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『見習い神様、願いを叶えて。』#10 フォークダンス

【前回までのあらすじ】
私は芳高くんに片思い中の高校2年生、吉沢みゆき。花屋敷ゆりは私の親友。私の恋を叶えてやる!と神様見習いシンが現れた。シンは私にしか見えないみたい。
(全20話 恋愛×ファンタジー 毎日1話ずつ更新します)

「次の授業で集団演目を決めるから、みんな候補を考えておくように。」と、体育の先生が言っていた。

 もうすぐ体育祭の時期がやってくる。
 港南東高校では、体育や美術などの副教科は合同授業となっている。A,B,C組とD,E組に分けられている。
 例にもれず、体育祭の集団演目も私たちE組はD組と合同でやることになる。

「集団演目ねぇ、何がいいかなぁ。」
 私はシンに向かってつぶやいた。
「D組と合同ってことは、芳高と一緒じゃないか。みゆき、チャンス到来だな!」
 そうなのだ。クラスが離れた今となっては、体育は芳高くんを眺められるひとときのオアシスのような授業なのだ。
 体育祭もまた然り!

「俺に名案がある!」
 ごくり。私は期待に胸を膨らませた。きっと私の周りにはキラキラのエフェクトが出ていただろう。

「ズバリ!集団演目はフォークダンスに決まりだ!!」

「フォークダンスってあれだよね?男女が円になって手をつないでやる、あれだよね!?シン、最高の案だよ!さすがだよー!」
 私が興奮気味に褒めると、シンは「えっへん」という顔をした。

「曲は、有名どころでいくとマイムマイムとか、オクラホマミキサーとかかな?」
 私は思いついた曲名を挙げてみた。

「マイムマイム?」
 シンが両手を空中の壁を触るかのようにペタペタさせる。
「いや、それはパントマイム。」

 今度は「ちょっと待ってて」と言って下の冷蔵庫からオクラを持ち出してきて、ミキサーにかける仕草をする。
「いや、丁寧なボケだね!?オクラがねーばねば、じゃないよ!」
 私は思わずツッコんでしまった。

 あはははは。とシンはお腹を抱えて笑った。


「で、曲だっけ?ちょっと調べてみようぜ。」
 シンと私はスマホで「マイムマイム」「オクラホマミキサー」と検索した。

「これは…オクラホマミキサー一択じゃないか?」

 マイムマイムはずっと同じ隣の人と手を繋いで躍っているだけだった。一方、オクラホマミキサーは男子との密着度が半端なく、曲の流れとともにパートナーの男子が次々変わっていく踊りだった。

「シン…これはやばいよ。私これ平気な顔して提案できるかな?」
「思った以上の密着度だな。みゆき顏が赤いぞ。」
「シンも赤いよ。」
「ま、まぁ、高校の体育祭では結構一般的なやつみたいだし、そんなに恥ずかしがることないんじゃないか?平気な顏で提案してみろよ。」
「そうかな…。でもこんなチャンス滅多にないよね。」
「そうだぞ!願いを叶えるのは、半分は努力だって言っただろ。今こそ根性みせるときだ!」
「わかった!やったろうじゃないの!」


 とは言ったものの…


「J-POPダンス、ソーラン節、ほかに候補はないかー?」
 体育の先生がホワイトボードに候補を書き出している。

「ほら、みゆき、手挙げろよ。」
 シンが私の横腹をつついてくる。ぐずぐずしていると、業を煮やしたシンが私の腕を強引に持ち上げた。

「お、吉沢。何かあるかー?」
 みんなの視線が私に集まる。自分の顔が真っ赤になっていくのが分かった。けど、もう言うしかない!

「フォークダンスのオクラホマミキサーがいいと思います。J-POPダンスや、ソーラン節よりかは動きもシンプルで難しくないかなって…。」
 最後に言い訳じみた言葉をつけてしまった。 

「よし、じゃあこの三つで投票するぞ。」
 先生もみんなも特に何の反応もするでもなく、サラッと受け入れられた。
 オクラホマミキサーを変な目で見ていたのは自分だけだったと、違う意味で恥ずかしくなった。

 最後の言い訳じみた「動きがシンプルで難しくない」が効いたのか、はたまた私のような好きな人と手を繋ぎたい動機の男女の票を得たのか、投票は断トツでオクラホマミキサーに決定した。

「やったぜ!!」
 シンと顔を見合わせて喜んだ。


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城之内あやめ
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