フラワーアレンジメント 百花繚乱
パリで友人へのプレゼントを購入しようとこじんまりした花屋さんに入店。そこで、僕なりにお花を選んでブーケを組んでもらった。その店のオーナーがムッシュ バヤールさんだった。変に僕の花選びを気に入ってもらって彼が理事長を務める、エコール ド フルーリスト ド パリ(EFP) という国立のフルーリスト養成学校への日本人留学の窓口を仰せつかった。
日本では1年くらい週2~3回を学んでいただいて、フラワーアレンジメントとデッサンの試験を行い晴れて合格したらEFP留学と相成る。東京と大阪で試験を行い、多少デッサン力のある僕も採点に参加した。5~6年間EFPへの生徒送りを行い合計150名位はEFPの修了証書を手渡せたと自負している。
一度、学習態度が悪く美的センスの乏しい東京校のAというお嬢さんが、EFP留学試験を受けられた。スタッフが『彼女は有名な女性誌の編集長の娘さんだからゲタを履かせて』と耳打ちしたが、僕はAさんを落第にした。お花の扱いがゾンザイだったことが許せなかった。花には生命がある、命を吹き込むことがフローリストの仕事なのに心が無い人はダメと頑として拒否した。
花の都パリでは無いが、街は鳩の糞も多く薄汚れているが花屋さんは多い。キザなパリ野郎はプレゼントにブーケをプレゼントする事が多いのだろう。
ウイークエンドマーケットに行けば地方から持ち込んだ様々な切り花が所狭しと売られている。日本の様に着色をした花は少ないが大小長短様々だ。
日本でも小綺麗な花屋さんが増え、お土産にブーケを持参する人も増えた。
花が身近にある事は素晴らしい喜びだ。日本でも華道は育ったが、殆どは床の間の花、仏事の花だ。片面から愛でる生け花が多い。最近でこそ著名なフラワーアレンジメントの先生は増えているが、欧州ではブーケはもとよりテーブルの中心に陣取るフラワーアレンジメントが多い。日本も同じ傾向だ。
花には全て表情と香りがある。料理は調理して皿に盛りつけて食べたら終了。いくら美しく盛りつけて、素晴らしい香りがしても刹那で終わる。
勿論、農薬がかかった花を料理に盛りつける馬鹿もいるがこれは邪道だ。
お花はアレンジして包装して、手渡して、花瓶に入れて1週間は愛でる事が出来る。陽のあたり方、水の加減で蕾が咲き花びらが散り表情も毎日変わる。その上、葉脈の香り、花弁の香り、そして散り際も日毎に美しい。
僕は病に伏している母には、手作りの料理やジェラートを食べさせることが難しくなっているので、週に1回はお花を病床に届けてフラワーアレンジメントしている。そして花の表情の移ろいと、香りを存分に愛でてもらう。
バヤールさんが言っていた。シゲル『花が一番美しいのは散りゆく時だ』と