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美しいものとそうでないものが一緒にあるパリ

3つ目の宿に移動している。
今度のお宿の目の前がボンマルシェ。

フランスに来る前に読んだこの本の舞台となるパリのデパート・オブ・デパートである。
ホストにボンマルシェに行くかと聞くと、ネバーという答えが返ってきた。リッチピープルのためのデパートだからめちゃめちゃ高いって。
ボンマルシェは15年くらい前まではもっと庶民的なリーズナブルなデパートだったが、ルイ・ヴィトンの傘下に入り、経営方針が変わったという。
今のホストのお宅はめちゃくちゃ広くて、パリのアパルトマンには珍しく、エレベーターがついている。(2人しか乗れないすっごく小さいやつだけど)そして1フロアに1つしかおうちがない。あなたも全然リッチじゃん、と思ったが、それは言わなかった。

そしてボンマルシェに行ってきましたよ。
ジャストルッキング、乙!!!
日本でお笑いライブのためにメルカリで買ったピンクのだっさいパーカといつ捨ててもいいスキニーパンツで行ったせいか、ほぼ誰にも話しかけられず、店内を見て回れた。
しいちゃんが服を見ているときはヒヤヒヤしたが。だって安くて50ユーロくらいなんだかんな。子どもの服で普通に200ユーロとかあるし。

旅は自分の本質を映し出してくれる。私は本当にケチでみみっちく、常になにかを心配している人間ということがよくわかった。
もっと安心して愛されていいんだよ、とボンマルシェの圧にまったく動じず店内を歩くしいちゃんを見て思う。
ちなみに参考までに、この前、しいちゃんの服を買ったところはオペラ座の近くのBenettonでした。ショートパンツとトレーナーで50ユーロくらい。

今、朝。でかくて開けにくい窓を開けると街の音が聴こえてくる。誰かがめっぽう達者な口笛を吹いている。
昨日の夜、寝る前に窓越しに、ホームレスたちがボンマルシェの向いの建物の角で集まって寝ていた。彼らはもう起きて、移動している。あの口笛が彼らのうち誰かが吹いているのだったら、それを売りにしてお金を稼げばいいのに。ただ座って紙を置いて物乞いするよりも。

だが、ホームレス(という呼称もしっくりこないけど)は働いていないのではない、物乞いが彼らの仕事なのだという考え方をフランス人から聞いて、やっと私の中のホームレス見てもやる問題は落ち着いていきそう。

それにしてもボンマルシェ。こと装飾に関して一級の腕を持つフランス人が、リッチピープルの財布の紐をゆるめさせるためにこれでもかとばかり創りあげた素敵空間は、決してボンマルシェでは買い物はしないという宿のホストも認める美しさであった。

ていうか、やっぱりフランス人のセンス、すごい。今まで泊まったどの家も、ちょっとした置物とか飾ってある絵とか鏡とか、計算してんのかい!!! というくらい小憎らしいほどセンスなのである。

これ以外にも、鏡を効果的に使っているインテリアが。
銀杏?
とんぼ?
ポットからランプ。
とにかく色みが多い!
バスルーム、ちらり。
何に使うのか、とか聞くのは野暮。
実用? なにそれ?
窓の外にはボンマルシェ。

美しいものとそうでないものとの落差が大きい、と前に書いたが、それはどういうことなのか、まだ答えらしい答えは出ていない。私はすぐに答えを求めてしまうな。

それはでも、もしかしたら、美しくないものも排除はしない、ということなのかもしれない。
渋谷の宮下パークは、宮下という名前こそ残っているが、以前そこに住んでいた人たちを追い出してつくったどこをとってもピカピカな商業施設だ。数回通り抜けたことしかないが、彼らの姿は見なかったと思う。
ボンマルシェの前には公認のように物乞いが何人か座っている。
この違いはなんなのだろうか。

誰もそうじしないで、ずっとそこにあるもの。
やたらと多い不法投棄。特になぜか多いマットレス。

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石渡紀美(イシワタキミ)
楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!