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読書記録2:開高健、丸谷才一、

「戦後思想の到達点: 柄谷行人、自身を語る 見田宗介、自身を語る」(シリーズ・戦後思想のエッセンス)
●史的唯物論では、社会構成体の歴史が生産から考えられているが、資本論では、交換から考えられている。交換は共同体内部での交換ではない。見知らぬ、不気味な他者との交換である p49
●交換に伴って生じる観念的な力(フェティシズム)。共同体と共同体との間での交換には、相手を強制する力が必要。マルクスは資本論で「物に霊が付着する」といったが、交換を強いる力は霊のようなもの p53
●新自由主義という仮象に対して、共産主義は交換様式Dとして、「統整的理念」として存在し続ける p83 すべて柄谷の発言。6

「我が愛する詩人の伝記」(講談社文芸文庫)室生犀星
●「詩人の伝記を書いているが、自分のことを書いてしまう」
●高村光太郎。大雑誌より同人誌。60歳の性欲
●萩原朔太郎。母親思い
●釈迢空。顔のあざと藤井春洋
●堀辰雄、女性ファンからの贈り物。「8年間もものを送り届けるということは、その人がその心におかれた言葉を送り届けてくるということなのである」
●立原道造。詩のストック。「命のたすからない人の手」
●「えらい人間はどんなときにも、えらい自分を忘れているものではない」
●詩も小説も「巧みに溶かして盗む」
●「詩人ははやく死んではならない」8

「孔子・老子・釈迦「三聖会談」」(講談社学術文庫)諸橋轍次
●仁とは、公平に人を愛すること p247
●中心を失わないために p197
●而と中庸 p202
●君子は時に中す p204
●人の行動は学によって中正妥当を得る p215
●谷は不思議な女 p43
●孔子と隠者 p82
●母にやしなわるるを尊ぶ p118
●君子は義にさとり、小人は利にさとる p120
●郷原は徳の賊 p129
●民、信なくんば立たず p237 6

「小林秀雄対話集」(講談社文芸文庫)
●できあがりから見ていくやり方 p221
●文章は人間の手足のようなもの p294
●ドストエフスキーの人物の体臭と、サルトルの人物の観念性 p204
●アリョーシャ、悪の観察の果てに現れた善の幻 p34
●正宗白鳥、シェストフ。「平素、自分が漠然と考えていたことが、漠然と書かれている」p92
●現代の男性的教養は、深い意味での情緒を欠いているから、理論的でいて、センチメンタルに、空想的になる p216
●数学者はシンボルを操作しているだけで、考えていない。ほんとうの考えは合理的にはいかない p326 7/10

「直観を磨くもの: 小林秀雄対話集」(新潮文庫)
●天理教、お光りさま、母親孝行のための信仰、今日出海 p485
●壺から眺められる経験 p379
●実物と肉眼との微妙な関係 p385
●人間が正直で率直でいればいつも起こす疑問 p14,142
●認識の対象と作用とが同じところまで p71
●道具的に言葉を使う p77
●正確でない散文はつまらない p192
●プロセスがわかっていないので、技術の問題ではなく原理の問題である p117
●坂口安吾のものは底にちがったものがある(折口信夫)p237
●正宗さんとの対談 p347
●水上勉による宇野浩二伝 p474 7

「地球はグラスのふちを回る」(新潮文庫)開高健
●シカは波のように、ウサギは藁火のように走ってゆく p38
●漂えど、沈まず p291
●幸田露伴、利根の葦の一本と化しきる p213
●むっちりとうるんだような亜熱帯アジアの空 p253
●二流文学でway of feelingを知る。一流文学は普遍性があって昇華されている p285 7

「白いページ I」(角川文庫)開高健
●奄美では、死ぬことを「お湯が飲めなくなった」という p64
●岩清水の味と、味の変化 p13
●山菜 p31
●きだみのる p33
●戦争を続けるための条件 p88
●赤十字の矛盾 p99
●当事者と非当事者の間の深淵 p102
●闇と光彩、シャルトルの大聖堂のステンドグラス p131
●ノンフィクションと小説家 p152
●北海道の黄昏のすごさ p172
●本当に書きたくて書いたこと p5 6

