まだ間に合うと思った人だけが間に合う

こんにちは。シンガポールである企業代表をしています、31歳です。

前回の「すべての~」はふざけたタイトルでしたが、盲腸の怖さを知ってもらって心の準備をしてもらう、という目的が一応あったわけです。

今回も何のタイトルかわからないでしょうけど、だいぶニッチな話題です。途中で「何の話これ」と思われる方は流し読みしてください。

今回はシンガポールで人材紹介業を営もうとすると必ず取得しなければいけない資格の話。Certificate of Employment Intermediary(以下、略)。日本語訳をするとCertificateは資格、Employmentは雇用、Intermediaryは仲介。雇用仲介者資格、となりますね。知らんけど。一応、リンク貼っておきます。

2011年4月に改正職業紹介所法が施工されこのCEIの取得が義務付けられました。この試験、年々難易度があがっています。シンガポールで働きたい外国人が増えているのでより優秀な人材を選別しようという政府の狙いなようです。

さて、なんでこの話題?と思われたかもしれませんが、目的は一つです。それは、この試験合格がどれだけ大変だったかという苦労を共有して「偉かったね~」と言ってもらいたいため、です。完全に自己満足のマスターベーションです。では、この試験の概要をさらっとお話します。

試験のルール

冒頭にお話ししたように、政府指定の資格試験なので、国家資格といっても大げさではないかなと思います。試験はだれでも受験できます。オンラインで申し込み、日付指定、時間指定(9:00~と14:30~の2パターン)、氏名やパスポートナンバー等の個人情報入力をした後、受験料支払いのページに遷移してクレジットで決済して申し込み完了です。

細かい資格の種類もあります。CEIというのは全体の総称で、その中にKey Appointment Holder(KAH)とBasicという二つに大別されます。そしてそれぞれに3つ種類があります。Comprehensive all、Comprehensive non-FDW、そしてComprehensive without EFMAです。こんな感じですね。↓↓↓

◆CEI (KAH)-Comprehensive Licence (All),Comprehensive Licence (non FDW),Comprehensive Licence (Local)

◆CEI(Basic)-Comprehensive Licence (All),Comprehensive Licence (non FDW),Comprehensive Licence (Local)

KAHというのは言わば人材紹介会社の責任者的な立場の人が取得しなければいけないもので、KAH保持者が必ず一人はいなければいけません。もちろん取得難易度=試験難易度も最高レベルです。

試験難易度

本当に難しいんです。どれだけ難しいか今から書いていきます。そうですね。CEIっていうとわかりにくいので、皆さんのお仕事で急遽「弁護士資格取得の義務化」がされたとイメージしてみてください。弁護士って・・・。って思いますよね?弁護士=法律の専門家、ですから、雇用法とかの専門家って思えばあながち間違っていない例えかもしれません。

そして全部英語ですから。出てくる単語も半端じゃない。Enforcement(執行する)、Adherence(順守)、Discharged(退院する)、Unsubsidized(処方されていない)、Reimbursement(払い戻し)、他にもたくさん。全部知らんし見たことない。最後に受けたTOEICは10年前に840点、カナダの大学に交換留学1年間レベルのなんちゃって英語スピーカーな私にはハードルが高い単語の数々。

試験範囲。ありますよ。「はい、じゃあ次回の試験範囲は教科書のP20~56ね~。範囲広いけど頑張ってください」・・・とかっていうレベルじゃないから。

Employment Agencies Regulatory Framework (EARF)
Employment of Foreign Manpower Act (EFMA)           Contract Law (CL)
Competition Act (CA)
Employment Act (EA)
Work Injury Compensation Act (WICA)
Immigration Act (IA)
Central Provident Fund Act (CPFA)
TAFEP / Fair Consideration Framework
Prevention of Human Trafficking Act (PHTA)
Personal Data Protection Act (PDPA)              Employment Act (EA)

え?待って、ページとかじゃないの?と思われたあなた。はい、違います。六法全書より多いんですよ。もちろん雇用や労災、個人情報保護等に係る法律に限ってますけど、テキストも4冊あります。

試験の内容

オンラインで申し込みます。約170SGDという決して安くない金額です。日本円だと13,000円くらいですかね。資格の種類によって問題数が違います。私が受けたのは最も問題数の多いCEI(KAH)。一般の人材エージェントであればCEI(Basic)です。(企業によってローカル人材、外国人メイドを採用する場合は上記で記した3つの種類があります)

試験問題は全80問。セクションがA,B,Cの3つあります。Aが45問、Bが30問、Cは5問ですが、各2点。合計点数85点のうち70%以上で合格です。

しかしこの試験。一つやっかいなルールがあります。それは「一度目が不合格だった場合、二度目以降の受験の前に、決められたコースを受講しなければならない」。

このコースというのがMOMのサイトにも記載がありますが、3つの学校で開講されています。各レベルによって必要受講時間が異なり、私の場合は40H。平日5日間、毎日8時間の授業を受けなければいけません。

