見出し画像

誰でもできる! 世界の将来人口を考察してみた

 2024年7月11日に国連より、世界の将来人口推計(2024年版)が発表されたので、私の趣味世界各国の1950年~2100年の過去から将来の人口まで可視化できるダッシュボードの作成をしました。
 さらに、作成したダッシュボードを用いて、素人ながらデータ分析による、世界各国の将来人口がどうなるかnote記事にしてみました。ダッシュボード使えば、誰でもできます。

1.なんでこんなことやったのか

 最近、私の地元、静岡市でも若い外国人の方々が急激に増えました。私の生活圏だと自転車を乗っている多くの方が若い外国出身の方。
 周辺のコンビニの店員さんの多くは外国出身の方(子供達に凄く優しい)で、東南アジア出身の方かなと思ったら、最近はネパール出身の方が多いそう。市役所の住民票窓口でも年度切替時は、多くの外国出身の方(特にネパール出身の方)が来られ、外国出身の方の転入により人口減少を緩やかにしていると聞きました。
 私、つい最近まで自治体職員で、趣味で静岡市の小学校別の人口を可視化する取り組みをしてきたのですが、自分の生活圏でこれだけ外国人が増えると、地域の将来を考えるには、実はグローバルな人の動きが重要と思うようになりました。そこで、自治体の人口把握とは別に、世界の将来人口を可視化できるダッシュボードの作成しました。
 やっぱり、日本の人口減少を目にするので、自分の子供の世代はどうなる? 日本の国際的な立ち位置はどうなる? と気になります。
 ちなみに、ネパールは国外への人口移動が2022年から顕著に多くなっていて、国外への移住大国になっています。人口規模は世界51位なのに、国外転出・2022年は世界6位です(入国超過がマイナス)。こんなこともダッシュボードで簡単にわかります。移住?ですが、日本は外国人の受け入れが2023年に329,535人となっています。これは移住の受入れ大国と言っていいんでしょうか? 

表1.世界の国外転出(入国超過数マイナス)の上位10ヵ国 ・2023年はおそらく推計値


2.ダッシュボードで何ができるか

 と言うことで、趣味で誰もが無料で利用できる、世界の将来人口推計ダッシュボード(2024年版)を作りました。利用はこちらのURLです。

 ダッシュボードで分かることはこんなことです。世界でも、アジアなどの地域でも、国ごとでも過去と将来の人口が分かります。ダッシュボードは無料で使えるGoogleのLooker Studioというもので作っています。

  • 1ページ目 2024年以降の将来人口推計

  • 2ページ目 1950年-2100年の5歳別人口ピラミッド

  • 3ページ目 1950年-2100年の将来人口推計

  • 4ページ目 1950年-2100年の将来人口順位

  • 5ページ目 1950年-2100年の将来死亡率順位

 作成にあたり、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計担当者様の助言をいただきました。ありがとうございました。
 なお、ダッシュボードには国連のWorld Population Prospects 2024のデータを利用しています。国連のデータはオープンデータ、誰でも自由に利用できるデータで提供されています。

United Nations "World Population Prospects 2024" : Demographic indicators by region, subregion and country, annually for 1950-2100
Copyright © 2024 by United Nations CC BY 3.0​

United Nations https://population.un.org/wpp/
 

3.世界の将来人口のピークは103億人!

 まず、世界人口のピークについて、ダッシュボードより考察します。
 世界の総人口は1950年の24.7億人から2020年には78.5億人と70年間で約3倍強の増加しており、将来は2084年をピークに約103億人まで増加すると予測されています。この予測は、国連の標準的な推計値である中位推計(Medium variant)※1で、凄く一般的な予測と思ってください。

図1.世界の総人口の推移 1950年-2100年 ・ダッシュボードより

 ピークの2084年は、2023年からさらに22.3億人増える予測なんです。人口減少が課題になっている国が多い中、まだまだ、世界の人口は増えていく、凄いですね。ただ、人口構成が大きく変わっていき、世界は図2のように高齢化が進んでいくと推計されています。

図2.5歳別 世界人口ピラミッド ※ダッシュボードより

 参考までに、総人口の上位10ヵ国の推移を表2に示してみました。

表2.世界の総人口上位10ヵ国の推移 ※2050年以降は中位推計

 この国連の世界将来人口推計は2~3年ごとの発表です。前回は2022年版で、ピークが2086年で約104.3億人でした。今回の2024年版は前回よりピークが2年前倒し、人口がピークで1.4億人少なく推計されています。
 10年前の推計との比較してもピークに達する時期が早くなっており、その大きな要因として、人口規模の大きい国々、特に中国において近年出生率が予測より下回っていることが要因のひとつであると言われています。

4.出生率で考えてみた、世界の将来人口

 では、今後の将来人口はどうなるのか、2022年版と2024年版の合計特殊出生率の比較で考察してみます。合計特殊出生率(以降、「出生率」という)は1人の女性が生涯に産む子供の平均的な人数のことです。

