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「傲慢と善良」を読んだ感想。

『傲慢と善良』は、現代の婚活や恋愛に関するリアルな問題を描きながらも、深い人間ドラマとミステリー要素を巧妙に織り交ぜた作品だと思います。

タイトルに込められた「傲慢」と「善良」というテーマが物語を通じて絶妙に展開され、登場人物たちが持つ複雑な人間性が非常にリアルに描かれています。

主人公の架は最初、あまりにも善良すぎて不安定に見える部分があり、彼の鈍感さや信頼できなさが読者にとっても不安を呼び起こします。

しかし、物語が進むにつれて、彼が真実を追い求める姿勢や成長が描かれ、彼の善良さに対する認識が変わっていきます。その過程が面白く、読者としては次第に架を信頼できるようになっていく感覚がありました。

また、真実が失踪したことで物語が展開し、架が真実の過去や謎を解明していく部分には強い引き込まれる力がありました。

最初はただの恋愛物語のように見えたのが、次第に深刻な人間ドラマに変わり、真実の姿が明らかになるにつれて物語の本質が見えてくる構造は非常に緻密で楽しめました。

さらに、オースティンの影響を感じさせる部分もあり、「傲慢」と「善良」だけではなく、それらが混ざり合い、誰もがその両方の要素を持っているという普遍的なテーマが響いてきます。

特に登場人物たちが持つ矛盾した性格や行動が、現実的で共感を呼びます。

震災という現代的な背景をうまく絡めている点も印象的で、過去と現在が交錯し、新しい価値観が生まれる場面は心に残りました。

全体として、人間関係の複雑さや自分自身の認識を問い直す作品であり、婚活や恋愛に対するリアルな視点を提供してくれる素晴らしい小説だと思います。

非常に奥深く、感情移入しやすい物語でした。

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