資料集を通して、カラー写真や図にも見慣れておくことをお薦めします。

受験生に求められている能力

①基礎知識の正確な暗記

まず、暗記する前に暗記したい範囲の内容の理解が必要です。内容を理解していないと丸暗記をすることになり、中学受験の理科では、丸暗記ではなかなか伸びません。
また、用語の暗記は一日に何時間も行う必要はありません。長時間かけて一気に暗記しようとしても、ある程度の時間が経過するとせっかく覚えた用語も忘れてしまうものです。それよりも、毎日コツコツ積み重ねて暗記をしたほうが結果的に多くの用語を覚えることができます。

生物分野では覚えるべき知識が特に多いので、とにかく知識のインプットが大切です。入試ではあまり聞いたことのない生物について出題されることもありますが、大抵は問題文で説明があるので、無理に覚える必要はありません。
まずは、塾の授業で扱った生物を確実に覚えましょう。

そして、何より知識の正確な暗記が重要です!

(例1)無胚乳種子の代表例
マメ・クリ・アサガオ・ヘチマ・ダイコン・ヒマワリなど

(例2)台風の特徴
・熱帯低気圧が発達したもの
・台風をつくる雲:積乱雲(入道雲)
・うずの巻き方:反時計回り
・風の強さ:進行方向の右側が強い
・進路:小笠原気団の勢力で決定
・高潮がおこることもある。
・最大風速:毎秒17.2m以上

(例3)動物の分類

・イモリ:両生類
・ヤモリ:は虫類
・ペンギン:鳥類
・コウモリ:ほ乳類
・シャチ:ほ乳類
・カモノハシ:ほ乳類

(例4)月の数値に関する知識
・月の満ち欠けの周期:29.5日
・月の公転周期:27.3日
・月の自転周期:27.3日

このような入試頻出かつ紛らわしい知識に関しては、特に正確に暗記してください。
正確性が合否を分けます!

②計算問題への対応力

算数の計算問題では点数が取れるのに、理科の計算問題になると点数が伸び悩んでしまうパターンは実は多いです。
理科の計算問題と算数の計算問題では考え方・解き方が異なるため、それを理解していないと伸び悩んでしまいます。
一方で、理科の計算問題は解法パターンが決まっているものが多いです。
解き方や考え方の理解さえできていれば、類題を解くことで慣れていきます。
また、理科の計算問題では「比」を使ったものが多く、物理分野や化学分野で頻出傾向にあります。
特に台車や滑車、酸化・還元などで頻繁に出題されており、これらの問題は早い段階で因果関係を意識することが大切です。

化学分野の計算問題が苦手な受験生は特に多いですが、比や割合の学習を強化することをお薦めします。
また、化学の計算問題では、一つの計算式で答えに辿り着く問題は少なく、何段階か計算を経て答えに辿り着くものが多いです。
このため、途中式は必ず残しておくようにしましょう。
自分の考え方がどこまで合っているか、答え合わせの際に確認することができます。

③記述問題への対応力

最近の中学入試の問題傾向の一つとして、記述問題の出題が増えているということが挙げられます。
記述問題というと国語のイメージが強いですが、理科や社会でも記述問題が出題されています。
以前は、記述問題は主に難関校で出題されていましたが、近年は関係なく多くの学校で出題されています。

理科で出題される記述問題は中学校によって傾向は異なりますが、理科の記述問題ではデータの読み取りが必要という特色があります。
具体的には、問題文に掲載されている図や表、グラフ、実験結果のデータを読み取ったうえで記述の解答を作り上げていく必要があります。
そのため、基礎知識を基に、図表やグラフ、実験結果のデータを正確に読み取り、問題全体を理解したうえで記述問題を解答しなければなりません。

答案に盛り込むべき理論や基礎知識がスムーズに出てくるように、比較的易しめの記述問題から始め、トレーニングを積んでいくことで記述問題も必ず得点源になります。

④時事問題を背景とした出題

近年の入試では、理科でも時事を背景とした出題があるため注意が必要です。特に、近年の日本では、これまで経験しなかったような気象現象が多数発生していることもあり、「線上降水帯」などニュースで話題となった用語もチェックしておきましょう。
環境問題、SDGs、エネルギー問題と絡めた出題も増えてきています。
ニュースや小学生向けの解説番組等を見ながら、ご家庭で補足説明をするなどして理解を深めることをお薦めします。

近年実際に出題された、時事問題を背景とする入試問題を紹介します。

(例1:出題校:浅野中学)
2017年6月に兵庫県の神戸港で発見された後、各地で次々と存在が確認され、ニュースで話題になった(  )は、外来種の一例といえるでしょう。

【解答】
 ヒアリ

(例2 出題校:成城学園中学)
昨年の8月、九州地方では数日間、強い雨が降り続きました。特に、九州北部では、(①)降水帯が発生しました。
(①)降水帯とは、(②)に多量の激しい雨を降らせることができる(③)が次々と発生して列をつくり、同じ場所に数時間にわたって強い雨を降らせる降水域のことです。
※今回は選択肢は省略しています。

【解答】
①:線状
②:短時間
③:積乱雲

お薦めの参考書・問題集

インプット用教材

理科コアプラス(サピックス小学部)
サピックス小学部の受験指導に基づき、有名中学で出題される理科全分野の頻出知識を「核(=コア)」として集約。知識の確認・定着に最適な一問一答形式により、毎日くり返し学習すれば、有名中学に合格するための「知識力」が身につきます。ハイレベルな「中学受験理科の発展知識」も収録されています。
そんな「理科コアプラス」ですが、近年大幅に改訂され、写真やカラーページを増やし、より見やすく充実した内容へとブラッシュアップしています。

理科メモリーチェック(日能研)
長年にわたり中学入試問題を分析している日能研が、「入試に必要な最低限の知識」と「確認問題」をコンパクトにまとめた書籍です。近年の入試の出題傾向をふまえ、「地震」や「ふりこ」などを追加した全76項目で、問題も大幅に刷新し、解説もより詳しくなりました。定番の頻出項目に加えてこれからの中学入試で必要な学習内容をおさえることできます。

1つの項目ごとに暗記しておきたい事項をまとめた「要点のまとめ」と、空欄補充・一行題が中心の「ポイント・チェック問題」の見開き2ページで完結する構成となっているので、知識の補強と確認が同時に行え、確かな力がスピーディーに身につきます。
1日に1項目ずつ取り組めば、3カ月弱で入試に出る理科のすべての分野の基礎を学習することができます。

演習用教材

中学入試 理科 塾技100
かなりお薦めの一冊です!
現役塾講師が、塾だけで教える理科の「塾技」を公開しています。
厳選した入試問題を使って、パターン学習で得点力を養成することが可能であり、集中して取り組むことができれば短期間での巻き返しも可能です。

中学入試 最高水準問題集 理科 (シグマベスト)
難関校の問題を中心に徹底分析し、良問が厳選されています。
難関校・最難関校を受験するうえで一度は経験しておいてほしい問題が多数掲載されているため、秋以降に是非取り組んでほしい一冊です。

最後に

中学受験では、算数や国語の学習に時間を費やしてしまうため、理科にかける学習時間は少なくなりがちです。
確かに、理科は算数や国語に比べると配点が低いことも多いですが、適切な学習によりどの受験生でも点数を稼ぐことができる教科であるため、理科で得点できないと周りの受験生に確実に差をつけられます。
今回の記事を参考にしていただき、是非理科を得点源にしてください。