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ドラマのこんな楽しみ方をしている人もいる

わたしはちいさなときからテレビっ子だ。

一番最初のドラマの記憶は朝ドラ「春よ、来い。」。ストーリーは脚本家・橋田壽賀子さんの半生。

1994年放送のドラマなので、当時わたしは8歳。ドラマの内容はハッキリとは覚えていないのだが、主題歌をよく口ずさんでいて、給食の時間に口ずさんだらクラスの男子に笑われたことが忘れられない。

次の記憶は、「味いちもんめ」。板前見習い役の中居くんを観るのが楽しみだった。このドラマも、大ヒットした大黒摩季さんの「ら・ら・ら」と一緒にしっかりと記憶に残っている。当時、ドラマを観ていたときの家族の姿も、ぼんやりと思い出せるから不思議だ。

次の記憶は、1996年から放送開始された「ナースのお仕事シリーズ」。ドジな新米ナース・朝倉いずみが主人公の人気ドラマで、火曜10時という遅い時間だったけれど、毎週欠かさず観ていた。

「あさくら~!」「せんぱ~い!」このやり取りが大好きだった。いずみちゃんが可愛くて底抜けに明るくて、ドジっ子ぶりを観るたび元気をもらっていた。

学校で嫌な事があっても、いずみちゃんと先輩のやり取りを見れば元気が出た。それくらい、わたしにとって元気の出る・心の栄養になるドラマだった。

ほかにも、「みにくいアヒルの子」とか「イグアナの娘」とか、「セカンド・チャンス」とか「大好き!五つ子」とか。主題歌と一緒に映像が思い出され、見ていた当時の自分の姿がぼんやりと浮かび上がってくる。

中学生のときには、「ちゅらさん」「3年B組金八先生」「キッズ・ウオー」とか。

学校が楽しいときも、楽しくないときも、どんなときでもドラマの世界に入り込めば、また別の世界にいるような気持ちになって。

どんなことがあっても、来週も観るために、また一週間がんばろうと思えた。ドラマにはそんな不思議なパワーがあるのだ。

大好きなドラマ鑑賞だが、20代のころはほとんど観なくなっていた。仕事が終わったら疲れ果てて早々と寝る毎日を送っていたからだ。

30代になり、子育てが始まってからも忙しくてなかなか観れなくて、気づけば気になるドラマが終わってしまっていることもよくあった。

けれど、あるとき、子どもが寝静まったあとに、何の気なしにテレビを入れてみると、気になっていたドラマがやっていて、久しぶりに観てみようかなという気持ちになった。

でも・・・聞き取れなかった。

おかしいな。子どもの頃は、字幕なんてつけなくても聞き取れていたよね。おかしいな。

そうか。考えないようにしていたけれど、20代のときに観なかった理由は、疲れていたからだけじゃなかったんだ。

ドラマをつけても、聞き取れないことがあったから、「べつにいっか~」ってリモコンを置いて、頑張って観るほどでもないし、って諦めて、ドラマから離れていっていたんだ。

気づいたとき。なんてもったいないことをしたんだろうと思った。

だって、わたしは小さい時から好きだったことを諦めていたのだから。

本を読んだり、ドラマを観たり、映画を観たり、物語の世界に入り込むことが好きだったのに。

そんなことを考えながら、ぼーっとテレビ画面を眺めた。

目の前で、好きな俳優さんが演技をしている。ところどころ、聞き取れるものの聞き取れないときがある。

観たい。

観たい。

観たいという気持ちが沸きあがってきて、どうしょうもなくなってきた。わたしは慌てて設定画面で字幕を探す。

「字幕あった!」

よし。字幕を入れて、ドラマを観始めた。

テレビの一番前。聞き取れなかったらすかさず字幕を目で追い、サッと映像に顔を移す。この繰り返しを1時間。

なかなか疲れる。肩が凝る。目が疲れる。頭が痛い。

でも…

楽しい!!!!

俳優さんの素敵な声だって聞こえるし、聞き取れないときもあるけれど、字幕でカバーできてる。物語のこのワクワク感。ドキドキ感。たまらない。

この楽しさを得るためなら、多少疲れたって頑張って観たい。字幕を目で追って、映像も目で追って、癒されたいんだ、楽しみたいんだ、観たいんだ。

子どもの頃は、こんなことしなくても聞き取れていたんだなぁ…ってせつなくもなるけど、これが今のわたしなのだから、受け止めて楽しむしかない。楽しまないと損だ。

その日から、わたしは再びテレビっ子となった。

字幕と映像を素早く目で追うスキルが身についたのか、洋画だって韓流ドラマ「愛の不時着」だって元の音声のまま楽しむ。吹き替えではなく、そのままの音声で楽しみたいのだ。

ときどき忙しさや体調不良があるときはドラマから離れることもあるけれど。観たいときには観れるようになった。

そしてこの冬は、ドラマが豊作。
「100万回言えばよかった」「罠の戦争」「ブラッシュアップライフ」面白いドラマが多くて、夜の楽しみになっている。

字幕を観ながらドラマを観るって結構しんどい。疲れる。

だけど、わたしは夢中になって観てしまう。観ると元気がわいてくる。普段の生活をもっと頑張ろうと思える。

疲れもふっとぶほど面白いドラマなら、字幕と映像を交互に観ながらのハードなドラマ鑑賞だってへっちゃらなのだ。

それに、今は見逃し配信にも字幕がつくようになってきた。

嬉しい!

字幕はわたしにとって欠かせないもの。子どもの時は、字幕なしで観れたのにって悲観したくなるときもあるけど、今は字幕があるからこそドラマを楽しめるのだから、この幸せをかみしめよう。

わたしはこれからも、わずかな視力でも、わずかな聴力でも、ちょっと工夫しないと以前と同じようにはできなくても、自分の心に栄養を与える楽しむということを大切にしてゆきたい。






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