その家の
白壁に
寒椿の影
落ちる
芝生に
細かな石
混じる
有明の
月に抱かれ
わづかに傾く
階段登る
裏山
こぶしの花
開く
つぐみの一群
藍色の空
横切る
まな板
叩く音
聞こえる
柱に背
もたせかけてゐるのは誰?
それは
幸福の人
前後に2つの顔をもつ人
旅人
その旅人に
スパイスたつぷりきいたスープ
施してくれた人
彼ら
彼女らのために
祈る
願ふ
ありつたけの
素直な心で
そして
一切の思ひ出
フアイルする
一つの箱に
しまひ込む
その箱
誰も見つけえない場所に
隠す
それから
ノツクする
その家の
古い扉を。