【小説】情報の出し方の基本
小説を書くときに、主人公の見た目や風景、アイテムの機能などの作品世界の情報をどのように出して読者に伝えていくかは、どんなジャンルの作家でも悩むところだと思います。
今回は、小説における情報の出し方について書いていきます。
情報の出し方で重要なのは、タイミング。
「読者がストーリーを理解するのに必要な情報を、必要なタイミングで、必要な分だけ」
これが小説における情報の出し方の基本になります。
例えば、小説の冒頭、主人公が1人でどこかの道を歩いているシーンから小説を書き始める場合。読者がそのシーンをイメージするために必要な情報は主人公の見た目や様子です。
疲れて今にも倒れそうなのか。元気で希望に満ちた様子なのか。
そもそも主人公はどこを、どこにある道を、どこに向かう道を歩いているのか。
季節や時間に関する情報も必要になります。
昼なのか夜なのか。暑いのか、寒いのか。晴れているのか、今にも雨が降り出しそうな暗い空なのか。
などなど、読者が頭のなかに主人公が歩いている様子をイメージできるようになるために必要な情報を出していきます。
逆に、主人公の家族構成などの情報はここで出す必要はありません。情報としてストーリーのなかでいずれは出す必要があるでしょうが、出すタイミングはこの冒頭のシーンではありません。家族の情報がなくても、読者は主人公の様子をイメージすることができるからです。
参考 『ハリーポッターと賢者の石』
具体例として『ハリーポッター』、商業作品がどのように情報を出しているかを見てみましょう。
ハリーは物語開始時点で自分が魔法使いだと言うことを知りません。魔法の世界のことを何も知らずに過ごしてきました。そして、それは読者も同じです。
ですので、読者に魔法の世界のイメージを持ってもらうために、ハリーポッターで描かれていくことになる魔法世界の様子を説明していく必要があります。
しかし魔法の世界の情報を一気に全部出してしまうと読者の理解が追いつかずに混乱するだけなので、ハリー・ポッターではやはり必要な情報を良いタイミングで必要な分だけ出しています。
ハリーはハグリットと出会い、初めに自分が魔法使いであると知らされます。次にハグリットがハリーに伝えるのは、両親の死の真相とヴォルデモートについてです。
ハリーの両親はヴォルデモートに殺されているため、両親の話をするのであればヴォルデモートの話をする必要があります。ヴォルデモートに関する情報は、このタイミングで出すのがベストなのです。
4章で作者が出している魔法世界の情報は、あとはホグワーツに関する情報を少しだけです。読者がストーリーを理解するために必要な分だけの情報を出しています。情報を多くを出しすぎて読者を混乱させる書き方はしていません。
次の5章でハリーとハグリットは、ダイアゴン横丁へハリーの学用品を買いに行きます。その前にハリーたちは魔法世界のお金に関する話をします。
「魔法世界にもお金があり、銀行がある」という情報を読者に説明するには、ここがベストなタイミングと思います。
このあとでダイアゴン横丁で買い物をするシーンを書くのにお金に関する説明がなければ、読者は(お金はどうしたのだろう?)と疑問を感じてしまうでしょう。
また前の4章、ハリーが両親の死の真相を知ったタイミングで、ハグリットが「両親の遺産があるのでお金の心配はいらない。グリンゴッツという銀行がある」とハリーに説明するのは少し唐突です。
魔法の世界のことを何も知らないハリーにとって重要な情報は、自分が魔法使いであること。ホグワーツという魔法使いの学校があること。両親はヴォルデモートに殺されたこと。この3つです。これらに比べればお金や銀行の話は些細なことです。ですのでその情報を出すタイミングは4章ではないのです。
このように『ハリー・ポッター』は、情報の出し方がとても上手な作品です。
まとめ
読者に自分の小説を楽しんでもらうためには、情報の出し方が課題となります。
主人公が今いる場所の情報や、主人公の見た目の情報。
これらは作者の頭にはイメージがあるので、つい説明が少なくなりがちです。しかしそのイメージは読者に伝わらなければ意味がありません。丁寧に書くことを意識して情報を出すようにしましょう。
小説における情報の出し方の基本は、「読者がストーリーを理解するのに必要な情報を、必要なタイミングで、必要な分だけ」です。タイミングが重要になります。
このタイミングを自分で見極められるようになるのが難しいところです。
商業作品を読み込んで、情報の出し方のお手本としましょう。