分かれば分かるほど分からないことを分かった人が本当にモノの分かった人
仏教で説かれる煩悩の一つに“愚痴(ぐち)”というものがあります。
愚痴をこぼす、というあの愚痴です。おろかの“愚”と知識の“知”に病いだれがかかった“痴”と書きますが、まさに知識が病にかかり愚かな状態になることです。
例えば、旅行に出かけようと外に出ると雨が降っていた。「なんで、旅行に行く日に雨が降るねん」と、愚痴をこぼします。
頭では、雨はこちらの都合では降ったり止んだりしないことは分かっているのですが、心では腹が立っている。
自分の気に入らないことが起こると私たちの知識は一瞬にして、病にかかり愚かな心となってしまいます。そうなると、イライラと腹を立てる心が起こる。これを瞋恚(しんに)といい、更に、イライラと腹を立てると自分にとって快いものに執着する心が起こります。やけ食いというのも正にそうでしょう。これを貪欲(とんよく)と言います。
愚痴・瞋恚・貪欲を仏教では三毒煩悩とよび、私たちの心を毒する根本煩悩と説きます。
お釈迦様はこの三毒に侵されたことを無明(むみょう)と、明かりのない姿だと言われました。暗闇を注意もせず歩いていると必ず何かにぶつかり怪我をするでしょう。私たちはまさにその暗闇を注意もせず歩いているとお釈迦様は言われたのです。
そして、その暗闇を歩くときに持つ明かりとして説かれたのが仏教なのです。
「分からない」を分かる
1949年に日本人で初めてノーベル物理学賞を受賞された湯川秀樹博士と京都にある浄土宗総本山知恩院というお寺のご門主猊下(住職)が対談されたときの話です。
知恩院のご門主猊下が
「博士、あなたのような科学の第一人者と言われる方は
どんなことでも ご存知でしょう」
と尋ねられたそうです。すると湯川博士は
「私が知っていることは海の水をコップで汲んだほどに過ぎませんよ。
分からいことばかりです」
と答えられたそうです。
何でもそうですが、初めてやる時のあのドキドキ感は、2回目にはもう味わうことはできません。例えばTVゲームなどをしていて、ボスキャラ的な敵が現れたとき「やべぇー」とドキドキしたことを思い出します。
実は、分からない事が私たちの生活をドキドキと楽しくさせてくれているのかも知れませんね。
日常、分からないことが出てきてドキドキを楽しめれば良いのですが、こんな経験はないですか。今度はゲームをしていて、敵をなかなか倒せなくてイライラする(ちなみに私は、イライラして何度もコントローラーを投げたことがあります)。宿題で分からないところが出てくるとイライラしてペンも投げ出してします。
なぜ楽しいはずの分からないことがイライラとなってしまうのでしょう。
ドキドキとイライラの正体
先ほどの愚痴の例え話を思い出してみましょう。
旅行の日に雨が降ったら「なんで、雨が降るねん」と愚痴をこぼす。これは、雨が降らないという段取りを自分の中でしていたからはないでしょうか。しかし、その段取り通りとならなかったから、イライラの心が出てきたのではないでしょうか。
雨が降ることもあるにもかかわらず、自分の中で晴れるという勝手な段取りをしていたのです。ゲームで敵が倒せないくてイライラしているのも同じだと思います。自分の中で倒す段取りをしているのですが・・・指が思うように動かないとか、敵が思った通りに動かなかったとか・・・段取り通り(思い通り)にいかなかったのですね。
ではなぜ、自分の中で勝手に段取りをつけていたのでしょう。
これは自分の中の“この様にありたい”という心が強すぎるのです。
これを貪欲と言っています。“貪”は、“むさぼり”と読みますが、まさに、自分の欲求が強すぎる状態が貪欲です。
日常の大切な考え方
私たちの宗派、浄土宗でも、まず自分の状態を知ることを大切にしています。愚にかえる。分からないこともあるし、出来ないこともあるし、自分はまだまだと気づくことが大切なのです。そして正しく出来ない自分を見つめて、次の行動へと変えていく。
正しくの“正”という感じを分解すると、“一”いちという漢字に“止”とまるという漢字を使っています。一度立ち止まる。ということも大切なのだと思います。ボーっとしてみるのも良いでしょうし、瞑想してみるのもいいではないでしょうか。
最後に、私からのおススメ
私のおススメはもちろん、仏様と向き合うです!仏像と向き合う事です。(出来ればお寺という空間で向き合えると最高です!)
1人で向き合うのも良いのですが、仏様と向き合うと自分の考えや思いが見透かされている感じがして、素直に自分と向き合えるからです。人を超越した存在と向き合うからこそ感じることが出来るのだと私は思っています。
体験してみないと得ることも出来ない感覚ですので、ぜひお近くのお寺を訪ねてみて下さい。お寺はコンビニより数が多いそうなので、皆様の近くに必ずお寺はありますよ。