
【俳句】てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った…私は勘違いをしてました
「てふてふが一匹
韃靼海峡を渡って行った」。
教科書で習った記憶があります。
安西冬衛という俳人の作として。
でも、私はこの歌の解釈を
今日までまちがっていました。
韃靼海峡は、調べると
ロシア大陸と樺太島のあいだに
横たわる細長い海峡でした。
てふてふ、蝶々は
日本から大変な長い旅に
出かけていったのかあ、
とバカみたいに思っていました。
でも、あの、フワフワと舞う蝶々が
実際、そんなハードな旅に
出られるはずがないから、
この俳句は、想像で詠んだに
ちがいない。
私は40年近く
そう思いこんできました。
でも、調べると、
それはとんでもない誤りでした。
作者・安西冬衛さんは
ロシア大陸側にいて、
重い病を得て、日本に
帰られないでいました。
そんな自分の代わりかのように
蝶々が一匹、
寒さ厳しい韃靼海峡を、
日本の方へ飛んでいったのです。
いや、この俳句ももしや
イマジネーションかも知れません。
でも、肝心なのは、
蝶々が日本からロシアに、
ではなく、
ロシアから日本へ飛んでいく様を
詠んだ俳句だということです。
しかも、詠んだ作者・安西冬衛は
病を得て、ロシアで足止めを
くらっていたということ。
そういう背景を知った上で、
改めて読み直すと、
この作者の思いが具体的に
伝わってきますね。
でも、また俳句というのは、
自由に読んで愉しむこともアリです。
蝶々が、寒さ厳しい北海道から
ロシアに渡っていく、
という壮絶なイメージで
解釈して、味わうのも、
また、アリではあるでしょう。
でも、やはり
ロシアから日本へ渡る蝶々に
羨ましさを募らせたり、
いつか自分もそうなりたいと
自身を投影したり、
やはり、そちらのほうが
きちんと腑に落ちますね。
なんだか、韃靼海峡を
ひと目観たくなりました。
てふてふのように、身軽に。
それにしても、勉強不足でした。
俳句は奥が深いですねえ。
いや、私が不勉強過ぎました。