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「こころがやっぱり好きだって話」2023年11月16日の日記

愛する神保町シアターで、「こころ」の映画を観た。
夏目漱石の。
しかも監督は市川崑。犬神家の一族やビルマの竪琴などの監督だ。僕の好きな映画監督の一人でもある。

高校の教科書で初めて読んだ「こころ」、一回目はあまり理解できなかった。2回目に読んでみて、あぁ、と合点がいったのを覚えている。
友達とKと先生について語ったのも鮮明に覚えている。
そのくらい、この作品が好きだ。
純文学として最も理想の形をしているかもしれない、と偉そうなことを言ってみる。
「こころ」は思春期の僕の心に大きな影響を与えたと思う。
好きなセリフ、文章を列挙していこう。

「私は死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている。あなたはその一人になれますか。なってくれますか。」

「貴方は死という事実をまだ真面目に考えた事がありませんね」

「然し……然し君、恋は罪悪ですよ」

「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」

「しかし私のもっとも痛切に感じたのは、最後に墨の余りで書き添えたらしく見える、もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろうという意味の文句でした。」

僕はKが凄く好きだ。ぱっと見ではお嬢さんを取った先生が卑怯に見えるけれど、罪悪感を一生ぬぐえない呪いとするために自ら命を絶ったKが好きだ。
もうそこまでくると一周回って愛なんじゃないかと思うような覚悟と決意。わざと何も触れなかった遺書。なのに最後の最後に出てしまった切実な思い。
Kと先生はもしお嬢さんに出会っていなければ2人でずっと良い友達だったんじゃないかなと思う。でも、結局いつかはこうなっていたのかもしれない。

夏目漱石のすごいところは、ドロドロな人間模様をこんなに綺麗で爽やかなものに仕上げられるところだ。
文章力はもちろん、登場人物たちの爽やかさが逸脱している。
いや、爽やかな人間たちではないのだけれど、描写で爽やかに見える。
でも、友達にそれを言ったら全然爽やかだと思わなかったと言われたので、人によって誤差があるみたい。まあ、僕は僕の感性を信じているから、爽やかだなあと思う。

映画館でも泣いてしまった。映像化された「こころ」をみるのは初めてだったからなおさら染み入ってくる感じがして、新鮮で良かったなあと思う。
人のあまり多くない映画館でのんびり映画を観るのが好きなので良い鑑賞体験でもあった。

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鬼堂廻
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