マネジメントと運、またはマグレ
子供のころは、自分はあまり運が良い方ではない、というか、運が悪かったです…。くじには当たったことがないし、じゃんけん弱いし。
でも30〜40代を迎えて、エンジニアリングやデザインの世界をいったん離れ、営業やマネジメントを経験するようになると、なんだろうこの連日の偶然は、と不思議に思うことが増えはじめます。創造系不動産も、ぼく自身も、かなり幸運に恵まれていると思います。
建築と不動産のあいだの価値をたまたま発見し、創業前後はありがたいことに無数の仲間や顧客に支えて頂き、創造系をさらに変化させるキーパーソン(教育・出版・経営・地方)に意図せず出会い、そして時代がぐんぐん変わっていくことをそんな環境から教えてもらいました。ほんとラッキー。
これって気の持ちようなんですかね? 偶然ではなく必然です的なやつ? それかよく経営の道徳的な本とかで、起こる全てのことに感謝せい、謙虚でいなさい、とか? いや、そういうのはあまり好きじゃないんですが、それらも含めて錯覚なんですかね?
たぶんそうじゃなくて、これは計画の不可能性と、実行の制御不能性の相互関係に関わる話じゃないかな、と最近。
私の仕事は建築家やデザイナーとコラボする不動産コンサルタントですが、一方で創造系不動産スクールという建築系ビジネススクールを運営していて、そこではいろんな、経営思考を扱います。なんか最近、このマグレをもっと真面目に考えたほうが、企業経営にとって、または設計者やデザイナーにとって生産的なのでは、という気がしてきました。とはじめて意識したのは2018年のパラレルセッション(※3)で登壇していて。普段会わない方々と登壇したら、不意に口に出ました。
そのあとしばらく放ったらかしてましたが、年末年始にまた逡巡。これはたぶん、計画を立てて実行するという(ビジネスふうに言うとPDCAサイクルの)図式には納まらない雑多なもの、でもおそらく本質的なものに焦点を当てています。
多くの偉大な経営者が、運は必要だといいましたが、これはつまり想定を超えた出会いや環境の変化があったため、そう感じたにすぎません。
しかしマグレや奇跡は計画できませんから、結果として起こった想定を超えるそれらは、口伝で語り継がれるものになるでしょう。誰に?それを起こした(実行した)人たちによって。彼らの本気の実行は、もともとの計画とは別の成果や体系を呼び寄せ、しかしそれは元々の綿密な計画があったからこそ浮き彫りになります。
これは計画の不可能性と、実行の制御不能性が、それぞれを補完している状況です。
ぼくも近い将来の目標やビジョンについて、妄想豊かにディテールまで描写することが多いです。でもその通り行った試しはまるでなく、いつもぜんぜん違う方向に。そもそも不動産屋の社長やろうと計画したことなんて一回もないし!「なぜ建築から不動産にキャリアシフト したんですか?」と聞かれることは多いですが「たまたまです」と答えるのが一番誠実な気がします(このあたりの描写は『新パーソナルブランディング』に詳しく掲載されています)。
すると、運やマグレを引き起こすための十分条件はふたつ。1つ、困難な目標を置いてそれを実現するために綿密に計画を立てること。2つ、それ以上に実行すること。単純ですが、そうすると、起こることがだいたいマグレか運に感じます。
ねんのため必要条件。無謀という意味で、若いこと。あと市場が未成熟なほうが、これら引き起こすにはよいでしょうね。また風通しが良い組織であること。ルールを守るより創る人材が多いこと。もちろんみんながやってるように努力すること。たぶんこんな感じですね。
経営者にとって、運や偶然は本当にあって欲しいもの。だからもっともっとみんなで起こしましょう!
※3 パラレルセッション
2016年から開催されている、一連の若手建築士達のブレストセッション。独特な熱気に共感して、創造系不動産も当初から協賛させて頂いてます。若手の自然発生的なイベントは他の業界でも多々あり、不動産業者だったらだいたいギラギラした飲み会が中心になるが、パラレルセッションは結構さわやかなのが好き。