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夜想樹

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Visions of Trees

Visions of Trees

 夜、暗いピントガラスにむかって、冠布をかぶる。外界よりなお暗い囲われた空間のなかで、ようやく木の輪郭を見つけ出す。
 冠布の外の人たちにとって、僕のしていることは不可解に違いない。雑踏の中で黒い布をかぶって、いまどき写真館でも見ない蛇腹のカメラで街路樹にむかっているのだから。
 「何してるんですかー」、と当然よく話しかけられる。何気ない質問。酔っ払いの絡み。職務質問。激励、苦情、はたまた怪しげな

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夜の木のかたわらで。

夜の木のかたわらで。

 長時間露光では、街は超現実の様相をみせる。人工光はスペクトルに忠実に光を溢れさせるので、画面はどうしてもサイケデリックになる。そのためか写真展の際にも内容よりも技法への質問が多かった。いささかそれにはうんざりもしたが、隠し事もないので、撮り方云々にはすべて答えるようにした。
「繁茂」の写真で10分以下の露光時間のものはない。結果として信号機はすべて灯り、あるいは多重露光のタイミングによって赤と青

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「樹木台帳」

「樹木台帳」

 街路樹の歴史は意外と古いらしい。一説には、紀元前からヒマラヤ山麓の街路に樹木が列状に植えられ、中国では周の時代にすでに壮大な並木があったといわれている。日本には遣唐使によって街路樹の様子が伝わり、奈良時代には畿内七の幹線に果樹が成る並木があり、行政による街路樹はこのころ始まった。

 現在街路樹は、「道路の付属物」と法的には位置づけられ管理されているが、それは結構厳格に管理されているのである。

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さがしもの

さがしもの

 河南中州皇冠賓館(賓館は簡体字)とかかれた赤いボールペンがあった。作家のリービ英雄さんと取材で開封にいったときの鄭州にあるホテルの備品だ。
 中国には学生のころ、まだ開放都市の制度があった80年代に初めて行った。その後行く機会はあまりなかったが、その取材旅行を切っ掛けにまた行くようになった。「プライベート・チャイナ」の撮影の最にもこのホテルには世話になったし、リービさんも鄭州をベースにするときは

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