見出し画像

まいごのかぎはファンタジー

本単元「まいごのかぎ」では、登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像する力を育てていく。特に、登場人物の行動や気持ちの変化について、場面の移り変わりとともにどのように変化しているかを具体的に想像することを重点的に指導する。登場人物の気持ちは、場面の移り変わりの中で揺れ動きながら描かれることが多いため、複数の場面の叙述を結び付けながら登場人物の境遇や状況を捉え、物語全体に描かれた行動や会話にかかわる複数の叙述を結び付けて読んでいけるようにする。また、その過程で、言葉のもつ意味や表現の価値に気付き、多様な語彙を獲得することも目指す。そのまいごのかぎはまず「これはファンタジーなんだよ!」と不思議な世界に入り込んだ女の子の話なんだと伝えることで楽しい、不思議な学びがスタートする。

【教材「まいごのかぎ」の特徴】 

「まいごのかぎ」は、現実→非現実→現実の構造をもつファンタジー作品である。中心人物のりいこは非現実世界での気づきをきっかけに、現実世界での心情を変容させる。よって本作品ではファンタジー作品の構造と中心人物の変容を関連させて指導することが大切になってくる。りいこは図工の時間に描いたうさぎを出入り口にして、二つの世界を行き来する。しかし非現実世界で起こる出来事に黄金色の鍵が印象深く関係しているので、出入り口を鍵だと思う児童も多くいるだろう。そうなると非現実の範囲が曖昧になり、りいこが何に気づいたのかが分かりにくくなってしまう。非現実世界への出入り口の原理原則を教えて、場面を明確に確定させることが大切であり、そこでりいこは何を体験し何を思ったのかを読み取ることで、結末で手を振り続けるりいこの心情に迫ることの出来る作品である。話の展開は鍵穴と出会う不思議な出来事4つで構成されている。5つの場面に分けられ1場面が現実世界、2から5の途中までが非現実となり、最後に「りいこも嬉しくなって、手をふり・・」のあたりから現実に戻るような構造である。鍵穴ごとに場面がわかるので場面を比較する時にはわかりやすい構造である。またりいこの心情の変化も初めの図工での出来事は落ち込んでおり、不思議な鍵穴の体験をするごとに心情が変化していく。5場面のバス停での出来事をきっかけに「余計なこと」だと思っていたことが本当は「楽しいこと」だったことに気づき、楽しむことの大切さを改めて感じるのである。また様子や行動を特徴的な言葉を用いて表現している。多くの比喩表現、擬声語、擬態語、擬人法など表現効果も多く用いられており、それを手がかりにりいこの行動や様子を想像しやすく気持ちを読み取る手掛かりとなりやすい。

【主体・対話・深い学び】

単元の導入では、物語の最初の場面(「りいこ」が「しょんぼりと」歩いている場面)と、最後の場面(「りいこ」がうれしそうに手を振っている場面)とを提示することで、比較して気付いたことや疑問などを自由に表現できるようにする。また、「春風をたどって」での、場面ごとの様子や登場人物の気持ちを想像しながら読む学習を振り返り、様々な言葉から気持ちを想像することができたことや、想像をふくらませながら読む楽しさを想起できるようにする。その上で、児童から出された気付きや疑問をもとに「問い」を立て、それを追究していく後半の単元設定をすることで、児童が見通しをもちながら主体的に読むことができるようにする。

【対話的な学び】

場面の移り変わりとともに、りいこの気持ちの変化について具体的に思い描くことに取り組む。りいこは、様々なふしぎな出来事に出合うたびに、「そんなわけないよね。」「でもやっぱり」と気持ちが揺れ動く。一つの場面の中だけではなく、複数の場面の叙述を結び付けることで、より詳しく気持ちの変化を見いだして想像することができる。その際には、どの叙述とどの叙述とを結び付けるかによって、変化やきっかけの捉え方が異なってくるため、多様に想像を広げていくことができる。とくに「ワクワクメーター」(心情曲線)を使い場面と場面間を読むようにしているので、自然と叙述と叙述をつなげて考えることになる。この段階で、友達との対話により、それぞれの結び付け方について考えの交流を行い、自分の考えを広げることに取り組む。同じ言葉を選んでも、他の言葉との結び付け方が違うと別なつながりが見えてきたり、違う言葉を選んでも、登場人物の同じような性格が浮かび上がってきたりするなど、一人一人の言葉の選択や、結び付け方の違いが明確になると、みんなで一緒に学ぶことの楽しさや意義を実感として捉えることができるはずである。

【深い学び】

単元の終末に、「不思議相談会」として児童の「問い」にたいしてみんなで話し合いを進めていく。最初の場面では、「りいこの頭の中にたしかにいたはずのうさぎまで、どこにもいなくなった気がした。」、「うさぎに悪いことをした。」と感じていたりいこが、「かぎ」を得て様々な体験をすることを通して、最後の場面では「あのうさぎが、うれしそうにこちらに手をふっているのをたしかに見る」ことができる。「うさぎとは何か」を言語化する活動を通して、改めて物語の構造を一人一人が捉えられるようにしていく。その後、「うさぎ」の存在についての理解が深まることで、「なぜ、かぎはりいこの目の前に現れたのか。」、「なぜ、いつのまにか、かげも形もなくなって」しまったのかなどの「かぎ」の存在や、題名の「まいごのかぎ」の意味についての考えも深められるようにしていく。事前に丸わかり本に学びを蓄積しているので、読みが苦手児童でもみんなの問いや自分の問いに自分なりに考えることができると考えている。

詳細の研究ファイル

ここから先は

49字 / 1ファイル

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?