この世界どこもかしこも
些細なことに
主義主張
持ち出す
根拠が何かと
しきりに
問いたがる
そんなお人にゃ
あの闇薬
もっちまえ
と
大酒飲みの
おんな
が言った
おんなの口癖
(この世界
どこもかしこも
酷すぎる)
群衆なす大人
乳歯の生え揃わぬ子
毛むくじゃらの犬
耳が妙に長い猫
世間知らない美女
暗い目伏せた中年男
それら選び
選ばれて
汽車で運び
運ばれた
過去
刻まれた
町で
闇薬ないなら
せめてメシ
喰わせてやれ
うるさいお口も
食べてる間は
おとなしくなる
と
おんな
(この世界
どこもかしこも
酷すぎる)
おしゃべり
世界をつくる
ただ
声高のおしゃべり
漏れる
溢れる
咎める
涸れる
岩間から清らな水
滲み出す
語らぬことで
伝わる
だから
おしゃべりは
小さな声で
と。
(この世界
どこもかしこも
酷すぎる。)