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映画『MEMORIES』の道のり

はじめに

 2022年10月15日23時より、池袋文芸坐にてアニメスタイル企画の「『MEMORIES』と大友克洋のアニメーション」という オールナイト上映があり、上映前に片渕須直・田中栄子トークショーが行われた。特に片渕さんの参加された「大砲の街」のお話が中心ではあったが、映画『MEMORIES』の製作前後の情報が多く盛り込まれており、大変興味深い内容となった。ただ、時系列に沿って話されたわけではなかったため、特に若いファンには難しい部分もあったかと思われる。そこで、映画『MEMORIES』の企画スタートから公開後まで、公式のムックやパンフ等、各種メディアでの記事と幾つかのトークイベントで聞いた内容、及び筆者が関係者から直接聞いた話をまとめた。

文中敬称略

2022年10月15日(土)23:00スタートのオールナイト上映会

企画始動

 マンガ『AKIRA』の連載が最終局面を迎えていた1990年4月、待望の大友克洋 SF 短篇集『彼女の思いで…』が講談社より刊行された(どれだけ待望だったかなどは、拙サイトの紹介参照 )。その際、講談社より「SF 短篇の OVA を作らないか」という打診があった。そこで大友克洋は、仲の良い森本晃司と飲みながら相談する。森本晃司が最初に挙げたのは「武器よさらば」だったが、画面的に殺風景であるという理由で却下(『月刊アフタヌーン1996年1月号』大友克洋インタビュー)。かわりに、「彼女の思いで…」を大友克洋が提案することで、『MEMORIES』の企画がスタートした。正式に動き出したのは恐らく映画『WORLD APARTMENT HORROR』と『老人Z』の作業が一段落した1991年の後半と思われる。1996年発行のムック『The Memory of memories』(講談社)の中で森本晃司の発言「話があったのは4年くらい前」も、その頃を示している(インタビューは1995年暮れ)。

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