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日本酒文化から思うクラフトビール文化
一昨年でしたでしょうか、広島県の日本酒業界の方が集まる勉強会に”異業種の話”パートとしてクラフトビールの話をして欲しいという依頼をいただき講演させていただいたことがあります
言うまでもないですが日本酒の売上は下がり続け、クラフトビールはブームと言われています(実態は別にして)
おそらくその辺のことからその会のお題目がクラフトビールであったのだろうと考えた私は日本酒業界とビール業界の大きな差である”味の伝え方”を主題にすることに決めました
私が尊敬する野毛のマスターの受け売りでもありますがそこが日本酒業界の大きな問題だなと思うからです
ツイッター(今はX)やインスタ、世の中のブログなどを検索すると思ったよりも日本酒の情報発信者は多くクラフトビールに関する情報発信者よりも圧倒的多数でした
これは正直驚きました
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ちょっと雑な検証ですが日本酒、クラフトビールでそれぞれググったときの件数の違いがおわかりいただけると思います
つまり日本酒の知名度はクラフトビールを遥かに超えてます
でも日本酒は売れていないと言われて久しい・・・
昔、船井総研のセミナーに参加したとき酒蔵さん御一行もいらしていて共に酒蔵めぐりをしたことがあります
そういうときに必ず僕が聞く事があります
「利き酒の仕方を教えてください」
多くの酒蔵さんは色とかツヤとかテカリとか言い出すのですが色がどうであれば正解、ツヤやテカリがどうであれば正解という話をしてくれる方に未だにお会いしてません
もちろんヒネ香などのオフフレーバー的な話はしてくださいますが何が正解かという話になると「結局は美味しいかどうかですね」という話になります
ここがビアスタイルを基準にその味を目指して複数の原料やテクニックをかけあわせてつくるビールと、今年採れたお米をいかに美味しいお酒に仕上げていくかという日本酒の大きな差なんだなと強く感じます
その特徴は日本酒のラベルにも現れてますね
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吟醸、純米、樽酒などの文字がありますこれは作り方と入れ物のことです
ビールにはビアスタイルという味を表す言葉が書かれてますが日本酒には作り方が書かれていて味については書かれてません
銘酒酒場的なところに行っても酒蔵の歴史や杜氏さんの話、日本酒度や酸度の話、お米や酵母の話、燗がいいか冷がいいかという話をする方はいてもどんな味かわかるように説明してくれる人はいません(香りがいいとかまったりしてるとか自分の感じた感想を言う方はいます)
それには日本酒が歴史ある日本の文化だからというのが関係してると思います
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流通が発達していない時代は当然のように近場の酒蔵の酒を買うことになります
その時の選択肢としては”どこが作ったか”という蔵(杜氏さん)の好みと”どんな酒か”というつくり(価格)の好みです
そもそも複数の原料を混ぜ合わせるビールに比べれば日本酒の味のバリエーションはけして多くはないのも原因だと思います
味の説明なんて無くたって極端に好みから外れたり、思っていたものと違う物が出てくることは多くなかったんでしょう
時代は流れ今はその気になればどこの蔵のどんな酒でも手に入れることが出来るようになりました
しかし依然として味の説明をする文化がない日本酒業界においてPRするポイントは蔵の歴史や新しいスタイルの蔵人となってきています
相変わらず味の説明は無いですがその日本酒を買おうと思うきっかけはそれでいい時代になってきたんでしょうね
そもそも美味しくない日本酒さすがにもう無いでしょうし、日本酒を飲みたい気分だから日本酒を頼むのだとすれば概ね希望通りのものが出てくるわけです
というわけで時代は一周して味の説明がない方法で日本酒を売る時代がやってきたわけです
大手メーカーのビールCMが味の説明はなしでどんな場所で飲んでいるか、どんなシチュエーションで飲んでいるかしか言わないのと同じです
ではクラフトビールはどうなんでしょう?
研究費(ビール代)として有効に使わせていただきます^^