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視力の補助

黄斑変性症の予防と治療における食事の役割

加齢性黄斑変性症(AMD)は、網膜の特定の場所にある網膜黄斑というものの内部の色素が失われる症状で、中心視野損失を引き起こします。AMDを患った人は視界の中心が見えないのですが、視界の端は見ることができます。それによって、読書や運転は不可能になってしまう場合が多いのです。

黄斑変性症には二種類あります。一つはドライタイプと呼ばれていて、ドルーゼン( 網膜黄斑下、網膜に発生する白〜黄色気味の沈殿で、時間が経つにつれて悪化させたり変形させる物)の発現によって分類されます。ウェットタイプでは、網膜黄斑へ向って新たな血管が伸び、それが破れ出血することで網膜黄斑を傷付けます。

現時点で、黄斑変性症の正確な原因は解明されていません。しかし、研究者たちは、高齢であることなど、いくつか特有のファクターを進行したAMDと関連づけました。この症状は大抵50歳以上の人々に表れます。白色人種、女性、肥満者、そして喫煙歴のある人も、リスクが高いです。

研究者たちは食事と特定の栄養素・植物性化学物質の血中濃度と、黄斑の変性発生を関連づけました。例えば、アミノ酸メチオニンを分解して生成されるホモシステインというアミノ酸があります。ホモシステインの血中濃度が高いとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めます。最近の研究では、AMDを患っている人では血清中のホモシステインが高い傾向にあったといいます。特に研究者たちは、ホモシステイン濃度が標準偏差で1上がるとリスクが33%上がると関連づけました。

ビタミンとミネラル
いくつかのビタミンはAMD発症の可能性を低くするようです。例えばビタミンB12は、AMD発症のリスクに反比例的に関係しています。ビタミンB12に血清中濃度が標準偏差で1上がるごとに、AMD全般で見ると27%、初期AMDで23%、そして末期AMDで34%のリスク減少が見られます。ビタミンB12は肉、牛乳、卵などの動物食品に自然と含まれています。ビタミンが吸収されるよう、胃内の塩酸がB12と食べ物を分離します。歳を重ねるにつれて、胃酸の量が少なくなります。ですから、高齢の方はビタミンB12欠乏のリスクがあります。興味深いのは、高齢の方は自然食品よりもサプリメントや栄養強化食品からの方がより簡単にB12を吸収できるという事です。ですから彼らは、栄養強化シリアルや、豆乳といった製品を選ぶべきでしょう。ベジタリアンの人々も、大豆による肉の代替品、栄養強化アーモンドミルクやエネルギーバーを選ぶと良いかもしれません。

亜鉛というミネラルは黄斑の変性を防ぐ可能性があります。研究者達は進行したAMDを患っている個人では眼中の亜鉛の濃度が減少していることを観察しました。亜鉛は抗酸化剤として働き、医師はドライタイプのAMDを治療するのに使います。亜鉛は牛肉や七面鳥肉に含まれていて、特に牡蛎には多くこのミネラルが含まれています。

その他の栄養素
ルテインとゼアキサンチンは黄斑変性症を防ぐ重要な植物性化学物質だそうです。目の網膜黄斑中でこれらの植物性化学物質濃度は高く、最も高い濃度を保つ範囲ではAMDによる網膜黄斑へのダメージが最も少なかったのです。さらに、1日に50mLのケール抽出液(10mgのルテインと3mgのゼアキサンチンを含む)を4週間摂取した参加者は網膜黄斑色素内により高いキサントフィル濃度を計測しました。
これらの植物性化学物質のレベルは食事に大きく影響されます。ルテインやゼアキサンチンを多く含む食品は例えば、芽キャベツ、ケール、ホウレンソウや、白カブの葉などの緑色の葉野菜です。ブロッコリー、グリーンピース、ズッキーニもこれらの植物性化学物質濃度が高いです。しかし、ケール抽出液治療によってみられた改善は、4週間のウォッシュアウト期間を経て持続しなかったのです。よって、視力へのメリットを継続するには、ルテインとゼアキサンチンを定期的に摂取し続ける必要があるということです。

ルテイン、ゼアキサンチンとオメガ3脂肪酸の組み合わせが有益かもしれません。これらの複合栄養強化食品を与えられたネズミは、コントロール食を与えられたネズミに比べて正常な網膜色素上皮を持ち、よりAMD損傷が少なかったのです。さらに、605人が参加した研究では、研究者たちは多量のオメガ3脂肪酸がAMDのリスクを38%減少させる、と関連付けました。オメガ3脂肪酸は抗炎症作用があるため、この結果は予測できるでしょう。魚類(特に鮭)と、フラックスシードオイル(アマの種子から抽出される乾性油)は、オメガ3脂肪酸を多く含んでいます。加えて、1週間に1~2人前以上の魚を食べることは網膜黄斑症の予防となります。

抗酸化剤と炎症
抗酸化剤は自由分子がもたらす悪い効果を打ち消し、酸化ストレスとそれによるダメージの予防を助けます。ビタミンA,CとEは抗酸化剤ビタミンです。個人は瞳を健康的に保つために十分なビタミンA量が必要です。生成されたビタミンAは牛乳や肉類に含まれています。肝臓やその他の臓器の肉は特にビタミンAを多く含んでいます。ビタミンA の先駆者であるβカロテンは濃緑色野菜、濃黄色果物と、濃黄色野菜に含まれています。カンタロープ、人参そしてケールがβカロテンの良い摂取源です。
炎症反応も、網膜黄斑症を促進させる要素かもしれません。酸化ストレスマーカーであるインタールーキン18はマウスモデルにおいて、網膜色素上皮の損傷を促進します。酸化ストレスによる生産物である自由分子も類似した損傷を起こします。よって、抗酸化剤などの抗炎症栄養素が網膜黄斑症の予防と治療に有益かもしれないということです。

反対にいくつかの栄養素は、病状を悪化させる可能性があります。たとえば、血糖指数(GI)の高い食品などです。GIとは一般的な食品(食パンなど)50gに対し、特定の食品50gが、どれだけ血糖値を上げるかどうかを比較した数値です。ジェリービーンズなどの食パンよりも血糖値をより高く上昇させる食べ物は"高血糖食品"と呼ばれています。食パンよりも血糖値をより低く上昇させる食べ物は"低血糖食品"と呼ばれます。多くの要素がGIに影響します。たとえば、調理法、一口の大きさや、果物の新鮮さが挙げられます。無精白食品、自然果物、野菜や豆類(さやいんげんなど)はGIが低いです。加えて、高炭水化物食品をタンパク質や脂質を含む食品と一緒に摂取する事でGIを下げる手助けになります。重要なのは、炭水化物全般が、AMD進行のリスクに関連していないということです。

結論
ビタミン、ミネラルやその他の栄養素はAMDの発症や進行に関係があるようです。特に、ビタミンA,B12,C,Eそして亜鉛が重要です。ルテインゼアキサンチンの二つはAMD予防に必要不可欠な植物性化学物質です。高血糖食品は網膜黄斑症を促進する可能性がありますが、まだGIについては研究中です。果物、野菜、豆類、無精白食品、そして魚を含んだ健康的な食事が、必要な全ての栄養素と植物性化学物質を供給してくれます。食事のみでこれらの栄養素を取ることができない人々は、サプリメントを飲むことも視野に入れた方がいいかもしれません。目の健康のために調整されたビタミンサプリメントが入手可能ですよ。

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