文化/芸術分野におけるファンドレイジングの可能性
~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~
最近、分野別のファンドレイジングが日本でも活発化しています。例えば、福祉や大学、アートといった分野です。そのなかで、博物館や美術館といった文化/芸術分野のファンドレイジングが少しずつ伸びている印象です。
日米の博物館/美術館への寄付
欧米の博物館/美術館では、年間で数十~百億単位の収入を上げており、アメリカではスミソニアン博物館が金額では最も集めている模様です(5年間で17億9,000ドル|日本円で約1,800憶円)。
日本でも、クラウドファンディングやふるさと納税を行う博物館/美術館が増えておりますが、恒常的に寄付集めをしているところはまだまだ少ない印象です。
参考:
『国立美術館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、そして国立新美術館の5館)で、寄付金収入が6億5000万円』
https://toyokeizai.net/articles/-/191596?page=3
価値創造型と課題解決型
文化/芸術分野のファンドレイジングにおいて、「価値創造(提供)型」というキーワードは切っても切り離せない感じがあります。国際協力系などは「課題解決型」ともいわれ、この二つの「型」はしばしば対比されます。
私の感覚では、NPO/NGOの多くは「課題解決型」になるのではないかとみています。明確な「困った」があり、それを解決するために活動している。寄付はそのために集める。という繋がりです。
一方の「価値創造(提供)型」の出発点は「困った」ではありません。自分たちの活動を通じて、人々や社会に新たな価値を提供・創造します。寄付は、その活動に共感し応援するために集めます。例えば、博物館/美術館は展示活動を通じて、来館者に感動を与えます。楽団はオーケストラを通じて、映画館は映画を通じて、競技団体はスポーツを通じて、感動を与えます。
しかし、ここで寄付集めの要素がすんなりと溶け込めない難しさがあります。
「応援」と「社会的価値」を組みわせる
博物館/美術館、楽団や映画館はいずれも、提供側と受益側とが金銭を介したトレードが成り立っています。そのため、自分は「なぜ寄付する必要があるのか」が分かりにくいことです。対比される「課題解決型」であれば、明確な「困った」対象のために寄付するのが動機になります。
ここを埋めるキーワードは「応援」と「社会的価値」です。例えば、自分の地元に美術館建設の話があったとして、寄付の依頼を受けたとします。自分が美術が好きであれば、応援したい気持ちが生まれるでしょう。また、その美術館のミッションが"アートを通じて、新しい価値を地域に生み出し、地域活性の拠点となる"であれば、美術ファンでなくても社会的な意義に共感する人はたくさんいるでしょう。
ちなみに、「社会的価値」は文化庁の 『文化芸術推進基本計画』にも組み込まれている模様です。(少しニュアンスは違うかもしれませんが)
文化芸術推進基本計画-文化芸術の「多様な価値」を活かして,未来をつくる-(第1期)(平成30年3月6日閣議決定)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/hoshin/pdf/r1389480_01.pdf
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