改めて整理したい「インサイト」について
松本が「JMAインサイトスクール」に参加して聞いた話をテキスト化します。
★インサイトを捉えるのはなぜ重要なのか?
クライアントの「課題」を解決するのに、手段は問わない。
課題を解決できていれば手段は何だって良いはず。
しかし、その「課題」を捉えるのが難しい。
⇒ほとんどの場合、みんな何かになんとなく困っているけど、
何に、なぜ困っているのか答えられないから。
自分の"見えない欲望"に、見えないからこそ、自分は答えられない。
⇒この「見えない欲望」こそインサイトである。
それを見せられたり、言葉で表現されたり、姿・形になれば、
「そうそう、それがやりたかった!」⇒これが金になる。
あるんだけど表現できないデータは、分析しようが無い。
⇒例えばAmazonは検索できる本に出会えるけど、
レコメンド機能だけでは知らない本に出会う確率は低い。
★インサイトを言葉で表現する
結婚するための行動(お見合いなど)に対するネガティブなイメージが「婚活」と名前が付くことでネガティブ度が下がった。
「意味付け」とは、氷山の見えない部分を言い表す行為である。
つまり言葉とは「思考の節約」であり、「照らすものと照らさないものへの線引き」である。
ただし、何も無い状態で意味付け、言葉の創造はできたとしても続かない。
FACTが無いから。ラベルが付けば言語化できる。
★インサイトを見つける方法
企業側「どうしてこの商品は買わないんですか?」
消費者「(う~ん?そういえばなんでだろ?」
消費者「(改めて問われると説明できないな)」
消費者「●●だったから…?」
企業側「●●を辞めます!」
消費者「そうじゃないんだよな…」
消費者は自分の行動の理由をすべて合理的に説明できるわけではない。
非言語的な状況を質問しても意味がない。
⇒だからインサイトを捉えるのが重要。
まず、人間を見に行く。
⇒何に価値を感じているか俯瞰する。
そして今、何に不満を抱いているか戻ってくる。
⇒これがビジネス上のオポチュニティになる。
具体的には。
メガ事象、マイクロ事象、新奇(個人)事象を集めに行く。
⇒メガ事象:時系列で説明できる変化事象。
⇒マイクロ事象:群体的に発生している事象。
⇒個人事象:n=1の事象。
すべての人がインサイトを言語化できていない、とは限らない。
⇒要はマーケターが説明できないだけで、
「これ面白いよね」「これいいよね」という人はいくらでもいる。
だいたい、マイクロ事象、個人事象として現れる。
筋の良いオポチュニティを、心理投影法で言語化する。
⇒写真など使うと良いかも。
コトラーは「インサイトをベースにしたSTPが必要」と言った。
⇒インサイトの無いセグメント、ターゲティングはピンボケ。
※この辺は、登壇した大松さんへのインタビューが参考になるかも。
シーン、源泉要因、背景要因、そして情緒の4つを抑えたインサイトが大事。
ファクトに紐付いていない、単なる感情や気持ちだけ。
⇒悪いインサイト
⇒いわゆる「お前がそう思っているだけ」
客観的な事実と、そこから生まれた主観。
これがインサイトを考えるときに重要!
★対談
Q.インサイトによる製品開発とは?
A.
これまで路線の延長か、新しい路線の発見か。
新しい路線は「違和感」を生み、言語化するのが大事。
その「違和感」は現場にベタっと張り付いて定点観測するべし。
※そうでないと空気の違和感に気付けない。
Q.製品のプロほど、インサイトを嫌う?
A.
そんな使い方してくれるな、と感じてしまう。
マキタスポーツさんは「10分経ったどん兵衛が一番旨い!」と言った。
商品開発する側からすれば「いやそれは違う」だけど、日清食品はそれに乗っかったのが凄い。インサイトの発見と活用に優れている。
プロフェッショナルであるほど、目的が明確化して、その他の事実を見落としてしまう。或いは訂正しようとする。それがインサイトを阻害する。
⇒要は「バイアス」にまみれてしまう!
Q.1度発見したインサイトに賞味期限はあるのか?
A.
既存の延長で考えるなら「半年」。外的影響を受ける。
路線を変えるなら「他社が始める」まで長く持つ。
Q.実際の現場では、プロダクトアウトな発想が多い。マーケターがインサイトを用いないインサイトを知りたい。
A.
①プロダクトアウトは発想が簡単だから。既に目に見えるマテリアルがある。
②目に見えないものを形にするので、実証できるのかプレッシャーがある。
③売れたものには必ずインサイトがあるが、インサイトのすべてが必ずヒットするとは限らない。
④答えを急ぐことが問題。マーケティングに答えを求め過ぎ。
Q.ユーザーに答えを聞くのが間違いなら、ヒアリングをする定性調査は無意味なのか?
A.
否定されているのは、顧客に買わない理由をストレートに聞くこと。リサーチデザインの問題。
以上。
筆:松本健太郎(kentaro.matsumoto@decom.org)
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