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【書く悩み】信頼できるノンフィクション作家・高橋秀実

今日は朝から、スマホには
詩人谷川俊太郎さんの死去の
ニュースが入ってくる。

いつかは谷川さんのことも
書いてみたいけど、
一週間前に亡くなった
ノンフィクション作家
高橋秀実さんについて
今日は書いておきたいんです。
  
高橋秀実さん。
書く対象について
いつも真摯過ぎるところが
魅力的なノンフィクション作家。

大抵は、ノンフィクション作家って
自分の得意分野というか、
専門分野を持つものですが、
高橋秀実さんは
いつも専門分野を持たないまま
その時その時に疑問に思ったことが
「専門分野」みたいな人でした。
珍しいことです。
 
ドラマにもなった
開成高野球部のセオリーに迫る
『弱くても勝てます』や
無趣味の人間には生きづらい
日本社会の本質に迫るべく
いったい皆はどうやって趣味を
作っていくのかを描いた
『趣味は何ですか?』。
日本は果たして本当に
民主主義なんだろうか?
沖縄米軍基地や
原発の地元や、
諫早干拓など、
マスコミが報道する現場は
果たしてどうなのか?に迫る
『からくり民主主義』。

ちなみに、最後の本の文庫版には
珍しいことに、村上春樹が
解説文を寄せています。

村上春樹によると、
いつも高橋さんは
「ああ、弱りました、困りました」
といいながら、
その時その時の
取材対象の現実の矛盾や困難について
汗を拭き拭き、話していたという。

ノンフィクションは、
生きている、生の現実に
ぶつからざるを得ませんよね。
自分の足で、
現場の現実を取材し、
情報を集めれば集めるほど、
ものごとの真相は迷走していく、
と村上春樹は書いている。
『アンダーグラウンド』を
書いた時にそうだったから。
 
でも、だからといって、
いつも困っている高橋秀実さんに
「お仕事なんだから、
シロクロつけて、結論を
それらしく書けば、
編集部も読者も分かりやすくて、
喜んでもらえるのでは?」
とは村上春樹もアドバイス
しなかったらしい。
その五里霧中を超えた先に
真相がみえてくるものだから。
ノンフィクションは大変だ。
 
noteを書いていても
それに似た迷走シーンに入ることが
たまにありますね。
そうなると、絶対に時間がかかるし、
混乱や矛盾に囲まれるし、
シロクロさせられない。

ノンフィクションとして
誰もが納得できる結論に至るには、
辛い五里霧中を
経なければならないのか。

いつも「ああ、困りました、
弱りました」と汗を拭き拭き
ノンフィクションの困難を語る
高橋秀実さんは、
だから信頼できる気がするんです。

さかしらだって、
なんでもすぐにシロクロつけ、
自分と反対の立場の人を
バカとか決めつける人間が
ずいぶん増えましたが、
そんな人の話はちっとも
信頼する気になりません。

そんな時代にあって
高橋秀実さんは信頼できる書き手でした。
亡くすのが惜しい人物でした。

こんなノンフィクション作家は
なかなかいません。
みんな、すぐ結論をだそうとする。
スマートな結論を欲しがる。
また、自分の足で情報を集める人も
このネット時代には少ないでしょう。

だからこそ高橋秀実は貴重だった。

noteを書きながら、
色々と調べて書いていく時、
自分は手を抜いていないか?
ベタに流されていないか?
チェックしたい時、
高橋秀実さんの生真面目さを
思い出してみる。
一人の書き手の在り方が、 
かがみになる。
惜しい人を亡くしました。
62 歳、まだ若かった…。
合掌。

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