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ちいちゃんのかげおくりの授業は3ステップ

三年生の物語文3つ目は「ちいちゃんのかげおくり」です。平和教材で、昔から読まれてきた物語文ですが、指導となるとなかなか難しいところがあります。そんな「ちいちゃんのかげおくり」を3ステップで学習を進めてみましょう。

基本的な特徴

家族一緒にした最初で最後の「かげおくり」は、ちいちゃんにとっても嬉しい、幸せな思い出となった。しかし、戦争はそんなちいちゃんから家族や遊び、家を奪っていった。家族と離れ離れになり、ひとりぼっちになってからも、家族に会いたい、家族一緒に暮らしたいという願いを死ぬまでずっと持ち続けるちいちゃんだったが、非情にも戦争は、幼いちいちゃんの命までも奪いとっていった。

ちいちゃんのかげおくりの特徴として、第一に苛烈さや、悲惨さ、辛酸な表現が多くなる表現を児童に合わせてマイルドに、優しい言葉で表現していることが挙げられる。第三者の視点で語られる物語ではあるが、主人公のちいちゃんの目線や気持ちに寄り添う形で、恐ろしさや緊迫感の感じられる言葉を「こわいところ」や「ほのおがおいかけてきます。」などと幼い子にも伝わるような表現が選ばれている。あまんきみこさんの子供達への配慮だろうと考える。

第二に、構造上、設定部と山場部、結末部は戦争をテーマにしているものの、家族で過ごすことの喜びや楽しさなどのフィルターを通してちいちゃんの悲惨な状況や結末も明るく描かれていることである。逆に優しい言葉ではあるが、展開部はちいちゃんが危機的状況に進んでいくように描かれている。

第三に、タイトルにあるように「かげおくり」の対比である。主に、作品内のかげおくりは3つあり、設定部前半の家族みんなでのかげおくり、兄とちいちゃんだけのかげおくり、そして山場部のちいちゃんだけのかげおくりである。どのかげおくりも登場人物の気持ちが喜びや楽しさで表現されているものの、本当の状況や境遇は異なり、作品が進むにつれて読者と話者とのズレが生じてくる。

児童の反応は

このような特徴のある作品を子どもたちが読者として読んだ時に感じることは「かわいそう」「悲しい」「ひどい」という感情であろう。自分よりも幼い子どもであるちいちゃんは、展開部で始終心細い中一人で過ごしていることを想像するのは3年生でも易しいことであると考える。しかし、戦争の悲惨さなどをマイルドに表現している言葉を、もう少しリアルに捉えるためには挿絵だけではなく、ちいちゃんが生きた戦時下の日本は一体どのような状況だったのか、資料として映像や写真などを提示し、想像を具体的にすることが必要になると考える

 この作品は1場面、2場面、3場面は、ちいちゃんの目と心に寄り添って、4場面はちいちゃんの目と心に重なって描かれている。視点は語り手ではあるものの、内の目としてちいちゃんの願いや喜び、悲しみが語られているので自分のことのように思える。同時にその願いを打ち砕く戦争に怒りを覚える。戦争が奪うものであっても、ちいちゃんの願いだけは奪うことはできなかったと言える。5場面では平和な社会が外の目として語られている。しかしこれまでのお話を内の目で読んできた児童は、この最後の平和な場面の裏に隠された戦争と戦争で死んでいったちいちゃんの姿にも思いをよせるであろう。

単元の3ステップ

ステップ1授業の導入 <主体的な学びのために>ゴールを明示、手紙を書こう
「いくつかあるけど、特に心を打たれたところはここだな。」と問わず、「ちいちゃんへの手紙を書こう」ということでちいちゃんの思いに寄り添う方に思考を促す。1場面から4場面までちいちゃんの行動や様子に寄り添い考えることで「共感」することをねらう。最後の5場面ではちいちゃんとの同化ではなく、現在の様子を読み取るために、手紙でも最後にはちいちゃんに向けて「自分が平和のためにできること」を手紙に書くように設定し、主体的に自ら学んでいくように促したい。
ステップ2授業の展開 <対話的な学びのために>心を打たれたところをもとに
児童が「友達と話し合いたい」と思うタイミングで対話的な学びを取り入れられるように工夫する。そして対話の前に、何のために対話をするのか、子供たちと一緒に立ち止まって確かめる。本単元では2種類の対話を想定している。一つは「心を打たれたところ」として同じところを選んだ友達との対話、もう一つは異なるところを選んだ友達との対話である。同じところを選んだ友達との対話は、自分の考えに自信をもったり、友達の感想を聞くことで選んだところの様子をさらに具体的に想像したりするために行う。
異なるところを選んだ友達との対話は、場面全体の様子をより具体的に想像することにつながる。「何のために伝え合うの?」「同じところを選んだ友達と感想を伝え合うと、どんないいことがある?」等と児童に尋ね、確かめてから対話したい。
ステップ3授業のまとめ <深い学びのために>
各時間の初めから「心を打たれたところ」について感想をもたせるのではなく、まずは場面と場面を項目ごとに比べて変化に注目させる。
例えば人物に注目すると、1場面ではちいちゃん、お母さん、お父さん、お兄ちゃんがいたのに、2場面ではお父さんが、3場面ではお母さんとお兄ちゃんがいなくなってしまっていることが分かる。戦争によってちいちゃんの周りから様々なものが失われていることを捉えたうえで、「心を打たれたところ」について考えることができるようにする。また前の場面のちいちゃんの様子と比べて感想をまとめたり、発言したりしている児童を価値付け、複数の場面の叙述を結び付けるとはどういうことなのか、具体的につかむことができるようにする。そして最後にはちいちゃんに向けて自分の感動したところや、伝えたいところを手紙の形式でちいちゃん宛に手紙を書くことにして学びをまとめる。

以下は単元の計画やプリントをワークシートにしたものです。


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