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高齢者の運動機能×握力
前回もお伝えしたように、加齢変性により身体構造は年々後退していきます。
当然、それに伴い運動機能も後退し、要介護状態や転倒リスク、生活機能や生命予後などに影響を与えることとなります。
そのため、高齢者における運動機能は重要な要素の一つとなります。
同じ年齢の高齢者であっても一人一人違い、元々の身体機能や運動習慣の有無、ライフスタイルなどの複合的な要素によって健康寿命の個人差もあると報告されています。
運動機能の実態を把握することは、転倒や老年症候群の予防、生活機能の維持に重要といえます。
運動機能と言っても幅広い要素があると思いますが、今回は筋力の中でも「握力」について触れていきます。
握力
握力は握力計を用いて筋力測定のスクリーニングをする代表的なものの一つです。学生時代から体力測定の項目として使用されており、子供からお年寄りまで馴染みのある評価項目と言えます。また、評価方法も「力の限り握る」という、とても簡単で誰もがわかりやすい内容となっていますよね。
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評価においては握力計が必要となります。病院やデイでは所有していることが多い印象ですが、私のところも含め、訪問事業所で所有している所にはバラツキがあるようです。
物にもよりますが、握力計は3万近くするものもあり、高額でなかなか手が出づらいというのが現実でしょうか…??💦経営的なことを言えば、規模の小さい訪問事業所などでは、これを買うなら他の物品に利用してほしいという考えも理解できますよね(;^ω^)
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さて、本題に戻りますが、まずはこの図をみてください。
![](https://assets.st-note.com/img/1737260409-708orQafTwNEypAO4K9ntmH5.png?width=1200)
この図は、スポーツ庁が行っている、令和2年度の体力・運動能力調査報告書です。男女ともに20代~30代にかけてピークを迎え、50代ごろまで横ばいで推移しますが、60代ごろより低下し、70代ではさらに握力が減少する傾向となっています。(図1)¹⁾
握力は肘屈曲筋力や膝伸展筋力,体幹伸展筋力,体幹屈曲筋力など全身の筋力と有意に相関する²⁾。また、握力と有意な相関が認められたのは、足把持力、大腿四頭筋筋力、骨格筋量,上体起こし、片足立ち保持時間、10m障害物歩行、6分間歩行テストであった。³⁾と報告もあがっており、高齢者の運動機能の指標として重要な役割を担っています。
加齢により退行性変化は進行しますが、上記で示した通り、下肢や体幹機能が比較的維持されている場合には、握力も保たれていることが多いと推察されます。
要介護者におけるADLと握力との関連性について、今田ら⁴⁾は要介護高齢者の上下肢機能の高低の組み合わせにおいて、握力、歩行速度ともに高値である者のADL能力が最も高く、握力、歩行速度ともに低値である者のADL能力は最も低いことが明らかとなった。と述べられています。
歩行は健康寿命と関係があります。今回のテーマが握力であるため、どうしても筋骨格系と結びつけたくはなりますが、循環器や呼吸器、神経系などのこれらの機能も維持されていなければ、歩くことは困難となります。
要介護者においてはたとえ、独歩でなくとも、杖や歩行器などの補助具を用いて「歩く」ということがやはり二足歩行動物の生命の根源なのかもしれませんね。
最後に
私がみている利用者さんは握力1〜20kg前後の方が多いです。体力・運動能力調査報告書のデータからはほぼ外れています。
そういった方々が加齢により虚弱性の身体・運動機能低下によって日常生活に支障を来たし、リハビリの対象者になりやすいといえるかもしれませんね。
今回はここまでです。閲覧いただきありがとうございました。
参考・引用文献
1)令和2年度 体力・運動能力調査報告書 文部科学省 スポーツ庁
2)Rantanen T et al: Maximal isometric muscle strength and socio-economic status, health and physical activity in75-year-old persons ] Aging Phys Activity 2: 206-220,1994
3)池田望ほか:高齢者に行う握力測定の意義 West Kyushu Journal of Rehabilitation Sciences 3: 23-26, 2010
4)今田樹志ほか:要介護高齢者における上下肢機能とADLとの関連
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
※この内容は個人の解釈が含まれます。参考程度にお願いします。