見出し画像

2024年度 男子サッカーインターハイ決勝トーナメント メディカルサポート

はじめに

メディカルサポートに参加したスポーツ医学塾生

2024年7月27日から8月3日に福島県で行われたサッカーインターハイにスポーツ医学塾は大会全体の救護スタッフとしてメディカルサポートをさせていただきました。多様な学部/学年から構成される弊塾の塾生総勢28名が参加し、役割を分担しながらサポートいたしました。活動前には、学生間で事前に予想できる怪我や対応、各会場の情報や懸念点などまとめ、サポートをするにあたって万全の準備を行いました。


会場での救護活動

活動内容

今回のメディカルサポートでは主に試合中の選手においての初期対応の補助や来場者の熱中症に対して救護対応、看護師の方の補助・連絡、救急搬送時の大会本部との連絡、担架隊への指示をさせていただきました。各会場のAEDの場所や担架、車椅子の有無、熱中症の方が休憩できる場所などを確認することで、スムーズに対応できるよう準備してまいりました。

試合中の選手対応において

試合中ピッチ上の選手の怪我において各学校のトレーナーの方とコミュニケーションを取り、必要に応じて会場の看護師の方に連絡を取りました。その中で対応の補助や対処方法の提案、クリニック・メディカルセンターまでの引き継ぎ等をサポートいたしました。
ピッチ内で担架が必要な場面では、担架隊に適切な指示を出し必要に応じて担架搬送を行いました。

観客において

猛暑の環境の中で観客が熱中症になる可能性が高いためハーフタイムや給水タイムに観客席を見回りを行いました。その際に水分・塩分補給等熱中症対策を呼びかけ、熱中症疑いの人がいた場合には救護所へ引率し看護師の方の指示に従い対応致しました。また、見回り中観客に熱中症についてのアンケートにご協力いただき、暑熱環境下でのスポーツ観戦者の熱中症対策意識を確認する事ができました。ヴィレッジ内のすべてのコートを回りながら観客の対応や観察を行い、具合の悪い人を見つけたら担当者に連絡する移動救護も行いました。


熱中症対策アンケートの実施
会場見回りの様子

活動報告

大会期間中の症例に対する対応について、主に起こった症例としては熱中症や靱帯損傷、脱臼、骨折、打撲、捻挫、足のこむら返り、出血(鼻、頭部、瞼)などがあげられました。また、蜂に刺されるという症例もあがりました。それぞれの対応についてまとめます。

熱中症対応

熱中症においては、まず意識の確認をし、経口補水液やスポーツドリンクを与え、頸部や各関節のアイシングをし救護所や涼しい場所に移動して経過観察をしました。また、記憶が不明瞭な方もおり、そのような患者に対しては試合後の容態急変に備えて宿舎ではなるべく個室で1人にならないようにと伝えました。その場での対応だけでなく、対応後の事態も想定して各高校や本部、看護師の方々と連携を取る必要があります。特に30°Cを超えるような猛暑の環境の中で選手よりも観客のなかで起きることが多かったです。

靭帯損傷

靱帯損傷の疑いにおいては、チームのメディカルスタッフや大会運営スタッフと相談し、MRI撮影をするために最寄りの整形外科であるJFAメディカルセンターへの受診を促しました。もう一つの症例においては自力で歩くことが困難だったため担架を要請し、ピッチ外へ移動。膝関節伸展時に膝に強い痛みを感じると訴えたためチームトレーナーがACLの損傷及び断裂と考え、ラップを使用し膝を固定させ同時に氷で冷却を行いました。試合終了までベンチで待機させたいとのチームの意向と選手本人もそれに同意したため座位で安静にするよう指示を行いました。試合終了後に塾長の齋田先生に超音波を使用して診察していただき、MCLの損傷と考えられたため、一度記録のために教護室へ移動しました。保護者とも連絡がついたため、車椅子を使用して移動しJFAメディカルセンターへ引き継ぎました。

脱臼・骨折

脱臼における右手小指の開放脱臼と疑われる症例においては、チームのトレーナーに整復してよいか確認をし、齋田先生が整復をし、消毒をしてから、ガーゼと絆創膏をした後にダンボールを添え木代わりとしてテープで固定しました。その後は救急隊に引き継ぎ作業をしました。骨折についても包帯、添え木、三角巾で固定をしました。

その他対応

足のこむら返りにおいては、アイシングや水分補給をし、チームのトレーナーが足がつった箇所を伸ばしたり、ストレッチをしてくださいました。連日の試合での疲労や体調不良によって起きやすくなっていました。
外傷における出血について、鼻血においては、ガーゼやティッシュを用いてトレーナーに下を向かせながら止血作業をしてもらいました。瞼や頭部においても同様ですが、頭部外傷の際は念のためCTの撮れる病院への受診を促しました。
また今回、観客の1人が蜂に刺され、その保護者が救急車を呼び、大会本部、医学塾ともに状況を知らない状態での救急搬送もありました。そのような場合でも慌てず事情を聞き、本部などと情報を共有する必要がありました。

大会中の対応について、ピッチ上では各チームのトレーナーの方たちが主に対応してくださいました。その際、スポーツ医学塾としては、対応の補助、対処方法の提案などサポートする必要があります。そのため、本部、看護師、各チームのトレーナーの方々と連携が取れる状況を作ることが重要です。また、今回の熱中症などのようにピッチ外での対応も多くありました。そのため、試合中や試合後もピッチ外を周り体調悪い方がいないか注意する必要がありました。実際に出血や担架搬送も多くとても良い経験になりました。普段授業や教科書だけでは学ぶことのできない知識・臨機応変な対応方法や、実際に目にした現場で感じる緊張感や危機感など様々なことを学ぶことができました。


