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看板だけじゃない、変えなきゃいけないもの#82

今回の記事は、以下のNHKのニュースを受けて書いています。

※事件の是非を問うものでもなければ、当事者を批判するものでもないことだけはご了承下さい。

その上で、この記事で私が伝えたいことは、

こうした事件の再発防止には、人間の側の専門性を高める研修とか注意喚起はあまり効果的ではなく、仕組みにアプローチしてそもそも虐待が起こらない状態を作ることをチームで目指そう

です。(偉そうですが)
それでは、よろしくお願いします。


□事件のおさらい

まず、滝山病院事件が何の事件だったかおさらいしていきます。こちらのニュース記事も参考にされてください。

ざっくり言うと、2023年2月に東京都八王子市にある滝山病院(精神科)で、職員らによる患者への虐待が明らかになった事件。NHKのTV番組やネットニュースの記事、第三者委員会の調査報告書を見ると、人間が人間に対してやることなのか…と信じられない気持ちになります。それほど常軌を逸した虐待事件でした。参考までに調査報告書を載せておきます。

実は、2020年12月から徐々に明らかになった兵庫県神戸市にある神出(かんで)病院での虐待暴行事件がありますが、そのあとにまた同様の虐待事件が起こったのです。これら二つは特に大きくメディアで取り上げられ、日本中に衝撃が走ったと思いますが、虐待案件としてはほんのごくごく一部(氷山の一角)なんだと思います。

□変えるべきは看板ではなく環境

今回の事件を受けて滝山病院としては、今年の8月に院長と理事長が辞任していました。そして、先日のニュースでは法人名も病院の名称も変わるとのこと。

医療法人社団孝山会 滝山病院 ⇒ 医療法人社団新山会 希望の丘八王子病院

希望の丘…このニュースを見て、シンプルに看板の架け替えをしただけだと感じました。名前だけが変わって(経営者も変わりましたが)、中身はなんも変わらない。悪しき習慣は一掃しなければ、また同じことが起こります。

私は、今回虐待事件を起こした人たちも、人間としての本心で虐待を行っていたものではないと思っています。虐待をするために入職する人、福祉や医療職を目指す人なんていないですよね。だけどこのような残虐な事件が起こってしまう。それは環境要因がとっても大きいです。

一口に環境と言っても、経営方針、管理職の雰囲気、職場の雰囲気、適切な患者対職員の人員配置など多くの要素があります。それらが良い循環を生み出せず、モヤモヤが職員に溜まっていくとか、時間に余裕が持てずに心の余裕もなくなっていくなどが起こってくると、患者(弱い立場)に対する態度に悪影響を及ぼします。次第に患者への当たりがきつくなったり、コミュニケーションは一方通行になったり、支配的管理的になったりしていってしまう。さらには、職場の雰囲気としてそれらが日常的なものになっていってしまうと、段々とおかしいと思っていたことがそう思えなくなってしまう。虐待をしているという感覚すらない中で行動に移ってしまう。そんなことが起こりうるのが虐待現場なんだと思っています。

これは滝山病院が特異的だったわけではなく、あらゆる医療・福祉の現場で起こりうることなんですね。特に、昨今人手不足が合言葉のように唱えられている業界で、必要な人員の確保が難しいということが常態化しています。人がいない、お金がない、時間がないというないないマインドが強まると、やっぱりその影響は利用者(患者)への支援場面に出てしまいます。

重要なのは、一人ひとりの人格云々ではなくて、身を置いている環境によって善悪の判断も利かなくなってしまうことが結構あるという点です。だから、単に看板を掛け変えるだけでは、また同じことが起こるのではないかなという感覚です。

しかも許せないなと思うのが、改名後の名前です。希望の丘ってどういうことだろう…と思うわけです。ここは精神科病院ですが、精神疾患を患ってしまうのは、イコールで希望をなくすこと。治療して希望を取り戻そうということなのか。であれば、かなりのパターナリズムだなと思いますね。確かに精神疾患を患ったことで人生終わったと語られる人とも出会ってきましたが、必ずしもではない。それは、外部の人間がどうこう言う問題ではないだろうと思います。精神疾患を希望を失わせる病と決めつけて、希望を取り戻そうねというのはシンプルに失礼です。

□ペナルティの設計(仕組みづくり)が再発防止の鍵

これまでも書いてきたように、これだけ大きく社会に取り上げられてきた事件ですが、看板が掛け変えられて数年も(下手したら1年でも)経ってしまえば覚えている人の数は激激減します。それだけ世の中に情報が溢れているという点もありますが、そもそもとしてこういうニュースは見たくない(こんなこと一部のやつらが起こす事件で自分には無関係)んですね。

それで語り継がれることがなくなってしまって、名称も違えば、まさかこの病院が…と知る由もないです。そうやって風化していくものなんですね。

ですが、先ほどから言っているように、こうした事件は山ほどあるし、同じことがまた起こると書いています。その時に対症療法で事件を納めるのではなくて、事件がなぜ起こったのか、加害者はなぜ行動に移したのか、事件が起こる前の労働環境や人間関係などはどうだったかなど、様々な要素を分解して再構築していくことで見えてくるものがあるはずです。

なので大切なのは、時系列で見ていくことと環境(労働、人間関係)に着目して捉えていくことです。

ものすごくつらつらと書いてしまい読みづらかったかもしれません。
ですが、看板の架け替えという日本人の伝家の宝刀(とまでは言いませんが)で乗り切ろう、場を納めようという考えには反対で、起こしてしまった事件とはしっかり向き合って欲しいなというのが率直な感想です。また、制度としては、虐待したら一発アウトぐらいの切り込んだものを期待します。

虐待が起こらない仕組みを構築していくことはまだまだ時間がかかりそうです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた。ゆうちゃんでした。


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ゆうちゃん
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