「白いページ II」(角川文庫) 開高健
●寿屋の東京支店、茅場町、運河沿い p197
●空腹で身体のふるえが止まらない p114
●井伏鱒二の巻物 p87
●作者が対象にどれだけ熱くなっているか、そして制御しているか p18
●モーム。外国人を知るには二流文学を読め p34
●古本屋の雰囲気 p49
●シモーヌ・ヴェーユの労働体験 p119
●ノミがいなくなれば犬は自分が犬であることを忘れる p204
●清水信による解説。開高健のしたり顔 p263
●清水信による解説。開高健は思考や行動がひとこまずつ早い p264  6

「白いページ III」(角川文庫) 開高健
●匿名欄。末端にこそ真実はあらわれる p43
●きだみのるの集中食 p52
●スパイ小説 p85
●蘇東坡は食いしん坊の詩人 p97
●幸田露伴。松江の鱸魚。露伴によるとその缶詰は「ドンコ」だった p98
●ケイ魚かケツ魚か p98
●ウミガメのモツ煮 p165
●カマボコ屋 p187
●ところてんと、辛口の日本酒 p199

「ずばり東京」(光文社文庫 か 40-4) 開高健
●武田泰淳からのアドバイス「ルポを書きなさい」 p9
●三宅坂の飯場 p150
●出稼ぎ者が田舎に帰るときはよい服を着ていないとダメ p154
●佃島、トキヤーイ(というかけ声)、闘鶏 p116
●練馬の農家、育てる野菜は3年周期 p67
●寝床で2人で差し向かいで焼きいもを食べる p82
●トンボのように永遠感覚を頭の周りに飛ばしつつ p103
●女性のほうがしぶとく抵抗する。軽さと執拗さのつながり p185
●見ることはその物になること p251
●東海道新幹線工事での死者数は211人 p348 6

「世界史の実験」(岩波新書 新赤版 1762)柄谷行人
●柳田国男。子孫をもうけることなく死んだ戦死者たちを、養子とすることの提案 p87
●知らないわ、のわは一人称の人称代名詞。「知らないわ、ゆえにあるわ」p103
●柳田。養子制。日本の先祖信仰の特徴は、死者が母系・父系のような血のつながりがなくても、養子や結婚その他の縁故があれば、祖霊の中に入れられること。双系制は出自や血縁よりも家を、人よりも法人を優位におく考えをもたらした p173
●日本における統治者の正統性は連続的で無窮であることに基づく。鎌倉期以降に生じた万世一系の天皇制の観念 p194  8

「文学ときどき酒 - 丸谷才一対談集」(中公文庫 ま 17-14)
●友達から来た手紙のように読めないなら、本を読む意味はない(吉田健一)p19
●日本でフランス文学の翻訳がわりとうまかったのは、岸田国士が下訳した模範仏和大辞典を使ったから(河盛好蔵)p41
●谷崎が好きだったエビ酒(エビの頭をフグのひれのように使う)p88
●藤原俊成にはほとんど駄作がない p100
●ウェイリー訳の源氏物語、正宗白鳥 p174
●パウンドの能の訳はいいが、印税にうるさい(ドナルド・キーン)p217
●ジョイス。おれの書いた本を読むのに、人は一生かけてもいいはずだ p265   8

「新・東海道五十三次」(中公文庫 た 13-10)武田泰淳
●うみだしてくれる国民の労苦を忘れて、うみだされたものの上にあぐらをかいて、文明人ぶっている消費者の「自由」p61
●大岡昇平「武田の小説はへただな」p79
●深沢七郎「本物の百姓はうんと欲張りじゃなきゃつとまらない」p112
●反詩情がかえって旅心になることもありうるのではないかp134
●百合子「男は反省するからだめ。女は自己の正しさばかり主張するから、事故のときは女のほうが強いのよ」p177
●真宗高田派、丹羽文雄 p260
●中目黒のガスタンクの下にある私の父の寺(長泉院、夫妻の墓も)p344  6