図3.世界の合計特殊出生率 国連2022年版と2024年版の比較

 今回、2022年から2052年までの30年間で出生率を比較しましたが、2024年版の中位推計(赤線)は2022年版の中位推計(青線)より総じて低くなっています。2年前の推計より低くなっているんですね。
 2022年だけの出生率で比べると、2024年版の中位推計は2022年版より0.04ポイント低くなっています。国連の出生率は、確立的手法で推計値を80%の予測で入る値、95%の予測で入る値を公表しており、2024年版の2022年の出生率は2022年版の80%の予測値の下限値(濃水色線)に近いです。
 つまり、2年前の想定より、世界の赤ちゃんの出生数が、実際は少なかったことが分かります。世界では一生涯に二人の子供が標準に見えます。

 ちなみに、出生率が1.4を下回る超低出生※3の国々の出生率は2023年を最低として、その後は緩やかに回復する見込みが多いのですが、個人的には出生率は中位推計(赤線)と80%予測値の下限値(濃水色線)の間、つまり、将来は「推計よりも出生数が低くなる」が、世界的なトレンドになる可能性があるのではと勝手に想定しています。コロナで減少した出生数が持ち直すかがポイントになりそうです。

表3.世界の合計特殊出生率上位10ヵ国の推移 ※中位推計

 なお、将来の出生率の上位10ヵ国の推移を表3に示してみました。出生率が人口を維持するのに必要な水準※4である2.1を上回る国は、2023年では107ヵ国、2060年には61ヵ国、2100年には14ヵ国しかないと推計されています。世界的には女性ひとりが産む子供の人数は少なくなる方向で、一度下がった出生率を回復させるには相当な対応が必要であることが、世界的なトレンドとして言えそうです。
 このことは、「人口がすでにピークを過ぎた国々の女性の半数が、2030年代後半には、自然な方法で子供を持つことが困難な年齢に達するため、出生率上昇を目的とする施策の影響が低下することが見込まれる」との、国連が指摘していることからもわかります。

4.世界の人口増減に影響を与える社会現象

 ちなみに、世界的な人口増減に影響を与える社会現象はあるのでしょうか。出生数と死亡数で見てみると、大きく変動しているのが1960年付近と2020年~2021年。1960年付近は世界人口の2割強を占めていた中国の出生数、死亡数が世界的に影響が出ています。2020年~2021年は世界的なパンデミックでしたので、人口動態にも大きな影響を与えたことがわかります。
 1960年付近に比べて、現在は世界の人口が爆発的に増えたため、世界的なパンデミックのような事象でないと、世界規模では出生数・死亡数への影響は見えにくいのかもしれません。特に1地域の紛争や戦争は難民としての移住人口に表れやすいので、地域や国ごとに見る必要がありそうです。 

図4.1950年から2023年の世界の出生数と死亡数の推移 ダッシュボードより

 世界の出生数は1960年以降増加していき、1990年付近から一時減少し、1998年から2012年に増加しながら、2013年以降は減少に転じています。
 将来ですが、中位推計ではコロナ後から2040年付近まで緩やかに増加に転じ、それ以降は減少する想定になっています。再度になりますが、これは、人口規模が大きく「超低出生」※3の国々の出生率が回復傾向になる国連の推計が影響している思います。個人的には本当に回復するの?ですが。

5.将来の世界人口はどうなるんだろう? 個人的考察

 今までの話から、世界の総人口のピークの年は推計より前倒しになり、総人口のピークは推計より少なくなる方向、そして、人口減少が進む国々はより人口減少が顕著になるのではと想定しています。
 ただし、今後も爆発的に人口が増える地域があり、人口増が進む国々の課題もありそうです。ここ数十年は世界の総人口は膨張をしていく推計ですので。でも、自分の中では100億人と言われても、想像できません。
 世界では人口増の課題と、人口減少の課題、それぞれに向き合っていかなくてはならないようです。日本は人口減少が課題になるので、この後は、人口減少を話題の中心に据えていこうと思います。

 人口減少の観点では、死亡数が出生数を上回る自然減の国において、今後は、移民が人口規模を維持するには重要な解決策※5となりそうです。現在、移民による国際送金額は2022年に8,310億ドルとなるなど、国際的な人の移動は人材開発と経済発展に大きな影響を持っているそうです。
 ただ、世界全体の人口構成が変わっていく中、移民受け入れを前提とした人口増加・人口維持政策では、移民の中心となる若い世代が国外に出る人数の限界がきて、いずれ難しくなるのではと考えています。この話は、その後のnoteで話題にしようと思います。
 あくまで個人的感想なので、将来の結果を見ないとですが(汗)。

6.最後に

 データをダッシュボードで見える化すると、素人ながらでもこんな考察が語れます。誰でも自由に語れます。
 文章が長くなりすぎました。その2に続きます。その2はこんなことを考察する予定です。地域はアジアとかアフリカとかの単位です。
・世界の地域の将来人口を考察してみた

長文にも関わらず読破いただき、ありがとうございました。
その2も見ていただければ幸いです。

※1 国連の出生率の予測シナリオの定義  
   https://population.un.org/wpp/DefinitionOfProjectionScenarios/
※2 合計特殊出生率 1人の女性が生涯に産む子供の平均的な人数
  15歳~49歳の女性(再生産年齢の女性)が生んだ子供の数を基に算出
※3 超低出生 合計特殊出生率が1.4を下回る。
※4 人口置換水準 出生率が長期的に人口を一定規模を維持するのに必要な水準。日本では概ね2.07、世界では概ね2.1。
※5 国際移住機関(IOM)2024年版世界移住報告書を参照  
   https://worldmigrationreport.iom.int/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?