不登校の子どもと海外旅行に行くということ
今回の旅に出る前、友達から「子どもと一緒に旅行、しかも海外なんて大変そう」と言われていたのだが、実際に来てみるまで、その意味がわからなかった、甘々な私であります。
来てみて、まあそれなりに大変。しいちゃんはほんとにマイペースなので、無理なスケジュールは立てられない。結果、行ける場所にもかぎりが出てきてしまう。ミュージアムパスという〇日間美術館など行き放題、みたいなパスがあって2日券を買ったけど、元は取れなかった。
だけど、彼女(しいちゃん)にはすごく助けられている実感がある。たとえば、反対方向のメトロに乗ってしまうこと、ほんとに多くて、そういうとき、しいちゃんがいると、笑える。たまに、いや、けっこうな確率で怒られるけど、それさえも助かる。
それと、人と話すときも。
今回の旅はたくさんのホストさんたちに泊めてもらいつつ、たまにAirbnb(民泊)を使っている。初めての土地の海外旅行で、けっこう人に会って、話している。
ホスト以外にも、昨日はカフェで隣に座った、マンハッタンから来た老夫婦に話しかけてしまった。
こちらで人と話すとき、どうしてもしいちゃんが一緒にいるので、しいちゃんの話になることも多い。それは「学校は休みなの?」という質問から始まり、私はまず「彼女は学校に行っていないんです」と返す。それで「?」となる場合は「ホームスクールをしています」と展開するのだが、その後必ずといっていいほど「じゃあ、あなたが彼女に読み書きや算数を教えているの?」となる。
ホームスクールって、こういうイメージなんだろうなとは思う。学校に行かない代わりに家で「はい、これから算数やるよ~」と家で学校もどきが始まるイメージ。
実際にそういう風に日常を過ごしている不登校の家庭があるかどうかは知らないが、しいちゃんの場合、そういう(学校っぽい)のがイヤで、学校に行かなくなったので、うちで時間を決めて勉強を教えることは、まずない。
少なくとも、私がイニシアチブをとって彼女にものを教えることはない。あっちが聞いてきたら教えるけど。最近は「英語で〇〇ってなんていうの?」と聞かれたので教えたくらい。
こちらで初めて会った人との話の流れとしては、彼女が学校を行くのをやめた経緯や、今の日本の学校事情など、不登校のリアルを説明する感じ。今、日本の小中学生で何人が不登校か、あらためて調べてみたら、もう30万人超えているんだってね。
それを相手にいうと、たいていびっくりされる。私もびっくり。30万って・・・すりーはんどれっどたうざんど??? 100万がみりおんだから、そうだよね。やっば!
しいちゃんと不登校の話を人と会うたびにしてきたけど、どの人にも共通して言われるのはこの旅行自体がすごくいい教育だねっていうこと。
まあすぐに役立つことなんて、長い目でみたらそんなに役に立たないことだと思ってるから、いい教育かどうかはどうでもいいんだけど。
とはいえ、思春期にさしかかった女の子と旅行するのは時々ほんとにたいへんで、たぶん成人する前のこれが最後かなくらいに思っているから続けられるんだな。
しいちゃんはどこでもしいちゃん。日本でもそうだけど、街中で人と目が合ったら手を振ったり、ニコッとしたりして。昨日はヴェルサイユ宮殿に行く電車で隣り合わせた男の子(1歳半)が、しいちゃんに一生懸命自分のおもちゃを渡そうとしててかわいかった。
ところで、今回意外な再会があった。
過去に外資企業に勤めていた頃、フランスからインターンで来ていた女の子からFacebookを通じて連絡がきた。会ってコーヒーでもいかが、と。
14年ぶりだったし、会ってわかるかなあ? と思ったけど、それは杞憂だった。「イシワタサン?」と現れた彼女は在宅勤務を抜け出してきてくれたのか、めっちゃ家着のパーカーとジャージ姿で現れた。今や、3人の男の子の母だという。
彼女は凱旋門の近くに住んでいると聞いて、ちょっとひるんでいたのだが、それもまったく杞憂で、たのしく会社時代の話をしたり、子どもの教育の話もできてよかった。ちなみになぜそんな土地が高そうなところに住んでいるのか、リッチなのか、と赤裸々に聞いてみたらその理由も教えてもらった。詳しくは個人情報なので伏せるけど、なるほどね~って感じ。
フランスでは2年前から義務教育の開始が3歳に引き下げられたのだという。それまでは、ホームスクールはある程度の基準をこなせば認められていた(こういう基準がきちっとあるところが日本との違いで、でも日本のゆるさに助けられる場合も、うちの場合はある)そうだが、今はより厳しくなっているそう。なんでもそうだけど、揺り戻しみたいな感じ?
これは別の人から知ったことだが、不登校になる子はいないのかと聞いたところ、どうしてもの理由がないかぎり、ないそうだ。生徒ひとり一人に、なにか問題が生じたときに担任以外にサポートしてくれる職員がついているとか。
そういう手厚さ、日本ではないな~。すべて担任にしわ寄せがきちゃうから、そりゃ日本の教師は大変だと思う。
パリではけっこう大きい子どもを連れて登校する親の姿を見かけた。お父さんが2人の子どもを連れている光景もめずらしくない。なぜもう小学生なのに親がついているのか、とある人に聞いたら「誘拐をおそれているから」とのこと。
そのことを凱旋門在住の彼女に聞いたら「たしかに心配がないわけではないけど、うちでは9歳からは自分たちで学校に行かせている。あまりメディアのニュースを鵜呑みにして恐れたくないから」と言っていた。
こちらで会う子どもは皆、かわいい。肌の色関係なく、ちゃんと愛されている感じが伝わってくる。私が年を取ったのか。