クワンチャイ創業時にはタイ料理が今ほど知られていず、大阪の東梅田の裏すじに1店舗、神戸の北野に1店舗と店も数えるほどしかありませんでした。
クワンチャイも当初はトムヤンクンやグリーンカレーの名前はご存じでも、いざ食べてみると、辛い、臭い、甘いとお客様からクレームの嵐を受けました。
売り上げをあげようとタイ料理では珍しいデリバリーを直営で始めました。あるご居宅に年末配達に行った折り『タイ料理のクワンチャイです』とインターホンを通じてコールしたら留守番中のおばあ様が『うちはお頭付きの鯛(タイ)なんぞ頼んでいない』と追い返される始末。頑古なおばあ様は強硬でした。当時は今のタイ料理ブームは全く想像できませんでした。
お客様も、来店されても料理をご注文されるにも中々判断が出来ない。
そこで僕は日本で馴染み深い餃子をタイ風にターメリックやタイハーブを使った『タイ餃子』として作り替える事を考え出しました。当時働いていたタイ人コックは『タイには餃子なんて無いから作るのは嫌だ』と反対しましたが、『とにかく作ってくれ』と指示しました。これが何故か良く売れました。
日本人の好きな物をタイ風にアレンジするとお客様は注文しやすくなると確信したのがこの『タイ餃子』です。クワンチャイでは定番料理ですし、タイ人コックさんも嬉々としてタイ餃子を仕込んでいます。近年、大阪王将がタイに出店したらしいですが『羽根つき餃子』でも提供しているのでしょうか。
料理は常に進化しています。インバウンド全盛、SNS全盛の日本、世界では情報が瞬時に駆け巡ります。料理も人も混血がどんどん増えて多国籍化が進んでいます。世界各国の良い料理、美味しい料理を、(今はタイ料理に特化していますが)取り入れながら気象変動や、時代に合わせ、時代を作り替える事こそ料理人冥利だと考えています。