サイドラインでの救護
担架隊出動の様子

今回のサポートの感想

まずは大変貴重な機会をいただけたことに心より感謝申し上げます。私は自身の経験を積むことはもちろんのこと、現場経験の無い下級生においても現場ならではの緊張感を肌で感じるような体験を少しでも補助できればと思い、今回のサポートに参加いたしました。私自身まだまだ至らぬ点は山ほどありましたが、多くの塾生に参加していただきながら、無事にサポート期間を終えれたことを嬉しく思います。私自身もありがたいことに、これまで先生や先輩方からたくさんの機会をいただき、そこで得た経験が今の自分の大部分を形成しているように感じています。そして"恩送り"という言葉があるように、受けた恩は次へと繋げることが恩を受けた者の責務だと考えております。今回参加した塾生は是非自分の経験に活かすだけでなく、次の世代にこの経験を繋げるという想いも持っていただけますと非常に嬉しく思います。 

スポーツ健康科学部4年 石井太晴

今回このような貴重な機会を設けてくださり、齋田先生をはじめ関係者の皆様、大会運営の皆様に厚く感謝申し上げます。学生がこのような環境で救護活動やメディカルサポートの経験を積む機会は少なく、実際に経験しなければわからない知識や対応方法など深く学ぶことができました。また、全国から集まったトップチームのプレーを間近で見ることで、それぞれのチームの特性や戦術などサッカーについても理解を深めることができました。改めて、スポーツをサポートすることの楽しさや重要性、チームでスポーツをすることの良さを身に染みて感じました。スポーツは選手だけでは成り立たず、大会を運営してくださる方や、コーチ、トレーナー、観客、サポーターなど様々な方々や組織の協力のもと成り立っていることを実感しました。今回の経験を今後の活動にも大いに活かし、スポーツをサポートする立場としてどのようなことが求められ、何ができるのかを深く考え、現場やチームから求められる人材になれるよう努力してまいります。

スポーツ健康科学部3年 永澤弥子

大変貴重な学びの機会を与えてくださり、ありがとうございました。現場経験が豊富な方・他学部の方と情報共有を行いながら、現場ならではの経験をさせて頂き、とても良い経験になりました。その中で、不足している知識に気付いたり学ぶ事が多くあったりしました。また現場でコミュニケーションをとる際には、看護師の方や各高校のトレーナーさんなどと端的で正確に情報を交換することの大切さについても実感しました。今回の機会で学んだ事を最大限に吸収し今後に活かしたいです。  

スポーツ健康科学部2年 玉川結理

今回はサッカーインターハイのメディカルサポートという貴重な機会をいただき、ありがとうございました。実際にトレーナーの方や看護師の方、選手や観客とコミュニケーションを取りながらサポートするなど現場ならではのことを多く経験することができました。様々なことを想定し、十分に準備して挑んだつもりでしたが、実際に行ってみると想定外のことや自分の知識不足を痛感することが多くありました。また、メディカルサポートという立場で大会を見てみると、運営の方々や審判の方々など沢山の人の協力があって大会が成り立っているということを改めて感じました。今回のサポートを通して挙げられた反省点や気づきを思い出し、今後の学習に活かしていきたいと思います。  

スポーツ健康科学部1年 野口由姫

今回はインターハイのメディカルサポートとして参加させていただき、ありがとうございました。今回の帯同を通じて、試合中のピッチ内だけでなく常にピッチ外などにも注意を払う必要性、状況判断能力、看護師や各高校のトレーナーとの連携やコミュニケーションの重要性を学ぶことができました。また、スポーツの現場において初期対応を行うドクターやトレーナーの責任の重さ、素早い判断の重要性を感じることができました。今回、事前に初期対応の知識など頭にインプットしていたものの、想定外のことも起きたので、そのような場合に柔軟に対応できるように、今後のスポーツ医学塾での活動でより一層知識と技術を身につけていこうと思いました。

医学部3年 菊川然太

インターハイの救護スタッフという貴重な経験をさせて頂いたことに感謝の気持ちでいっぱいです。今回の帯同を通じて、他職種の看護師やトレーナーと情報交換をして連携することの大切さ、初期対応によって選手生命を左右するスポーツ現場に務めるトレーナーやドクターの責任の重大さを肌で強く感じることができました。それと同時に自分の現場に務めるための知識や技術がまだまだ足りないことも痛感することができたので、これからのスポーツ医学塾の活動により積極的に参加して知識と技術を身に付けていこうと思いました。この経験を無駄にしないようこれから頑張っていこうと思います。

保健医療学部1年 長島圭佑

観光

今回メディカルサポート期間、空き時間に福島観光もしてきました!福島県は山も海もある、自然環境が素敵な場所でした。夜にはBBQやスイカ割り、その日のサポートの反省会など行いました。サポート期間中だけでなく、サポート期間外も多学部/多学年交流ができ非常に充実した期間となりました。


スイカ割り
福島観光①
福島観光②
福島観光③
BBQ&反省会

おわりに

今回のサポートを実施するにあたって、塾生サポートの受け入れにご協力いただきました田野入清明実行委員長をはじめとする全国高等学校総合体育大会 サッカー競技大会男子 福島県実行委員会の方々、また、サポート期間中に限らず多方面からご支援いただきました齋田良知塾長に改めて厚くお礼申し上げます。塾生が今回得た経験について反省と共有を行い、スポーツ現場のさらなる充実に向けて各々尽力いたします。引き続きご支援いただけますと幸いです。

文責
石井太晴 (スポーツ健康科学部4年)
永澤弥子 (スポーツ健康科学部3年)
玉川結理 (スポーツ健康科学部2年)
野口由姫 (スポーツ健康科学部1年)
菊川然太 (医学部3年)
長島圭佑 (保健医療学部1年)



いいなと思ったら応援しよう!