「シェイクスピア」(新潮文庫)吉田健一
●シェイクスピアの文学は、ポオ以降の近代の文学理論を適用できない p92
●英国の作詩法の基本形は抑揚五歩格(で1行)。ブランクヴァース、脚韻を踏まない抑揚五歩格 p11
●フランスの劇は、観客の喝采に応えて台詞を繰り返したりする。客は上流階級の教養ある人々 p18
●フォルスタフ的な人物の創造、人間らしい人間の生命感を作品に取り入れることによる文学の創造 p56
●ソネット、男色 p75
●ハムレットの孤独、オセロの野生、リア王の悪と悲しみ、マクベスの諦念
●人間というものの虚無 p234 7

「男ごころ」(新潮文庫)丸谷才一
●ヴィクトリア女王のひげ好き p31
●モムゼン、ウェイレイ p44
●日柳燕石、博徒の漢詩人 p85
●日本人のミニチュア趣味、根付け、発句、絶句、小本、文庫本 p126
●山本健吉「日本詩歌集」p141
●フレイザー「サイキス・タスク;俗信と社会制度」p147
●文士伝、世説新語 p175
●ライトヴァース p209
●対談の名手、武田泰淳、山崎正和 p212
●「マリノフスキー日記」小説を読まないように努力 p257
●植村清二 p203
●吉田健一が好んだ酒はマール p201
●幸田露伴「七部集評釈」p236 7

「ザ・ヌード」(ちくま学芸文庫)ケネス・クラーク
事物を適切に、よくよく見て、考えて、秩序づけるという仕事の見本なのだと思う。学生の頃に読んだときは、ここまで感動しなかった。10

「わが胸の底のここには」(講談社文芸文庫) 高見順
出生の秘密と過去の様々な恥と、そうしたことを告白することへの羞恥が混ざっていて、「可哀想な私」に浸ることのできない、自己に対するメタ的な視点を持たずにはいられない、インテリの宿命を感じる。とはいえ冷たく狡い感じではなく、知性と感性を総動員して自己を剔抉しようという熱量が感じられ、百年前のことなのに読んでいてとても人ごととは思えなくない。

「阿部一族」森鷗外
電子書籍にて。初めて読んだのは中学2年のとき。何が書かれているのか、わけがわからない「小説」に初めて出会い、子どもなりに懸命に理解しようとした。その後、難解といわれる小説をいくつも読んできたけど、それができたのは、「阿部一族」を読んだ経験があってと思っている。10

「大菩薩峠」(全巻)中里介山
紙の本では半分までで終わっていたが、電子書籍化されて全巻読破。多摩の誇り! 10

「Ambarvalia/旅人かへらず」(講談社文芸文庫)西脇順三郎
「旅人かへらず」はやっぱり好き。しかし、「近代の寓話」「第三の神話」「鹿門」「人類」……の、後期、というか年をとった西脇も捨てがたい。後期は文庫本がない。10

「草書で書かれた、川」吉増剛造
だいたい年をとってからの詩人の詩が好みなのだが、吉増剛造さんの「草書で書かれた、川」(1977)は例外。手元にないので確かではないが、講演集(かエッセイ)の「ことばの古里、ふるさと福生」という本を読み、この詩集の秘密に少し触れた記憶がある。多摩の誇り、その2。

「Collected Poems of Jack Gilbert」
電子書籍。「毎朝ぼくは歩く。完全無欠な蘭に憧れる虎たち、そして優美な川に出会うことを期待して。/しかし、実際は、/大きな外国の木々、そしてウミガメたちが/ぼくの生活を燃やし尽くす。/ぼくの血の中にある/ローマ人の休息を損ない、停止させた、/あの優しいシダ類が奪われる。/ぼくの血の中で一晩中/彫像たちが計画を言い渡す。」しばしば日本語に置き換えて楽しんでいるが、日本語に置き換えなくてもずっと楽しむつもり。10

「Stray Birds」タゴール
電子書籍。横浜の三渓園に滞在したことがきっかけとなって生まれたという短詩集。タゴールの目が、耳が、日本の風土に触れている。三渓園の、関東大震災で崩れた屋敷跡をみると、必ず読みたくなる。10

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