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お客様に寄り添うって何ですか?【高2女子から学んだ接客の極意】
女性用風俗のセラピスト(キャスト)として働いていると、様々な悩みを抱えたお客様がいらっしゃいます。
母親としてではなくもう一度女性として扱われたい、愚痴を聞いてほしい、寂しい、優しく抱き締めてほしい、ママとしての頑張りを肯定してほしい、仕事でのストレス解消、癒し、セックスレス、不感症、性交痛、男性経験が無い…etc
目の前のお客様の悩みが何なのかを、なるべく早く察して、お客様に寄り添い、解決できるよう努めることが求められるのですが、
セラピストとしてデビューしたばかりの頃、この「お客様に寄り添うとは何か?」をよく考えていました。
というのも、本当によく聞くんですよ。
「お客様に寄り添って、癒します」
なんて文言を。
もちろんこれは決して悪いことではありませんが、どこか具体性に欠けていて、当時の僕には結局どういうことなのかよくわからなかったのです。
自分の中で腹落ちせず、何をすればいいのか、どうすればお客様は喜んでくれるのか、わからなかった。
お客様に寄り添うって何?
そんな時にふと思い出し、明かりを灯してくれたのが、僕の初めてのアルバイト先で起きたある出来事でした。
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大学生の頃、僕は本屋さんでアルバイトをしていました。
上司にKさんという方がいたのですが、あるとき、Kさんの娘さん(当時高校1年生)がアルバイトとして入ってきました。
先輩である僕が仕事を教えていくことになったのですが、
この娘さんは(ほとんどの人が名字にさん付けで呼ばれる中、みんなから"ありぽん"と呼ばれていました)、先輩だろうが店長だろうが、関係なしの当然のタメ口。
辛辣な店長にも最初からタメ口で話しているのを見て、「あぁ高校生だなぁ」と思いながら、ありぽんを見守っていたのですが、とても素直で応援したくなるような子でした。
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ある日、ありぽんのもとに耳の聞こえないお客様がいらっしゃいました。
何とか身振り手振りで接客をし、お会計をすることになったのですが、
最後の最後に、
「ポイントカード持っていますか?」
がどうしても伝わらなかったのです。
結局、うやむやになってしまい、お金だけお支払いしていただいたのですが、そのことをとても悔いているようでした。
なんとありぽんはその晩すぐに手話の本を読み、そのお客様が次いつ来てもいいように、「ポイントカード持っていますか?」この一言を伝えられるよう手話を覚えたのです。
次いつ来るかもわからないような人に、なんだったらもう来ないかもしれないのに、です。
すると、来たんですよ。その耳の聞こえないお客様が。また次の週に。
ありぽんは初めて手話をしました。
その手話がうまく伝わったのかどうかは僕には知り得ませんでしたが、お客様が満面の笑みでポイントカードを渡していることはすぐにわかりました。
それがなんだか僕もすごく嬉しかった。とてもあたたかい気持ちになれたのです。
この素晴らしい接客をしたのはまだ高校2年生の女の子でした。
結局、僕が辞めるまで一度も敬語を使われたことがなかったのですが、それでも
「お客様に寄り添うって何だろう?」と考える時、僕がいつも最初に思い出すのはこのエピソードなのです。
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