まんまと1度目の試験が不合格だったため、このコースを受講したわけですが、正直「けっこう辛かった」です。

コース受講

私はSingapore Polytechnicで受講しました。専門学校?大学?に相当するpost secondary educationです。最寄り駅はMRT Dover駅から直結でした。この駅は市の中心部から電車で約20分のところにあります。

何が辛かったかって、朝9時から授業!ってこと。早起きは自信があるけど、夕方6時までってなるとめちゃめちゃ疲れる。しかも授業はいろんな人種の先生が来て、その英語はもうクセだらけ。大クセteacher陣。早口で聞き取れない中国系、ヌメヌメした英語のアラブ系、割と聞き取れるスパニッシュ系。その英語になれるだけで授業時間の3分の1は使う。英語できるって言っても大学時代に勉強してただけだし、感覚で聞き取っても成り立つ日常会話とは違ってやはり授業。周りの受講生はシンガポール人が多くてバンバン質問しよる。毎日ヒーヒー言いながら、ついていくのにやっとでした。

再試験、再試験、また再試験

結論から書いてしまうと、私は初受験から5回目にしてようやく合格することができました。不合格も3回目となると本社の人たちの見えないプレッシャーとも戦わなければいけません。どれだけ「難しいんだよ!」と訴えても「そうか、でも頑張れ」しか返ってこないですからね。

6月の下旬にシンガポールする前に2回受験して、入国後に3回。苦節半年間かけて受かった時は、思わず試験卓で「Yes!」と小声でガッツポーズをかましました。

合格のコツ

ありません。まじで。模擬試験も探せばいくつか売ってますしそんなに高くないですけど、役に立ちません。一発合格を狙うなら、先にコース受講をするか、MOMのサイトを隅々まで読んで覚えるだけです。

あ、一つだけあるとしたら英単語は絶対暗記した方が良いです。僕は当初、暗記ばかりして点数があがりました。オンラインの暗記ツールは下記を使いました。Quizlet。Excelで単語を管理できるので、使いやすかったです。無料です。

余談

シンガポールってよく言えば統制・規制が取れている国なんですが、裏を返すと「融通の利きづらい」国、という印象です。こんなことがありました。

試験日当日。周りには5~6名ほどの受験者。試験開始後3分経過したころに、一人の男性が立ち上がりました。何やらぶつぶつ言いながら、試験官のところに行き話しています。何やら話した後、残念そうな顔をした試験管とぼうぜん自失気味の男性。どうやら誤って「submit」ボタンを試験開始3分で押してしまったらしいのです。もちろんこの男性の試験はそこで終了。融通は利きません。当たり前でしょ、と思うかもしれませんが、いざ当事者になると「まじか」ということはありますよね。

この試験を通じて

最初の方が重たくなって、後半さらっと行きましたが、この試験の合格が難しいということはご理解いただけたでしょうか。何度も言いますが、シンガポールという国は融通が利きませんので、ルールにのっとってやれば問題ないけど、ルールを外れてしまうと良いことがありません。法律も厳しいです。ただリスペクトできるのは、ちゃんと最初から厳格にルール作りしてローンチしているので、あとから「規制追加」してもそんなにブーブー言う人、少ないんじゃないかなって思います。(まだ3か月も経ってない私が言うので異なる意見の方ももちろんおられると思います。)

対照的に日本は、とりあえず発射して、あとから追加する前提のルールが多い気がします。どっちが良いって話ではないですけど、歴史は繰り返すという言葉もあるように、過去に厳格な法律があった日本が戦争や経済成長を経て今があるなら、2020年をデジタル元年と位置付けている政府もここらでちょっくら「バンッ」って大きく舵を切るような政策をしても面白いんじゃないかと思いますよ。どうせオリンピックも不発(なのかな)、コロナ禍で経済も鈍化しているんですからね。菅さん。1年で燃え尽きるくらいの批判覚悟でやってみてください。どうせ全員は幸せにできないですから、この機会に全企業が在宅勤務義務化して週3以下出勤、在宅のデジタル設備費用投資、etc...

ちょっと政治よりの話になりそうなので戻します。

とにかくこの試験を通じて思うのは、30も過ぎて資格取得するなんて思ってもなかったですけど、必要に駆られて試験勉強してみると大変だけど達成感がすごい。資格が生かせるとかではなくこれがないと仕事の9割ストップするので仕方ないですが、視野が広がりましたね。ITとかIoTとかの人材はもちろん取り扱うのでそういう専門知識の資格とかも興味ありますし、英語も気が向いたらTOEICとかTOEFLとか英検1級とか受けてみようかなと思います。

本田宗一郎だか、ブルーハーツの甲本ヒロトだか、どこかの筋トレを始めた70歳の老人が言ってました。「何かを始めるのに遅すぎるということはない。遅すぎるかなと悩む時間が無駄だ。まだ間に合うと始めた人だけが間に合うのだ」

これが好きだな、情熱を持てるな、と思うことがあれば何歳になっても挑戦していたいですよね。

では今回はこのあたりで。


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